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あいすくりーむ  作者: 抹茶いちご
第17章 月雲雷
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197話 瞳に映って

197話 「瞳に映って」

どうしてこいつは私を殺したいほど恨んでいるはずなのにこんなにも近くにいる私に何もしてこないのだろうか。

一緒に行動しているのもよく考えれば謎だ。1人で逃げたっていいのに。

もしかして月雲家を倒した後に私を殺す気でいるのか?いや……こいつの柔らかくなった態度からしてありえないと思うが……。


「月雲?また寝てるの?」

「ふぇ!?」

いきなり菊野に肩を叩かれたものだからびっくりした。

「ここに生徒が来ない理由、聞いてた?」

「あぁ……うん。」



この学校に生徒が登校してこない理由。

それは誰かが望んでいることだからなんだそう。

何者かはまだ分かっていないが、そいつの能力で生徒達は自宅待機を強いられているらしい。

もちろん生徒達は分かっていない、休みだと思っている。


「私としては都合がいいんだ。私と京子に化けたあの二人がやって来ることもないからな。」

空乃は不気味な笑顔で桜葉の手を握った。

「そして、君が来てくれてもっと嬉しい。文化祭に必要不可欠な人物だからね。さて、話はここまでにしてそろそろ行動しようか。」


握った手を離すと黒板に向かっていった。


「なんで消そうとするの?」

菊野の問いに答えず空乃はせっせと黒板の文字を消す。

「それじゃあ3人に命令する。体育館に行って制服に着替えてきて。」

私達3人は背中を押され教室の外に出された。




「とにかく早く行こう。何があるかわからないんだし。」

桜葉は走り出す。いや、不思議に思うことあるだろ。

「まって桜葉くん。そっちは体育館じゃないから。」

いやだからそうじゃなくて。


菊野は桜葉の手を引き走り出した。



「ちょっと待て!!」

2人ともふりかえったので私は目をきっちり合わせて叫ぶ。

「空乃の言うことを信じるのか!?あいつが刀職人と刀使いのどちらかの可能性もあるんだぞ??私の部屋に置いてある服をそんな簡単に持ってこられるか?体育館に行く必要は!?」


桜葉が駆け寄ってくる。


「今は信じよう。たとえ騙されたとしても僕らなら勝てる。」

彼の瞳にくっきりと映る私は情けない顔をしていた。


どっから来るんだよその自信……。

つい最近あったばかりの仲なのに。



「菊野……お前もなんで私と一緒に行動するんだよ……なぁ……本当は殺したいんだろ?死ぬほど恨んでるだろ?」


黙って腕をつかみ走る桜葉の前で、菊野は黙って走っていた。



「あんたなんか大嫌いだよ。復讐してやろうって思ってたよ。でもね、そんなことより大切なことが沢山あったの。このマフラーを預けてくれた大切な人がいるの。その人のためにも恨むのをやめてみんなを幸せにしようって決めた。あんたにも桜葉くんにも空乃さんにも……それぞれの幸せを手に入れてほしい。簡単な事じゃないけど出来ないことでもない。」



菊野は私達の幸せのために戦ってくれている、一緒に行動してくれている。と思いたいのだが、その裏にあのマフラー女の存在があって……私なんて眼中にないんじゃないのか?

まぁ、そう思われても仕方ないことはしたよ。でも、この胸につっかえている何かがさらに私を追い込んでくる。



菊野の瞳に私は映らない、ずっと。








「体育館着いたよ。」

顔を上げると体育館の真ん中にぽつんと制服が置いてあるのが見えた。


「僕は違うところで着替えてくるから2人は中で着替えて。終わったら待ってて。」

桜葉は制服を持って外へ消えた。



何も喋らず黙々と着替える。


この高校の制服は上から着るようなものではないので首にマフラーを巻いていても着ることが出来るのだ。


よっぽど大事なんだな、それ。



「何、ジロジロ見ないでよ。」

「あ、ごめん。」

「あんたさ、ここに来てからなんかおかしくない?」

「へ?いやぁ……」

「外なら私に言い返してきたのに。」

「……」


桜葉が戻ってくるまで会話は続かなかった。




「で、これでどうするんだろう……」

体育館の真ん中に立っているが何も起こらない。

信じて正解だったのか?






















なんてことは無かった。


「ひひーん。なんちゃって。どうもっす。7月の最初だってのにすでに暑いっすねー。あ、夏服なの気づいてました?」



白馬が馴れ馴れしい後輩のように喋っていた。

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