プロローグは短めに。
世の中は不公平だと、彼は思う。そんな思考は常々、寝る前やふとしたときなど、割りとよく考える。
環境、性別、容姿、貧富……挙げれば切りがないほどの事柄で、公平なものはない。
とは言え、それが彼になにか問題を与えたことはない。
環境は優劣をつけがたく、性別は男だが女の子顔で華奢だが健康体、容姿は中性的、豪華な生活はできないが金銭で困ることもない。
何もかもが中間。平凡でも平均でもない中間。
強いて言えば十代と言うことで、社会的には優遇されるぐらいだ。そんなつまらないことぐらいだ。
「やっぱり世の中は不公平だよ」
時は下校時、閑静な住宅街の、更に人通りが少ない裏道。薄暗いそこは妙な空気を醸し出していた。
都会を歩いていると、急に森林地帯に入ったような……、場違いで、チグハグな、空気が違う感覚。
圧迫するような、弾くような、選択肢を突きつけられているような感覚。
「まぁ、小説だかに割りとよくあることだね……」
そうそれは、割りとよくある異世界召喚モノの小説にあるような現象だった。
つまり、そういうことだろう。選択肢が自分にある、という以外に違いは見られない。が、選択できるのは大きなアドバンテージだ。
彼は息を吸い、ゆっくり吐く。ゆっくり目を閉じて、ゆっくり開く。
「まぁ、暇潰しにはなるかもね」
なんて、少し出掛けるような、そんな軽口を最後に、彼は死んだ。
そして生まれ変わる。異世界の地で。