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史的な夜話 其の二十一

作者: 戸倉谷一活
掲載日:2026/02/16

Y:あのぉ。

T:はいはい。

Y:YouTubeを観とったんですよ。

T:はいはい。

Y:そしたらね、お勧めにラグビーの動画が出てきたんですよ。

T:あんた、身体動かすん駄目ですやん。

Y:言われんでも、自覚してますがな。兎に角、ラグビーのさ、ニュージーランドの代表が試合の始まる前に、ハカとか言うて奇麗に並んで踊らはるんよ。

T:あぁ、あれやな、味方を鼓舞し、敵を挑発するとか、そないな奴やな。

Y:でも、実際には敵を挑発する意味は無いとか、そないにも言われとるし、結婚式、お葬式、卒業式、まぁ、色んなところで相手への敬意みたいなんを示すときに使われてたりするみたい。女性でも必要やったらハカを舞うとか。

T:男女平等というか、勝手なイメージやけど、闘いの舞って男性専用みたいに思とったけど、ちゃうんやなぁ。

Y:そうなんですよね。YouTube観とったら、女性の議員さんが議会でハカを始めはって、あとで怒られた人も居るといないとか、そないな動画もありましたよ。

T:色んなところで使えるんですね。そのハカって。

Y:そうなんですよ。

T:それで、今日はハカについて、あんたが熱く語るんですな。

Y:そうじゃぁ無いんだよ。

T:ちゃうんかいな、期待しとったのに。

Y:期待したってな、何も出てこうへんよ。

T:ほな、何が始まりますねん?

Y:このハカって言うんは、war cry(うぉーくらい)というくくりの一つになるんですって。

T:war cry?

Y:ハカって言うんはニュージーランドに住む、マオリ族の舞踊やん。ニウエって言う島国はタカロで、ウォリス・フツナはカイラオ、トンガはシピタウ、サモアがシヴァタウ、フィジーがシビ、イースター島がホコ、と。

T:随分とご存じで。

Y:ぃゃ、ここまではあれですよ、Wikipediaなんかを使て調べたんですよ。

T:珍しいやん。あんたが自分で調べるなんて。

Y:まぁ、そこまで気になっと言うか、なんと言うか……

T:それで、自分で調べたって事を話したかったんですか?

Y:南太平洋には島が一杯あるやないですか。この六つの島だけがwar cryを持っとるんか、それとも他の島にもwar cryがあるんやないか、そない思たんですよ。思てもなかなか調べることはでけへんし、諦めたんですけどね。

T:あんたも面倒なことに興味持ったんですねぇ。

Y:いつものことやんか。

T:まぁ、ええねんけど。イースター島ってさ、今はチリの領土なんやけど、南米大陸まで大体三六〇〇キロぐらい離れてるんやな。

Y:随分と離れとるんやなぁ。

T:同じチリでも測る場所によっては三八〇〇キロとかにもなるし、面倒やから四〇〇〇キロ離れとるとか言う人も居るけど、もの凄い距離、離れとるわけよ。

Y:日本で言うと、四〇〇〇キロってどこからどこまでの距離なんやろうか。

T:札幌からハノイまでがほぼほぼ四〇〇〇キロやな。

Y:ハノイ?

T:ベトナムのハノイな。

Y:飛行機やと、何時間ぐらいかかるんやろうか?

T:知らんがな。

Y:それで?

T:このイースター島に、いつ人類が辿り着いたんか、今でも謎なんよね。

Y:そうなんや。

T:今、二〇二六年やけど、八百年ぐらい前か千年前か、今も定まってないんやな。

Y:ふぅ~ん。

T:イースター島に住み始めた人達って、実はポリネシア系の人達って言われとって、この人らはいかにして、イースター島を見付けて引っ越したか、これが謎なんよ。

Y:南米大陸に近いから、インカとかアステカの人やと思とったよ。

T:残念ながら、ちゃうんやな。話が前後して申し訳ないんやけど、今、イースター島に一番近いのが約二〇〇〇キロ離れたピトケアン諸島なんやけど、ここに人が住み始めたのは一七〇〇年代で、イギリス人が見付けて住み始めたとか。それ以前にも人が住んでたらしいねんけど、イギリス人が見付けた時には無人島で、住み始めて、今も僅かながら人が住んでるんやって。

Y:なんか寂しそうな話やな。

T:孤独を体験しとうなったら、ピトケアン諸島に行ったらええんちゃうけ。

Y:そない遠いところまでいかんでも、日本にも無人島とかあるやろうに。

T:話を戻しますけど、イースター島に住み始めた人達はどの様にして、イースター島へ移動したと思います?

