16話 誤解の始まり
16話 「誤解の始まり」
小学5年生まではまだ普通だったと言えるだろう。
少し男っぽい性格だった女の子と認識されていた。
私が小学6年生の時、
誤解は広まった。
夏休みが明け、いつもの昼休み。先生が話しかけてきた。
「羽場さん。いつもご苦労さま。放課後ちょっと職員室に来てくれないかしら?」
「はい。」
いつも何も問題を起こしていないはずなので何かいい事があっての呼び出しなのだなと思った。
でも、
「羽場さん。変な噂が流れてるんだけど。」
先生は軽く睨む。
「あなた本当は男で女装趣味があるんだってね。」
「え?」
「先生は信じてあげるから正直に話しなさい。」
「……」
私は本当のことを話した。
先生はニコニコ笑って聞いてくれていた。
翌日、朝の学活の時間。
「みなさーん座ってくださーい。大切なお話があります!」
「なになにー?」
みんなが静かに席に座る中でひそひそ話が聞こえる。
「羽場咲さんについてです!」
教室中がざわめく。
「羽場咲さんについていろいろお話を聞きました。本人から。その結果、あの噂、咲さんが男で女装趣味があるという噂が本当だと分かりました!でも皆さんは普通に接してあげてくださいね」
みんながみんな騒ぎ出す。
「やっぱり」
というものもいれば、
「本気?」
というものもいた。
「先生!?」
「咲さん事実なんだから言い訳はしないこと。」
言い訳なんかじゃない。
いっそすべてをぶちまけたい気分だ。
「では授業をはじめます。」
放課後。
「先生?どういうことなの?」
「え?」
「だって話と違うじゃないですか!信じてないじゃないですか!」
先生はため息をつく。
「いやだっていろんな保護者から言われてるのに本当のこと言ったって信じてもらえるわけないじゃない。私の信頼がかけるわ」
鼻で笑われた。
私はそのまま帰った。
周囲からの奇怪な目。
髪を引っ張る男子。
それを見てくすくす笑う女子。
なんでこんな噂が広まったんだよ。
「ただいま。」
「咲!?」
「……」
「咲……なんで先生に嘘なんかついたの?何かあったんでしょ?」
「あんなヤツ先生じゃねーよ」
「え?」
「なんでもない。」
私は赤いランドセルを置いた。
「お母さん。」
「何かしら……」
「私さ、遠い中学に行く。」
「!?」
その日私は何も言わずにふて寝した。
それから私は無口になり、
受験に合格し、中学生になった。
私の人生はまた変わっていく。




