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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革鉱山工業編〜』  作者: くろめがね


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23/48

第23話 物は、黙って流れる

23話です。

補給部隊は、

戦場よりも

汚れていた。


血はない。

叫び声もない。


だが――

数が合わない。


「……消えます」


補給官は、

疲れ切った声で言った。


「倉に入ったはずの物資が、

 前線に届かない」


「盗まれている?」


「……証拠は、

 ありません」


(……いつものやつだ)



倉庫は、

広かった。


木箱。

帳簿。

人。


そして――

視線を合わせない人間。


「……管理方法は?」


「責任者ごとに、

 任せています」


「……つまり」


言葉を切る。


「誰も全体を

 見ていない」


否定は、

なかった。



初日にやったことは、

罰でも監査でもない。


帳簿を、一冊にした。


誰が、

何を、

いつ、

どれだけ。


それだけを

書かせる。


名前は、

書かせない。


「……意味が?」


補給官が、

困惑する。


「……全体を、

 見せる」


それだけ答えた。



二日目。


倉庫に、

掲示板が置かれる。


・入庫量

・出庫量

・差分


数字だけ。


誰がやったかは、

分からない。


だが――

消えた量は、

 誰の目にも見える。



三日目。


倉庫が、

静かになる。


笑い声が、

消える。


雑談が、

消える。


「……減ってます」


補給官が、

小声で言う。


「……差分が……」


「……ああ」


見れば、

分かる。


盗みは、

怒られるから

止まるんじゃない。


意味がなくなると、

 止まる。



一週間後。


前線への補給が、

滞らなくなった。


「……奇跡だ」


誰かが言う。


「……いや」


否定はしない。


奇跡として

処理される方が、

都合がいい。



王都への報告。


「補給効率、

 二割改善」


「横流し件数、

 事実上ゼロ」


「前線の士気、

 安定」


軍部の空気が、

一段変わる。



呼び出し。


「……教育官殿」


将校が、

姿勢を正す。


「補給は、

 戦争の血管だ」


「あなたは、

 それを詰まらせずに

 流した」


その場で、

辞令が出る。


「軍後方統括官」


肩書きが、

また増えた。



夜。


倉庫の前を、

一人で歩く。


物資は、

黙って運ばれていく。


誰も、

文句を言わない。


誰も、

疑わない。


(……楽だな)


考えなくていい。


疑わなくていい。


数字を見て、

動くだけだ。



翌朝。


次の要請。


「都市工房にて、

 生産効率が不安定」


「職人同士の衝突、

 頻発」


封筒を、

開く前から

分かっている。


(……同じだ)


人がいて、

感情があって、

判断がある。


なら――

沈黙を入れる。


それだけだ。


ペンを取る。


署名する。


また一段、

上へ進んだ。


誤字脱字はお許しください。

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