出会った白
第一印象は、白だった
雪のように白い肌、黄色い薄みのある髪の毛
細くてこの世の者とは思えない軽薄な存在感
そういった彼が、図書室のカウンターの席に座るでもなく、カウンターに座っているんだから驚くに越したことはない
幽霊かもと思いもしたが、足はあるし、影もある
まあ、実際の幽霊には足はあるかもしれないし、影もあるかもしれない
一般的にはないとされているから、ここは彼を人間だと認識するしかないのだ
彼の存在は驚くものではあったにしろ、それを顔に出すわけでも仕草に出すわけでもなく、ただ普通に図書室に入り、別に読みたくもない本を読む
これはただの暇潰し
家に帰ってもやることがない、それに今は―
―雪が降っているのだし
きっと彼も雪が降っているからここにいるのだろう
いや、それか人を待っているのかもしれない
図書室に入り浸る内に、図書室に来る人の目的は大体決まっていた
図書室で真面目に本を読もうとする人
図書室で勉強をする人
図書室で人を待つ人
図書室を特別な理由で避難所がわりに使う人
俺はどれにも当てはまらないのかな
それか特別な理由でー…のところに収まるのかもしれない
頭の中で悶々と独り言を呟き続け、本をとり、席に座る
とにかく彼がなんのために、どこに座ろうが俺には関係ないこと
一時、時を共有するだけのこと
そう自分に言い聞かせ、彼の存在を自分の中から消し去ろうとしたとき…
「あ」
小さな聞こえるか聞こえないかの声だった
何事かと顔を本から、彼に移し横を向くと彼はニコニコとこちらを向いて笑っていた
不気味だ
そう考えるのは当たり前だろう
知らないやつが、こちらを向いて笑っているのだから
「それ、ダメだよ」
白い指が、俺の手にある本を捉える
「途中、破れてるよ。それ」
「え」
パラパラと本を捲ると、確かに破れてる箇所が所々あった
「ね?」
ニコリと愛想よく笑った彼の顔は、言った通りでしょ?と言っているようだった