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○×系男女  作者: △□一
2/3

#2  ようこそ

扉を開けるとそこはパーティー会場でした。



*



第2話 ようこそ




*



「うわあああ・・・!!」


鮮は喜びのあまり歓声を上げた。




バイキング形式になっているらしく、サイドテーブルいっぱいに数々の美味しそうな料理が並んでいた。


中央には数十脚の椅子がズラリと並んだ長テーブルが置いてあり、既に食べ始めている者もいる。


部屋は真上からオレンジっぽいライトで照らされていて明るく、暖かい。


そしてなにより、沢山(十数人程度だが、鮮にとってはたくさんに見える)の同い年くらいの子供達・・・!




夢じゃない。

これは現実なんだ。



私は・・・





「にゃはー!!☆魚ぁーーー!!」



縁も豪華な料理にテンションが上がっている。




お腹も空いてしまったことだし、早速料理を頂くことにした。



「どれも美味しそうだなあ・・・」



そう思いながら皿を持って料理の置いてあるテーブルをみた。



長テーブルいっぱいに用意された料理はシーザーサラダ、グラタン、きのこが入ったパスタに魚のムニエルなど・・・どれもキラキラ光っていて美味しそうだ。




「俺のおすすめはグラタンだ。今日は一段とうまく出来たからな」





「わあ!?びっくりしたあ・・・」


気づけば鮮の右斜め上から男性が覗き込んでいた。


危うく皿を落としそうになる。





長身(185くらい?)で筋肉質な身体に金短髪。

右目は薄緑色で左目が紅い。オッドアイというやつだ。



両耳に3~4個ずつピアスをしていて怖そうだと思ったが表情が柔らかそうなので少し安心した。


そして白いコックコートを着用していた。




「おう、すまねえな嬢ちゃん。驚かすつもりはなかったんだがよ。」



男性はニカッと歯を見せて笑った。



「いえ、こちらこそすみません」



そういっておすすめだと言われたグラタンを皿に取る。その他にも男性がおすすめだといったものを次々と皿に取って、いっぱいになったところで空いている席に座った。



まずはグラタンから食べようと木の匙を手に取る。


一掬いすると、たっぷりかかったチーズが糸を引いて閉じ込められていた湯気や香りが一気に溢れ出してきて、食欲をそそった。


口に入れると鮮は大きく目を見開いた。




「おいひー!!///」




「そうかい!口にあってよかったぜ。」




「私、料理のこととか全然わかんないですけど、なんかこう・・・食べたことのないような味です!!」



嬉しそうに鮮はグラタンをほおばる。

男性も嬉しそうだ。




「そうだ、俺は螺子乃(ねじの)士気(しき)!厨房担当でここの料理全部を任されてる。因みに管理人の鋏と四九は幼馴染だ。」




「私は色乃鮮です。士気さん料理上手なんですね!!すごいです!!私料理やったことないんですよね・・・」




「そっか!なら今度暇なとき厨房おいで。一階にあるから。いろいろ教えてやんよ」




「はい!是非!!」




「手とり足とり・・・ね?」


士気はニヤリと笑った。


鮮は恥ずかしかったのか顔を赤らめて戸惑っている。



「冗談冗談♪」




士気は鮮の頭をわしゃわしゃとするとじゃあなと言って立ち去っていった。


(料理・・・か。できるようになりたいなあ・・・)