Y:当然、船でっしゃろうな。いくら何でも空を飛んだとか、言わんやろ。

T:言わんよ。当時、まだまだ大きな船が無かった時代で、(いかだ)とか大木をくり抜いた、丸木舟、(くり)(ぶね)と言われる舟しか無かった時代なんよ。その不安定な舟で何千キロも旅して、新しい島を見付けて、移動したのは、もの凄いことやん。

Y:言われたらそうやろうけど、色々想像でけへんし、実感が湧かんよ。

T:紀元前四〇〇〇年と言うから、今から六千年ぐらい前、古代エジプトとかでは切り倒した木を加工した、板やらを使った、いわゆる現代の船に通ずる木造船があったようですよ。それが時間と共に東へと伝わって、日本でも遣隋使や遣唐使なんかが使う船になっていくわけですよ。

Y:いきなり遣隋使やら遣唐使やらへ話が飛んどるやん。

T:話が飛びすぎましたけど、でも、太平洋の島々に住んではる人達には、そう言うのが伝わらんで、今でもカヌーとかが中心ですよ。

Y:うんうん、それで。

T:だから、太平洋も広いし、絶えず波が高いところもありますやん。そないなところを丸木舟、刳舟でさ、長い時間進んで行くんですよ。なんか、おかしいとは思わんですか?

Y:それがわからんですよ。

T:一つには、何千キロも離れた場所に島があるって、理解していないと旅に出れませんやん。例えば、宗教的な熱狂か何かで、一人のリーダーを中心とした集団が舟に乗って、大海原へ漕ぎ出したのか、それとも冒険野郎が居ってさ、新しい島を見付けてきて、皆で引っ越そうとか言うて、家族とか同志とかを連れて船出したんか、その辺は謎なんですよね。

Y:そうなんや。

T:今みたいに、地図とかも無い時代ですよ。太陽、月、星とかで自分の位置を把握したとか、そないにも言われてますけど、謎なんですよね。

Y:謎だらけやん。

T:そないに言われたかて、イースター島の人らもそうですけど、土地の人らは伝説は残してはっても、それがほんまかはわからんじゃないですか。

Y:確かに……

T:カヌーみたいな、細くて頼りない舟で、何日も何日も海を進んで行くんですよ。目印も何も無いわけやし、それこそ途中で引き返そうとか、思わんやったんか、気になるんですよね。

Y:あんたが心配したかて、しゃぁないやん。

T:まぁ、そうなんですけどね。

Y:そう言えばさっき、宗教的な熱狂とか言うてましたけど、どないな意味よ。

T:例えば、沖縄で言う処の、ニライカナイみたいな感じかな。遠い海の向こうに理想郷があるみたいな。ニライカナイも方角で言うと東って言われているし、太陽信仰みたいなんがあって、太陽が顔を出す場所を求めたんやもしれへんよな。

Y:逆に西へと旅した人はおらんやったんやろうか。

T:今、遺伝子の研究が進んでさ、イースター島の人らも含めて、東南アジア辺り、台湾辺りから移っていった人やないか、そない言われとるんよ。

Y:そうなんや。

T:最初に移動を始めた人が、何故、海の向こうを目指したのか。今言われとるんは、例えば部族間抗争に負けた、人口が増えて食糧難になった、そう言う説があるんよね。ハワイなんかも、東南アジア系の人が旅して、移住した人が始まりって言われとるよ。

Y:考えたら人類って凄い旅をしてるんよね。

T:そうですよねぇ。

Y:アフリカの南の方で最初の人類が生まれて、北を目指して、そこからヨーロッパとか、アジアとかへ枝分かれしていったんでしょ。太平洋の島々へ行った人が、フィリピンとかを北上して、台湾、沖縄へと進出してきたんかと思とったけど、ちゃうんやな。

T:違うんですよね。

Y:それで、war cryの話はどこへ行くんでしょうや?

