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黒灯の解除

残り二十七分は、二十七分の作業時間ではなかった。


異常が出た時に三地点を最低負荷へ戻し、全員を入口外へ出す予約まで含んでいる。病院の再切替余裕、避難所電源車の補給、三現場の退場時間を重ねると、第三窓で使えるのはその手前までだった。


市営第三、湾岸、北環状。三地点の共同画面には黒灯が残っている。灯りや出力を戻しても、ほかの二地点へ負荷を押していないと確認できるまで消えない印だった。


「全部を終わらせる時間ではありません」


白瀬さんが三現場へ告げた。


「今夜、終わらせるのは三迷宮間の負荷分散です。一般復電は、現地の正常判定後に低い側から。公共側の短い中止線か退場予約に触れた時点で、黒灯を残して戻します」


開始票の前で、三地点の施工班が変更範囲を現物で示した。


市営第三では、第一窓で保全隔離した入口側の受入れ区画を、確認可能な範囲だけ正規分散路へ戻した。旧管理側は閉鎖したままにする。施工班が札を返すと、外から先に入っていた太い振動は消え、深層の短い返事の後に正規路が応答した。


湾岸では、常設化していた仮設管を赤札隔離した。正規班が隔離後の無負荷を置くと、受入れ板の白線は正規路の側だけへ戻り、市営第三にも北環状にも予定外の山は出なかった。管の奥は未測定、撤去は別停止のままである。


北環状では、仮設蓄圧区画へ振る入口側分岐を待機へ戻し、入口外から扱える正規受入れ区画だけを本線へ戻した。入口計器が先に落ち着き、避難灯は入口から二つ目まで通常の順へ戻った。三つ目から先の深層は閉鎖から外さなかった。


正式停止の外から押し続けた湾岸の管を外し、市営第三と北環状には正規路から受けて返す範囲を戻した。一地点を復電した時、残り二地点だけが受け先になる状態を止める準備だった。成立したかどうかは、この後の段階負荷で確かめる。


施工班が出したのは、触った範囲と残した閉鎖の札だった。別の現地計器担当が、変更後の無負荷反応へ署名した。二枚が揃わない地点は、施工完了に数えない。


仮設蓄圧区画には、第二窓の残留がまだあった。施工責任者が現在の使用済み表示を読み、自治体の独立確認者が別計器で照合した。


開始前の空までは戻っていない。それでも残留分を差し引いた空きは、第三窓を中止して三地点を最低負荷へ戻す時の受入れ予測を上回っていた。次の一段で撤退分を受けられなくなる場合は、第三窓そのものを捨てる。区画の現地中止者も、交代引継ぎを終えて持ち場にいた。


仮設区画を正常運用へ組み込まず、失敗時の受け皿にだけ残す。今夜の局所対策を、次の無期限仮設にはしなかった。


俺が施工を認めるのではない。市営第三で前後の反応を比べ、三地点の流れが計画した範囲から外れたら止めるのが俺の仕事だった。


久世統括官が広域側の開始へ署名し、三自治体の責任者が自施設の開始をそれぞれ認めた。現地三班は退路と人員を照合し、仮設区画は施工責任者と独立確認者が残容量の確認欄を閉じた。


