第47話 選べと言う命令
47話です。
布告は、
一枚だった。
余計な装飾も、
理由説明もない。
⸻
緊急布告
各地の責任者は、
状況に応じ
自ら判断し、行動せよ
判断の結果について、
当面、
問責しない
⸻
それだけだ。
署名は、
自分の名。
家名でも、
王家でもない。
個人名だった。
⸻
王宮の中庭。
伝令が、
四方に散る。
紙が、
国を走る。
⸻
最初の反応は、
無音だった。
誰も、
すぐには
動かない。
⸻
門。
門番は、
布告を
何度も読む。
⸻
「……自ら、
判断」
その言葉を、
指でなぞる。
⸻
「……俺が?」
隣の門番を見る。
相手も、
同じ顔をしている。
⸻
「……開けるか」
問いではない。
確認だ。
⸻
沈黙。
だが――
今度は
長く続かない。
⸻
「……開けよう」
誰かが、
言う。
理由は、
ない。
⸻
門が、
ゆっくりと
開く。
音が、
王都に
響く。
⸻
市場。
商人が、
布告を
握りしめている。
⸻
「……問責、
しない」
その一文を、
何度も読む。
⸻
「……じゃあ」
露店の布を、
引き上げる。
⸻
「……今日は
やる」
それだけだ。
⸻
港。
管理者が、
布告を
机に置く。
⸻
「……規定外の
風向き」
誰かが
言う。
⸻
「……だが」
管理者は、
外を見る。
波は、
穏やかだ。
⸻
「……行ける」
誰も、
反論しない。
⸻
船が、
動く。
止まっていた
時間が、
音を立てて
崩れる。
⸻
学院。
教師たちが、
集まっている。
布告を、
囲む。
⸻
「……判断して
いい」
誰かが、
呟く。
⸻
「……間違えたら」
別の教師が
言いかける。
⸻
「……問責しない」
学院長が
静かに
言う。
⸻
教室。
教師が、
黒板の前に
立つ。
⸻
「……今日は」
一拍。
「……決めても
いい」
⸻
子供たちが、
ざわめく。
初めての
音だ。
⸻
「……何を?」
誰かが
聞く。
⸻
教師は、
少し考える。
そして――
正直に言う。
⸻
「……何でも」
⸻
沈黙。
だが、
今までの
沈黙とは
違う。
⸻
一人の子が、
手を挙げる。
例の子だ。
⸻
「……組みは、
どうしますか」
⸻
教師は、
すぐに
答えない。
⸻
「……君たちで」
⸻
子供たちは、
顔を見合わせる。
戸惑い。
不安。
⸻
だが――
一人が
言う。
⸻
「……三人が
いい」
⸻
「……僕は
二人がいい」
⸻
声が、
重なる。
ぶつかる。
⸻
教師は、
止めない。
⸻
一分。
二分。
⸻
そして――
決まる。
⸻
完璧ではない。
不満も、
残る。
⸻
だが――
動いた。
⸻
王宮。
報告が、
次々に届く。
⸻
「……門、
再稼働」
「……市場、
再開」
「……港、
出航」
⸻
将軍が、
低く言う。
⸻
「……始まったな」
⸻
「……混乱は」
文官が
問う。
⸻
「……ある」
将軍は
即答する。
⸻
「……だが」
一拍。
⸻
「……戦える混乱だ」
⸻
王族は、
黙って
こちらを見る。
⸻
「……責任は」
そう問われる。
⸻
「……私が
持ちます」
迷いなく
答えた。
⸻
それは、
命令ではない。
選択だ。
⸻
夜。
王都の灯りが、
戻る。
以前より、
不揃いだ。
⸻
だが――
温かい。
⸻
私邸。
机の上に、
二つの紙。
⸻
一つは、
沈黙を
教えた
旧方針。
⸻
もう一つは、
今日の
布告。
⸻
どちらが
正しいか。
まだ、
分からない。
⸻
ただ、
確かなことが
一つある。
⸻
問いを
殺した世界は
止まった。
⸻
選ばせた世界は
傷つきながら
動き出した。
⸻
そして、
理解している。
⸻
これは、
回復ではない。
次の戦争の
始まりだ。
⸻
次に起きるのは、
選択の
責任を
誰が負うか
という争い。
誤字脱字はお許しください。