T:いきなりそこへ話を戻すんかいな?

Y:元々始まりはwar cryやないですか、マオリのハカですよ。

T:アフリカから出た人類がアジアまで来て、そこから海を渡って台湾に至って、さらに海に出て、島伝いに南下して行ったって言うんが、今の定説なんよ。

Y:そしたら与那国島なんかにも、台湾から人が渡って来たって言うことやな。

T:一つ訂正しとかなあかんけど三万年ぐらい前までは、大陸と台湾って実は陸続きやってんて。

Y:へぇ~。

T:今より海面は八十メートルぐらい低かったんやで。それで台湾海峡は深さが五十メートルか六十メートルぐらいやから、なんとか行き来できる地面はあったわけですよ。

Y:そやけどさ、毎日ちょっとずつ海面が上昇していくわけやん。気が付いたら行き来がでけへんようになってさ、どないな気持ちなんやろうな。

T:あれやで、おじいちゃんが孫に話すわけや。おじいちゃんが子供の頃は、歩いて行き来できたのに、今は舟が無いと行き来でけへん、みたいな会話があったんやないか。

Y:考えたら、今も南極や北極の氷が溶けて、海面が少しずつ上がってるんやなかったでしたっけ。

T:その内、日本も海岸線が二メートル三メートル後退してやで、日本の面積自体が縮小するやもしれへんよな。

Y:なんでこないなことになったんでしょう。

T:地球全体の人口が今、八十億を超えてるんや無かったかな。その人達が畑を耕したりする上で、どうしても木を切り倒したりして、森を壊さざるを得んでしょうし、仕方が無いんや無いでしょうか。

Y:そないなもんですかねぇ。

T:そろそろ話を締めまへんか?

Y:ところで……

T:なんでしょう?

Y:war cryの話は一体どこへ……

T:はて?

Y:もう、ええですけどね。

T:一つ考えられるのは、war cryもまた最初はどこかの島で、どこかの部族が始めたのを、新しい島へ行く時にも持って行った、ぐらいしか、答えは思い付かんよ。

Y:それこそ、war cryが有る島の人の遺伝子とかを調べていったら、どこで最初のwar cryが始まったとか、わかるんやろうか。

T:それこそ、あんたが好きなWikipediaに答えが載ってなかったんかいな。

Y:残念ながらそれは無かったよ。

T:ほな、あんたが調べてきたら宜しいがな。今から専門的な勉強しなはって。

Y:無茶言わはるし……

T:でも、うちらの想像を超えるような航海力を持ってはってさ、war cryをいくつもの島へ伝えた人が居るやもしれへんやん。多分、うちらが思とるよりも昔の人って冒険が好きで、小さな舟で色んなところへ旅してたやもしれへんよ。

Y:そうやろか。

T:名前も残ってない、冒険者達が自分達の文化とかを運んでたんやと思たら、それはそれで夢とかロマンとか、湧いてこうへんか?

Y:島の戦士達が舟に乗ってさ、遠くの島まで戦争に行って、war cryで相手挑発したとか、あるんやろうか。

T:今からタイムマシンでも造って、自分で確かめに行ってくれ。

Y:そう言えば、刳舟で冒険に出た人達って、北上して日本には来んかったんやろうか。

T:今の処、そういう話は無いみたいよ。今後、調査が進んで証拠が出てくるやもしれへんけど。

Y:でも、あれやね、海の向こうに漠然とした興味が湧いてさ、舟造って海へと漕ぎ出して、何日も漂って運良く島を見付けたら、どないな気持ちなんやろうね。

T:今の時代やったら、研究者が何かを発見したとか、新しいお薬が完成したとか、そないな感じなんやろうか。

Y:今から冒険に出ようとか、そないな気持ちは無いけどさ、でも、若い時に一回ぐらい海外でも行ってた方が良かったんかなぁ、今になって思うよ。

T:今からでも遅うはないと思うよ。

Y:そもそも予算が無い、財布ん中、すっからかんやし。

T:それは……、知らんよ。

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