10話 少女
夏休みが始まってから1週間。
することがなく、連絡をとる友達はいないこの状況……。
最高に暇である!
10話 「少女」
母親から「散歩でも行ってきなさいな」
と言われ私は仕方なく家を出た。
いつも下を向いて歩いていた道が
いつもより鮮やかに見えた気がした。
公園には一切子供がおらず、ベンチに座るおっさんを見るだけだった。
スーパーではセール中なのかおばさん連中でごった返している。
セミが必死に鳴いて、そのセミを少女が素手で捕まえてい……
「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
すごく驚いてしまったためか思わず声に出てしまった。馬鹿か。
少女はセミを何故か元に戻し、こちらを向いた。
もう私が2回くらい聞いた言葉。
「待っておったぞ」
見ず知らずの少女に言われた。
「あの……私にはセミを素手で捕まえる知人なんていないんですけど、一体何者ですか。」
恐る恐る聞いてみると相手は丁寧に答えてくれた。
「失礼。自己紹介が遅れたな。私はマリア。通りすがりのお前さんをゲットしたただの少女だ。」
何がゲットだ!それにとても少女とは思えない口調だった。
「すまないが、私は家を追い出されてな。今は寝床を探しておる。そこで……」
「そこで私の家に居候させてくれと?」
「イエス」
せめて口調を統一してくれと思いつつ、私は密かに悪くないなと、この子が居候になれば少なくとも退屈な今からは逃れられるなとそう考えていた。
「いいよ。」
「本当か!恩に着るぞ!」
目の前で少女に土下座された。
とても恥ずかしい。
私は来た道をマリアとともに折り返し、
家に着いた。
「どうぞ。」
マリアはこんなに暑苦しいのにゴスロリファッションで、ブーツを脱いでいた。
「二階に上がってて、飲み物用意するから。」
マリアはそそくさと階段をのぼる。
「飲み物何がいいかな?お茶?いやでもジュースの方が……」
ブツブツ考えても時間が無駄だったので小さいコップに今ある飲み物全部を入れて持っていくことにした。
「お待たせー」
「おー。なんじゃそれ。」
マリアはまじまじと飲み物を見ている。
飲んだことないのかな?
「これは何じゃ?私は水しか飲んだことがないのでよくわからんが、お前さん的にどれがオススメじゃ?」
えっ。まさか全部飲んだことないの?
「そうだな。」
まじでか。
私は仕方なく手元にあったメロンジュースを差し出した。
「この色、私のかみに似ているな!」
マリアの髪はツインテールで緑色をしていた。
「うん!うまいな!」
マリアは満足したのかその場に寝転んだ。
私はお茶を飲む。
「お前さん」
「何?」
「羽場咲と喧嘩をしとるらしいな?」
「ぶふっ」
思わずお茶を吐き出してしまった。
「なんで知って……」
「あー少し違うな。確か縁を切ったんだな?」
「だからなんで!」
マリアは起き上がる。
「私がこの事を知っている理由は後でわかる!それよりも、お前さんと羽場咲を仲直りさせてやろうと考えているのだ!どうだ?」
「あなたがなんでそんなことしようとするのよ!」
「お前らはお互いに知らなさすぎる。だからこれを機会にいろいろ知っておけ。」
「ぐっ」
「本当はよりを戻したいんだろ?」
「……」
「確かにお前さんはあの時ひどいことを言った。しかしそんなことで縁を切りたくなかったはずだ。」
「……なんで知ってるの?」
「私の娘が言っておった。」
娘?つまり、空流、空乃、東雲、羽場のどれかの母親だっていうの?
「どうする?」
そんなことを言われても羽場の住所も知らないのにどうしろって言うのよ。
でも、でも……
「たい……」
「ん?」
「謝りたい。咲とまた友達になりたい。」
「ふっ。待っておったぞ、その言葉!」
「どうすればいいの?」
「私が娘から住所を預かっている。それに従って行くわけだが……」
「だが?」
「遠すぎるが大丈夫か?」
「あっ……はい!」
マリアはニッコリと笑い、明日早速旅に出るぞ!と言った。
別に退屈だからというわけではなく、私は純粋に彼女ともう一度話をしたかっただけで……
「楽しみ。」
「ん?」
「なっ何でもない!」
私はジュースを次々と飲み干した。