鮮はグラタンを食べながらぼんやりと思う。




家にいるときは何もできなかったから


ここにいるときぐらいはせめて




いろんなことがしたいなあ。





「あやちゃん!!」



「縁・・・さん!」





いつの間にか縁が後ろに立っていた。両手には料理いっぱいの皿。




「そんなに食べるの?」


「うん!士気のりょーりはうまいんだー☆」




そう言って隣に座った。

皿いっぱいの料理はどんどん縁の口に吸い込まれていく。

そしてふと思ったことを縁に聞いてみる。




「ねえ縁さん」



「さん付けだなんて硬いにゃー。呼び捨てでいーよー♪」



「・・・縁ちゃん、ここに居るのは住人全員?」



「んー・・・何人かいないかにゃ。」



「そうなの?てっきり全員かと・・・」



「・・・まあ、仕方にゃいよ。今度会わせてあげる。」




縁は唇についたソースを舐めながら笑って言った。



*


「あんたが今日から来た「色乃鮮」ってやつか。」



不意に声がして、声がした右の方を見ると少年がもぐもぐとパンをかじっていた。




暗い茶色の髪色でくるくる毛先が踊っている。前髪をポンパドールにして留めていた。



目は薄い赤色で寝不足なのか目の下のクマが目立つ。



首には古傷のような縫い目がぐるりと巻きつくように残っており痛々しい。



服装はTシャツにパンツ、Yシャツを羽織っただけというシンプルなものだ。



だが、そのデザインは奇抜なもので、

Tシャツには理科の教科書に載ってそうな内蔵のプリント

Yシャツには赤い血のプリントが点々としており、左胸には目玉のピンバッジをつけている。



赤いパンツにもぐるりと縫い目のデザインが施してある。





(すごい服・・・どこで売ってるんだろう・・・)



