直哉
最初に目にしたのは、天井
少し出来た染みとかを見ながら目が覚めた
辺りを見渡すと、白いカーテンに包まれ、白いベッドの上に寝かされていた
本当に最近白にばかり縁があるな…と一人心の中でため息をつくと、すぐ横にある椅子に誰かが座っていることに気づく
首を少しだけ横に傾け、誰かを確認する
そこにいたのは、俺が毎日会っている人物ー…
「おはよう。兄ちゃん」
「…直哉…?」
目を細めてこちらを向く少年は紛れもなく、弟の直哉だった
中学と高校は、結構離れた距離にある
まさかと思い、目を閉じてまた開く
「…直哉…だよな…」
「何やってるの?兄ちゃん…」
直哉の目が、呆れた目に変わる
ああ…直哉だ…と再認識し、目元にあった手をゆっくりと白い枕へ下ろしていく
「ビックリしたよ。兄ちゃんが倒れたって聞いて…」
「俺だってビックリしたよ。まさか…ここに直哉が来るとは思わなかった」
そう言って、上体を起こそうとすると、頭にズキリと痛みが走る
昨日のあの怪我とはまた違った所が痛かった
「あんま動かない方がいいよ。兄ちゃん。倒れたときに打ったんだって」
トントンと自分の頭に指を指して、俺が怪我をしたところを教えてくれる
そうか…通りで…
昨日の怪我と同じところに巻かれた二重の包帯をソッと撫でる
ざらついた包帯の匂いが鼻の奥に伝わる
ボーとしばらく無言でいると、あることに気づく
「あれ、直哉…お前…」
「何?」
「誰から俺が倒れたって聞いたんだ?」
「…兄ちゃんの担任からだよ」
「…?…頭打ったことも?」
「…え?」
何が言いたいの?という目をする直哉
だって、あの時先生はいなかった
あの先生が倒れたときに頭を打ったなんて知るわけないじゃないか
包帯だって巻かれていたんだから、尚更だ
しかし、直哉はそれに対し、そんなことかと笑う
「クラスの人に聞いたんだ。兄ちゃんが倒れた拍子に頭を打ったんだって」
「あ…ああ…そっか…」
そう言われてみれば、そうか…
あの時、誰よりも注目を浴びていたのは俺なんだし…
「まったく…昨日ちゃんと寝たの?」
その問いに、時計を見て「ああ…」とだけ答える
三限目…
今から行っても、授業には間に合わないのだろうし…
四限目からでいいか…
「兄ちゃん?」
ヒョイと顔を覗きこまれ、影ができる
「聞いてる?」
「えっ?何?」
思いきり話を聞いていなかった…
ムスッとした顔を俺に向け、直哉が怒り口調で俺に言う
「だから!俺、授業見ていってもいいかなって!!」
「え?」