199話 関わって
199話 「関わって」
桜庭の歌声を聞きたいなと少しは思った。
でも歌ってアイツらをどうこうすることができるのだろ……いや、そういう事ではない。
忘れては行けない、これは私達の文化祭だ。
私達が楽しまないといけない祭り、たとえ裏で何が起こっていようとも……
どうやら菊野も同じ気持ちだったらしい。
2人で頷くと桜葉はすごく嬉しそうな顔をした。
今、状況的にいえばやばいのだが、なんだかほっこりしてしまう。
「で、何を歌うの?有名な曲?それとも……」
「僕で作った曲を……まぁ昔会った緑髪のお姉さんといっしょに作った曲を歌うんだよ。」
「緑髪のお姉さん??」
「多分みんな知ってると思うよ?この地域では有名な人だし。」
お姉さんは分からないが、緑髪でゴスロリの幼女の方ならわかる。
東雲マリアだ。
「その人は『関わるな』って曲を作って僕がそのカップリング曲的な感じで『関わって』を作ったんだ。歌詞をここに書いていくね。」
さっきまで止まっていた筆を淡々と動かし始める。
よく作った曲を覚えてるもんだな……私だったら忘れてるぞ。
書き終わったのか、紙をこちらに渡してきた。
これを菊野と読むべきだったのかどうか未だにわからない。
「じゃあこれは預かっておくね!さて……ステージはどうしようか。時間帯は……」
真剣に考えてくれている菊野に私はある疑問を投げかけた。
「出る方法がないから文化祭のことについて考えることにしたのは理解したけど、生徒が来ないのはどうするんだ?開催しても誰も来ないんだったら意味無いぞ。」
それもそうだと頷いているが、生徒を学校に来れなくしている犯人を探さないといけないし、そのためにはまず、ここから出ないといけない。
「では、歌います。」
え?
「いやいや、なんでそうなる!?」
私が慌てて突っ込んだのに気にもせず歌い始めた。
「いつまで経っても開けられないから 僕らは奥底にしまうんだ 君たちが聞こえない心の声を 聞いてくれるまで 」
上手いなおい……じゃない。
「桜葉!歌ったってなんにもならないだろ!やめろ!」
「ううん。『関わって』を僕が歌うことにより別の空間に移動することができるんだ。ちなみに『関わるな』を緑髪のお姉さん本人が歌うと時間軸に無理やり世界をねじ込ませることができるんだ。」
なんでもありかよ……と思っているうちに周りの景色は変わっていた。
「すごいよ桜葉くん!」
喜んでる場合ではないぞと言いかけたが、私も内心喜んでいるので何も言わないことにした。
周りにはたくさんの本が置いてあるここは恐らく……
「図書室かな、ここ……体育館からは少し離れてるし、あまり人が来れない場所にもなっちゃってるから安全っちゃ安全かも。」
「菊野……敵は既に消えた私達を探し始めてると思うけど……。」
「月雲、舐めちゃダメなんだよ図書室を。この学校の施設で1番人が来ないと言われている所なんだから!」
「それ褒められてないぞ多分……」
図書準備室には誰もいなかった。
とりあえず席に座り落ち着く。
何事にも冷静になるのは大切なことだ。
「ねぇ……普段の図書室って、さうるさくできないじゃん?今だけはしゃいじゃおうよ。」
「お前……真剣に考えてたんじゃなかったのかよ。」
「私はいつだって真剣だよ?」
「嘘つけ。」
私達の会話に桜葉は面白かったのかずっと笑っていた。
しかし、図書室でうるさくするのはダメだったようだ。
「誰かなんか喋った?」
「お前はずっと喋ってんぞ?」
「違う違う。私じゃなくて……ほら今聞こえなかった?」
耳をすませる……ん?
「図書室では……静かに……しなさい……」
後ろを振り返るとそこには……
『ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!』
「関わって」の歌詞を載せておきます。
放課後の道の途中で買って帰った封筒は
ずっとカバンの奥底に埋もれてる
誰かに共感してほしいと嘆くだけ嘆いて
結局1人で抱えて終わる
伝えたいことは頭の中をぐるぐる回って
ペン先には分からない衝動
毎日泣いてるのはなぜかと自問自答
答えなんて初めから ない
誰かに相談したところで
可哀想だねと言われておしまい
それなのに叫びたくてたまらないのは
もう抱えきれなくなったから
怯えながら手紙を書いて
封筒を開けようとしたのに
結局 僕は僕は
丁寧にたたんで
またカバンにしまって
情けないよと言うのは
君たちが言えることかい?
何がしたいのかなんて
こちらが聞きたいんだよ
毎日毎晩こっそり泣いて
そりゃ誰にも気づかれないけど
僕は1人で戦いたくなんてない
明日の用意をする時にいつも出会うけど
新しいままの封筒を
いつまで経っても開けられないから
僕らは奥底にしまうんだ
君たちが聞こえない心の声を
聞いてくれるまで
追記(10月27日)
諸事情により更新を休ませていただきます。
申し訳ありません。
次回は200話です。
これからもよろしくお願いします。