そんなことを鮮が思っていると、



少年は鮮の身体を舐め回すようにじっくりと見ていた。




「あ、の・・・何か・・・・?」




同い年くらいの男子にじっくりと体を見られたことがないので流石に恥ずかしくなってきた。


少年はぱっと顔を上げて言った。





「嗚呼、ごめん。ただ―――








――いい内臓(ナカ)してるなって思ってさ。」



「へ?」



思わず声が出てしまった。




だが少年は何も気にすることなく「腸の収縮運動が」とか「骨髄が」とか「眼球の周りの筋肉が」とかわからないことをブツブツとつぶやいている。



「あー!しょーちゃんっ!!あやちゃんの内臓(ナカ)見たの!?」



縁が身を乗り出して鮮の向こうの少年に話しかけた。


少年はちらりと縁を見ると眉間にしわを寄せてチッと舌打ちをした。



「なんだお前か」



「なんだじゃないよっ!!見たのってきいてるの!」



「見たもなにも・・・おれON/OFFできねえから見えんだよ勝手に。」



「あやちゃん困ってるじゃん!あやちゃんはまだみんなのびょーきのこと知らないんだから!!」





病気。


そうだった。




ここに居る子供たちはみんな



私と同じように奇病にかかっている。






「・・・そういえばそうだったな」



少年は言った。


そして鮮に向き直った。



「おれの名前は人乃(ひとの)(しょう)。身長は175cm年は17。んで、俺の病気は『人の内臓(ナカ)が見える』病気だ。因みにまだON/OFFできねえ。」




「だからさっきあんなこと言ってたんですか・・・」




「そうだ。急に言ってすまなかった」




「いえ、病気なら仕方ないですし・・・別に気にしてませんから。」




「あ、あたしまだ言ってなかったにゃ!あたしのびょーきは『猫になることができる』びょーきにゃ。ON/OFFもできるよー☆」




そう言ってくるりと回った。


すると、体はみるみる縮み、初めて会った時の猫の姿になった。





「あ、もしかして猫から人にもなれるの・・・?」




「うん☆さっきはびっくりさせてごめんにゃさい!」




にゃははと楽しそうに笑うとくるりと回ってまた人の姿になった。




「んで?」



睫は不意に鮮に声をかけた。



「はい?」




「おれらは言ったぞ。病気のこと。





―――教えてくれよ。あんたの病気をさ。」



睫はじっと、鮮を見つめた。


赤い瞳が鮮を捕らえて逃がさない。




「・・・私の病気は・・・、か、『髪色、髪質、長さに至るまで全てが一晩で生え変わってしまう』病気・・・です。」




睫は一瞬だけ驚いたように目を見開いたがほとんど表情を変えない。


「髪・・・か。」


そう小さく呟くと右手で水の入ったコップを持って口をつけた。



「・・・よかったなあんた。症状的に割と軽い方で。まあ、おれもこの中では軽いほうだけどさ」



「そうなんですか・・・?」



「ああ。」



睫はコップを置いた。



「この病気には危険性で分けた簡単なレベルみたいなものがあるんだ。俺は最底辺の『レベルⅠ』聞いたところあんたも多分『レベルⅠ』だと思う。」



「あとねーレベルは一番上が『レベルⅢ』で、ここには今3人しかいにゃいのー☆」



縁も食事を頬張りながら説明してくれる。



「ちげーよ4人だろ。」



「だってーきょーちゃん居ないデショ?ココに」



「まあ・・・そうだけどよ・・・」


睫が困ったように声を小さくする。

鮮は思い切って言った。


「あの・・・みなさんは、あまり・・・気にしてないんですか?」



「何を?」



「・・・自身の病気のことです・・・なんか、簡単に話しちゃったから・・・」



「あんただって話しただろォが」



「まあ、そうなんですけど・・・私は、さっきもう鋏さんに話したのでなんかこう・・・吹っ切れたっていうか・・・」



「そうだろ?おれもそうだ。どうせここで暮らすならカクシゴト無しの方がいいしな。それにおれの症状そんなに重くねえし。」


睫は尖った歯を見せてにやりと笑った。




*



食も会話も弾む中、


『あー、あー。マイクのテスト中・・・』



急にスピーカーから四九の声が聞こえてきた。


「皆様。お食事中のところ失礼いたします。本日は新しくここに住むことになった方を紹介いたします。」



少し、辺りがざわついた。ちらちらと鮮を見る者もいる。



(何も聞いてないんだけど!?アレ!?四九さん何も言ってなかったはずだけど!?!?)



変な汗が止まらない。


睫と縁はというと互いに目を見合わせてニヤリと笑った。



(すごく、嫌な予感がする。)



すると



「鮮。」


後ろから声をかけられた。



「あ、鋏さ・・・」




振り返ると同時に右腕を掴まれた。

掴んでいる張本人・・・鋏はにやりと笑う。



「え」



そして




「え?」




そのまま




「え、ちょ」





「いってらっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!」













―――鮮を、天高く放り投げた。





*






「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!」




宙を飛びながら鮮は叫んでいた。



叫んでいるあいだにも身体はぐんぐん地面から離れていく。



そして



天井スレスレのところで上昇が止まり、




すごい速さで地面が近づいてきた。




下の歓声がだんだん大きくなる。





恐怖で鮮はぎゅっと目を瞑った。



(ナニコレ!死ぬの?私死ぬのおおおおおお?!?!)









そう思っていると、










ふわり













何かに抱きかかえられた感触がした。








ゆっくり目を開けてみる。






「四九さん!」





「お怪我はありませんか?鮮様。」








四九が空中で鮮をお姫様抱っこして受け止めていた。



「なんで四九さんが・・・!?」




「受け止めないと危ないでしょう?これは通過儀礼なんですよ。鋏様から新たな入居者への。」



「毎回やるんですかコレ?!」




「あ、そろそろです。」




そう言うと四九はつま先からすとんと着地した。


多少の衝撃はあるものの、ほとんど感じない。



そしてそっと、鮮を下ろす。





「ありがとうございます。」



「いえいえ。慣れてますので。」


では、と言ってマイクを持つ。



「今日からみなさんと一緒に生活していただきます、色乃鮮様です。では一言どうぞ。」



「え!?」




まさか振られるとは思っていなかった。


マイクを握る。



たくさんの人の目が集まる。



大きく息を吸い込んで、




「え、と・・・私、病気のせいであまり外に出たことが無くて・・・友達もいなかったので、とても、緊張しています。よかったら、わ、私と友達になってください・・・!!」




若干声は震えたが、なんとか言えた。


周りからは温かい拍手。


そして



「喜んで!」



みんなが声を揃えて言った。



うれしかった。



うっかり泣きそうになってしまうが、なんとか堪えた。



奥に座っていた縁や睫と目が合う。


二人とも笑ってくれた。





こうして、私の施設生活の一日目が無事、始まった。



なんとか二話終了です。


ここまでお待たせしてすみません。



いろいろ修正してあげ直しました。




さて次回もほのぼのした感じでやっていきたいと思います。



では三話でまた。

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