表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 炉炉雨
嘘だらけ
18/27





「?兄ちゃん知ってる人?」




不思議そうに俺と彼を見る直哉




白一色の彼は、微笑みながら俺に話しかける




「偶然だね。ビックリしたよーまさか保健室にいるなんてね」




「…ああ…ちょっとな…お前こそ…なんで…」





扉を開かせたままの保健室内が、だんだんと冷たい空気を吸い込み、寒くなっていく




「僕はもちろんサボりに来たんだよ」




悪びれもなくそう言う彼に、話を聞いていた直哉が驚いた顔をする




「に…兄ちゃん…高校ってこんな堂々とサボれるもんなの…?」




この学校にしようかな…とボソッと呟く直哉に俺はやめておけ、と止める




「四限目授業出るの?サボればいいのに」




「あいにく俺はお前ほど頭は良くないからな」




その言葉を合図に、直哉の前に出て逃げるように彼の横をすり抜け、保健室を出る




「真面目だね」




「お前が不真面目なだけだ」




振り返らずにそう言うと、彼はフッと鼻で笑った





「また話が聞きたかったら、放課後来なよ。…待ってるから」



何処で、とは彼は言わなかった


言わなくても、もう分かってはいるが…




「ねえ、兄ちゃん。なんの話?」



大部離れたところで直哉が困ったように聞いてくる




「話ってなんの話するの?」




「さあな」





「あの人白かったね!!髪とか染めてるのかな」




「どうだろ」





「…最近あの人と会ってるから遅いのかな」




少し低めのトーンに肩が少しだけ揺れる

だが、足の動きは止めないようにする



「…違うよ」





何故否定したのかは分からない




なんとなく、こうしなくてはいけないと感じた




「本当に?」




「本当」





「…そう…」




暗く、長い廊下には明かりがついていない

真っ暗で真っ暗で…




飲み込まれてしまうんじゃないかと錯覚してしまう



話を変えなきゃと、空気を変えなきゃと口が頭より先に働きかける




「えと…そうそう、この前さ、猫が学校内に入っててさ」




どうでもいい話題

本当にどうでもいい


だけどそのどうでもいいが一番いい




「兄ちゃん」




そのどうでもいいが、相手にとっては邪魔でしかないのかもしれないけど





「その猫がな、クラスにまで入ってきて、大騒ぎするかと思ったらさ、女子が…」




「兄ちゃん」




ああ…これは怒ってるな




階段まできて、そこで立ち止まる



「ダメだよ。兄ちゃん」




「…なにが?」




とぼけるな、と言うように手に力を込める



「俺と母さん以外に愛着を持ったら、ダメだよ」




「…はぁ?」




愛着?

ないない


持つわけない




「俺は、母さんとお前以外に愛着を持つ気なんてないが」




「…嘘ばっかだよ。本当に…もう、嘘ばっかだ」




「嘘なんて…」




「嘘だよ。だって、兄ちゃん、あの人に愛着を持とうとしてる。…弟だからね、分かるんだよ」




「意味わかんない。お前の勝手な想像だ」




手を払い、階段を上がり出す




「…嘘は嫌いだよ…兄ちゃん…」




ポソッと呟かれたその言葉を、俺は聞こえなかったふりをした




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