中央、三自治体、現地三班、仮設区画。四分類の開始票が揃って、三地点が低い状態へ入った。


市営第三の管理扉から白い縁が消えた。


湾岸の受入れ板は、仮設管側に残っていた細線を返さない。


北環状の避難灯は、入口から奥へ暗さを揃えた。


出力が落ちた静けさの中で、俺は受音板を床へ当てた。


完全な無音ではない。


市営第三の深層から短い戻りが一つ来る。


その後、正規分散路の側からもう一つ返る。


第一窓では外からの太い振動が先だった。今は市営第三が自分で返してから、外の応答が来ている。


「市営第三、反応順は正常記録と一致。まだ復電判定ではありません」


現地計器担当も、床札の二つの山を読み上げた。


俺の耳だけではない。


湾岸から、補助計測員さんの報告が入った。


《受入れ板、停止後の白線なし。深層流量は低下。仮設管側の反応は識別できません》


「識別できないなら、正常にはできません」


湾岸の責任者が言った。


補助計測員さんは、仮設管の反応を見ようと位置を変えなかった。


代わりに、赤札隔離区画の独立計器を施工担当へ読ませた。


《隔離側、新規流入なし。残留は低下中。使用禁止継続》


仮設管が正常になったのではない。


使わない状態で正規路だけが応答している。


湾岸の現地責任者は、それを正常範囲として受け取った。


北環状では、現地設備員が入口計器と避難灯を比べていた。


《入口計器、先に低下。避難灯は入口から二つ目まで通常順。深層は未測定》


獅堂さんが、人と魔物の位置を付けた。


《運搬種は戻り道へ移動。入口側に人員なし。三つ目の灯りは判定に使わない》


見えない場所を正常へ含めなかった。


真央さんの共通画面で、三地点の波形が動いた。


谷が同時になったわけではない。


市営第三が低い時、湾岸が遅れて応答し、その後に北環状が細く返る。正常記録にあった順番へ、ずれが収まっていく。


十一分周期の三本は、同じ時刻に沈む線ではなかった。


一地点の谷が、次の地点を押し上げるのではなく、受けた地点から規定の戻りを返す並びになった。


「共通波形、負荷移送の増幅なし」


真央さんが言った。


「三地点の原本時刻と現地報告は一致。正常判定は各現地からお願いします」


彼女は中央画面の正常ボタンを押さなかった。


最初の復電は、市営第三の最低機能だった。


小暮さんが地下街の利用負荷を戻すのではなく、管理区画と駅の避難設備だけを試験対象にした。


地上側の担当者が人のいないことを確認し、現地責任者が低い負荷を入れた。


管理扉が一度だけ明るくなる。


床へ太い振動は来ない。


深層の短い返事が先にあり、正規分散路が遅れて同じ幅を返した。


「市営第三、低負荷で正常追従」


俺は報告した。


小暮さんと現地計器担当が、それぞれ管理扉と床札を確認した。


市営第三の黒灯は、まだ消えない。


市営第三を戻したことで、湾岸と北環状が上がらないかを待つ必要があった。


湾岸の補助計測員さんが、受入れ板の変化なしを報告した。


北環状の設備員も、入口計器と避難灯が開始前を維持していると確認した。


真央さんが共通波形の増幅なしを付けた。


そこで初めて、市営第三の黒灯が灰色へ変わった。


白瀬さんが公共側の短い余裕と三現場の退場予約を更新した。一般負荷を戻していないため、どちらも中止線の手前に残っている。


市営第三の灰色は、俺の聴取、小暮さんの管理扉、現地計器担当の床札、真央さんが照合した他二地点の非悪化が揃った結果だった。


解除ではない。


次地点を戻せる候補になった印だった。


二番目は湾岸だった。


貨物を入れず、空の搬送枠一つだけに試験負荷を戻す。


湾岸の責任者が開始し、補助計測員さんが受入れ板、現地施工員が正規路、別の監視担当が隔離した仮設管を見る。


受入れ板の縁が淡く光った。


正規路の表示が遅れて返る。


仮設管側は暗いままだった。


《湾岸、正規路のみ追従。隔離側への新規流入なし》


市営第三の床は一度振れ、すぐ正常幅へ戻った。


北環状の入口計器は上がらない。


真央さんの画面でも、湾岸の山が隣を押し上げず、自分の戻りへ閉じた。


湾岸の黒灯が灰色へ変わった。


白瀬さんは残り幅をもう一度削った。最後の北環状試験で異常が出た場合は一般復電へ進まず、市営第三と湾岸を最低負荷へ戻して全員を出す。その予約を引いた後も、公共側の短い余裕は残っていた。


最後は北環状だった。


避難所の暖房と薬品保冷は、まだ電源車側にある。


迷宮側へ戻すのは、防災倉庫の確認負荷と入口灯だけだった。


現地設備員が開始した。


入口計器が上がる。


一つ目の避難灯が明るくなり、少し遅れて二つ目が同じ明るさへ揃う。


異常時は奥から白くなった灯りが、入口側の負荷へ正しい順で追従した。


《北環状、入口二点は正常。深層閉鎖は継続。復電可能範囲は入口側のみ》


獅堂さんは魔物の群れが入口へ寄っていないことを確認した。


市営第三と湾岸も、北環状の復電で新しい山が出ていないと報告した。


真央さんの共通画面には、市営第三の音と管理扉、湾岸の受入れ板と隔離側、北環状の入口計器と避難灯が別列で並んだ。違う正常基準が、ほかの二地点を悪化させない一点だけを共通時刻の上で満たした。


「三地点、段階復電の正常条件を満たします」


白瀬さんが公共側の解除条件を照合した。


病院は予備から戻す余裕を残している。


鉄道は設備確認後まで運休を続ける。


避難所は全館を一度に戻さず、暖房区画から移す。


久世統括官が、広域停電警報の解除へ署名した。


三自治体が、それぞれの復電可能範囲を承認した。


最後に、真央さんの画面から三つの黒い丸が消えた。


解除記録には、三人の現地判定者が別々に署名した。


市営第三は小暮さんと現地計器担当、湾岸は現地責任者と補助計測員、北環状は現地設備員と安全責任者。俺は市営第三の技術確認欄だけに名を置いた。


三地点全部の正常欄へ、俺の名前はなかった。


解除後の原本も中央だけへ集めず、三地点が自分の写しと補正履歴を持った。


次に中央回線が切れても、現地の正常比較までは失わないためだった。


市営第三の駅では、地上へ出る設備が一台だけ動き始めた。


湾岸では、空の搬送枠を閉じたまま、保冷庫の二室が迷宮側の正常負荷へ移った。


北環状の体育館では、暖房を半面ずつ戻し、電源車をすぐ撤去せず待機させた。


街は一斉に明るくならなかった。


使う人と確認する人のいる場所から、灯りが負荷へ正しく追従して戻った。


停電警報は解除された。


仮設蓄圧区画には、新しい流入がない。残りが開始前へ下がるまで閉鎖を続ける。


湾岸の仮設管は赤札隔離のまま、撤去を別停止へ渡した。


北環状の深層も閉鎖継続だが、入口側の生活負荷は戻せる。


戻さない場所を残しても、三迷宮が負荷を押しつけ合う位相停電は止まった。


その時、真央さんが復旧報告の添付資料を開いた。


湾岸の古い札と資材識別を使い、市内の緊急監査班が同型品の使用記録を照合していた。


すべてが今も流れているとは限らない。


撤去済み、図面一致、現物未確認が混じっている。


それでも、《仮設》の名で入れられた同型管は、今回の一本だけではなかった。


復旧報告には、同型仮設管が市内だけで四十七本あるという監査結果が添付されていた。


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