【3】 -警護騎士シンハ、殺人教団の首魁ジャイラダと邂逅す。-■09■
■09■
騒々しい狂乱な宴の輪を抜け、
シンハは施設内にある尖塔へと案内された。
先端が半分、倒壊している尖塔。
入り口から仄かに黄色い明りが漏れている。
その中からは、数多くの悲鳴が聞こえて来ていた。
それは、悲しみや怒りの声では無く、絶命する人の叫び。
声や表情には出さなかったが、シンハの心は動揺して緊張に身を強張らせた。
自分や他人の死を受け入れる事、武人である自分は自覚しているつもりではある。
だが、それは闘いの場や戦場での事であり、こんな異常な状況は想定外だ。
武人としての誇りと意地で、シンハは尖塔内へと進んだ。
尖塔の中は、瓦礫が散乱しているが、大きな広間になっている。
そして、煌々と黄色い光で満たされていた。
それは、蝋燭の灯りだけでなく、無数の蛍の様な光る何かが漂っていた。
ゆっくりとシャボン球の様に空中を漂う黄色い光。
すぐにシンハは、それが何かしらの魔法によるものだと直感した。
数多くの蝋燭が灯り、得体の知れない光球が漂う広間。
その中には、複数の人質が立っていた。
外に漏れ聞こえていた無数の悲鳴。
それは、その人質達の叫びだとシンハは察した。
人質達は一列に並ばされ、独りずつ前に進む事を強制させられている。
その先にいる男の手には、ハンマーと槌が握られていた。
列を進み、男の前まで到達した人質は、周囲に立つ男達に拘束されて跪かされる。
そして、人質の額に目掛けて槌をハンマーで打ち込んでいく。
額から血を流し、激痛に悲鳴をあげる人質達。
ザジー教徒達は、それを流れ作業で黙々と続けていた。
「あ、あれは…。
何をしているんだっ??」
「あれかい?
あれは、アイツらが"贄"である事を刻印しているのさぁ」
ジャイラダは自慢げに笑った。
「バトラマールナ神に捧げる"贄"として、印をつけているのさっ。
あの刻印を入れられたら、もう普通には死ねないよっ♪」
明らかに自分たちの行いに、誇らしげな自信を持ち、
ジャイラダは、嬉しそうに得々とシンハへと説明する。
そして、シンハを人質の列が向かう先へと案内した。
刻印を額へ打ち込まれた人質は、額から溢れる血をそのままに、
一段高く設えた場所へ連行されて行く。
再び、両側から狂信者が人質を抑え込む。
不穏な気配を察知して、人質は必死に抵抗する。
だが、狂信者達は手慣れた様子で人質を組み伏せた。




