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つないだ手の温度が均されるまで  作者: みけめがね


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第十二話 二名様でお待ちの……


「混んでますけど、ここでいいですかね?」


「全然おっけーだよ!」


公園から駅の方に歩いて五分、私たちは駅ビルの中にあるサイゲリアに来た。ちょうどお昼時なので店内は多くの人で賑わっている。

朝一さんは順番待ちの記名台の紙に苗字を書いた。

五分ほどして店員さんが記名台の前に来た。

 

「えーっと、二名様でお待ちの朝一様〜」

 

「「はい」」

 

朝一さんと返事がシンクロした、一瞬店員さんの表情が綻んだような気がして、ちょっと恥ずかしくなった。そんな店員さんに席まで案内された。

すると朝一さんはわざわざ私の真横にちょこんと座った。


「あ、あの〜……朝一さん? なんで椅子の方に座らないんですか?」


流石に私は気になったので理由を訊ねると、

 

「だって、清水さんの隣がいいんだもん」


あざとく頬杖をつきながら言った。

正直言ってこれには私も少しの照れ隠しにやれやれと小さくため息をつきながら、

 

「しょうがないですね……朝一さん、何頼みますか?」


とパラパラとテーブルに置かれたメニューをめくった。

サイゲリアのメニューは全てとにかく安いので基本お金のない学生からの支持がとても厚い。

ピザ一枚でも五百円しないことの方が多いくらいだ。

安くご飯を食べられるありがたさをしみじみと噛み締めながら、朝一さんの方を見ると、注文用タブレットの注文リストが10件を軽々と超えていて、今にも注文リストにハンバーグステーキを入れようと手を伸ばしている。


「ちょ!? 朝一さんちょっと待ってください!」


焦った私は私は注文用タブレットをいじる朝一さんの手を咄嗟に掴んだ。


「ん? 清水さんどうしたの?」


何事もないようなポカンとした表情で朝一さんは私の方を見る。


「あのですね……そんなに頼んで自分で払えるんですか?」


手を掴んだまま私が問いただすと

 

「え? 今日は清水さんの奢りじゃないの?」


私の奢りだと当然のように思っていたらしい。まぁ出かけようと最初に言ったのは私だけど。

 

「一言も言ってませんよ、そんなこと」


「まぁ、今日くらいは……給料日も近いでしょ……?」


朝一さんはそう言ってすり寄る。

 

「今日頼むメニューは多くても三つにしてださい」


朝一さんにとっては非常に非情な宣告だったのか、ショックを受けた朝一さんはビターンとテーブルに顔を突っ伏した。


そしてそれから十分ほど悩みに悩んだ結果、朝一さんはコーンのピザとハンバーグステーキとコーンスープを、私は洋服がソースなどで汚れるのが怖いのでなるべく被害の少なそうなカルボナーラを注文することにした。


しばらくして朝一さんの料理が到着した。

ジュワジュワとハンバーグステーキの焼ける音が食欲を掻き立てる。

コーンピザもコーンスープも五百円以下とは思えないボリュームだ。

そういえば何かとコーンが多いけど、朝一さんはコーンが好きなのかな?

 

「いや〜久しぶりだな〜サイゲリア来たの」 


朝一さんは幸せそうにハンバーグステーキを頬張った。そういえば私もそうだ、自炊の楽しさに目覚めてからは外食なんて滅多にしなくなったし、一人で行くのもなんだか悲しくなるのでやめていた。

 

「なんか、こうやって朝一さんと一緒にいると色々楽しいです」


そんなことを言うと自然と笑顔が零れた。朝一さんは目を見開いて、


「清水さん? どうした……?! 頭打った!?!?」


と私の肩を掴み揺さぶって心配する。そんなに私って無愛想なのだろうか。

そんなことをしていると私のカルボナーラも届いた。

温玉とチーズの乗ってるベーコンの入った定番のカルボナーラ。

クリーミーなホワイトソースの旨味がパスタと絡んでそこに温玉の黄身がコーティングを施すように包み込む。


「美味しい……」

 

心配していたニンニクはそこまで効いてなくて、ちょっと安心した。


「ひみむさん、ひあはべむ?」


朝一さんが口をもぐもぐしながら私にコーンのたっぷり乗ったピザを差し出した。私が頷くと朝一さんはごくんと口の中を空にして


「はい、あーん」


と言って私の口元にピザを持ってくる。

 

「!?……ちょ……ぁむっ」


私は朝一さんがあーんしてきたピザを頬張る。

 

「いい食べっぷり〜! お味はどう?」

 

「まぁ、おいひいでう」

 

チーズと甘いコーンの組み合わせ。どこか懐かしい気がするのは多分私だけじゃないはず。そんな癖のない味だ。

朝一さんは満面の笑みで私がピザを食べる様子を眺めている。それよりも向かいの席の人がこっちを見ながら何やらニヤニヤしてるので、私は急いでピザを口に押し込んた。

 

  ◇  ◇   ◇

 

「ふぅー……お腹いっぱいです」

 

私は膨れたお腹をさする。胃袋が満足感で満ちている。

 

「この後どうする? 家帰る? それとも清水さんどこか行くとこある?」


朝一さんはホットコーヒーの入ったカップにミルクとガムシロップを入れながらこれからの予定を私に訊ねる。


「じゃあ、今日は帰りましょう、朝一さんも少し疲れてそうですしね……」

 

「言わなくてもわかるんだね……」


なんだか申し訳なさそうに朝一さんは呟く。

するとブー、ブーっと私のスマホが鳴った。

その通知を見て、私の顔は一気に血の気が引いた。今の気持ちはまるで死刑宣告を受けたみたいに、不安と焦りでいっぱいになっている。


「どうしたの?」


朝一さんが心配そうに私の顔を覗き込む。

 

私はそっとスマホの画面を消した。現実から目を背けて居心地のいい場所に目を向けるように、私は朝一さんの方を向き直して言った。


「……なんでもないです」

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