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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革鉱山工業編〜』  作者: くろめがね


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39/52

第39話 模範家名

39話です。

発表は、

静かだった。


鐘も、

太鼓もない。


ただ――

官報に

載った。



準男爵家を

模範例とし


地方統治・教育・

治安維持の

標準モデルとする


文章は、

短い。


だが――

国の隅々まで

届く。



王宮の会議室。


地図が、

さらに広がる。


赤線が、

国全体を

覆い始める。


「……この方式で

 統一します」


文官が、

淡々と言う。


「……問題は?」


誰かが、

形式的に聞く。


「……ありません」


それが、

結論だ。



自分の名が、

資料の表紙にある。


「○○準男爵家方式」


方式。


個人は、

もういない。



地方から、

視察団が来る。


貴族。

官吏。

教師。


皆、

同じことを

聞く。


「……どうすれば、

 反発を

 最小化できますか」


答えは、

決まっている。


「……声を

 数にする前に、

 言語を

 整理する」


誰も、

異論を唱えない。



視察団は、

満足して帰る。


彼らは、

自分の土地で

同じことを

するだろう。


少しずつ。

丁寧に。



数週間後。


報告が、

積み上がる。


「……集会件数、

 減少」


「……訴願数、

 低下」


「……再教育参加率、

 上昇」


数字は、

美しい。



だが――

別の数字が

ない。


「……自発的提案件数」


欄が、

空白だ。



「……子供たちは?」


ふと、

聞いてみる。


学院長が、

答える。


「……非常に

 素直です」


「……質問は」


「……ありません」



視察に行く。


新設学院。


教室は、

明るい。


黒板は、

白い。


教師は、

穏やか。



「……分かりましたか」


教師が、

聞く。


子供たちは、

一斉に頷く。


声は、

揃っている。


(……揃いすぎだ)



「……質問は?」


沈黙。


誰も、

手を挙げない。


目は、

前を向いている。



休み時間。


子供たちは、

遊ぶ。


だが――

騒がない。


争わない。


ルールを

守る。


(……理想的だ)



一人の子が、

転ぶ。


周囲が、

集まる。


だが――

誰も、

助けない。


教師を見る。


指示を

待つ。



「……大丈夫?」


教師が、

声をかける。


子は、

立ち上がる。


「……はい」


それで、

終わる。



帰り道。


胸の奥が、

重い。


(……何を

 教えた)



王宮で、

祝賀の言葉。


「……見事だ」


「……反乱は

 過去のものになる」


「……次は、

 安定の世代だ」


世代。


その言葉が、

引っかかる。



「……後継の

 教育も、

 この方式で」


当然のように

言われる。


当然だ。


模範家名なのだから。



夜。


私邸。


机の上に、

新しい設計書。


「次世代教育

 完全統一案」


ページを、

めくる。


どこにも、

問いが

ない。



ふと、

気づく。


自分が、

一度も

質問されていない。


「……どう思うか」


「……望むか」


誰も。



窓の外。


学院の灯りが、

整然と並ぶ。


静かだ。


あまりに。



理解した。


これは、

暴政ではない。


完成度の高い

 善意だ。


だから、

止められない。



そして、

次に来るのは

必然だ。


この沈黙の中で

育った者たちが、

初めて

 何かを選ぶ瞬間。



そのとき、

世界は

揺れる。


それを――

自分は

見届ける側なのか。


それとも、

原因なのか。


チョークには別先生が織りなすシリーズもあります。よろしければご覧ください。

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