【3】 -警護騎士シンハ、殺人教団の首魁ジャイラダと邂逅す。-■07■
■07■
「いいねぇ~♪」
にたりとジャイラダは下品な笑みを浮かべた。
「アタシャ、ゾクゾクしちゃうよぉ♪
じゃあ、次会ったら…。
すぐにアンタは殺すねっ♪」
会話を楽しむかの様に、軽い口調でそう告げるとジャイラダは笑う。
二人の間には一触即発な雰囲気が立ち込め、ドンドンとその気圧が高まってゆく。
アシュリータを含め周囲は、その雰囲気を緊張した面持ちで見守る。
周囲に居る敵味方全員が、二人の闘いが始まると予見していた。
「アンタが、そうして再戦を挑んでくれれば…。
コッチとしては、より多くの贄と金が手に入るっ♪」
「よしっ!!」
ジャイラダは、シンハがいたく気に入った様子で声を張り上げた。
「アンタには、アタシらが何をしているか見せてやるよっ」
シンハの殺気をジャイラダは巧みに避け、にこやかに笑うとシンハを再び引っ張った。
不意に緊張を緩められ、シンハの身から殺気と怒気が抜き取られてしまう。
シンハは身分的に低いが貴族階級。
士族である。
今回の身代金は、一族の誰かが支払ってくれるだろう。
だが、問題は無事に帰った後だ。
"山賊ごときに遅れをとった。"
そう周囲から陰口を叩かれる。
主君である、アディティア大公からも無下に扱われるに違いない。
ジャイラダ率いる、ザジー教の総数。
今回の大規模襲撃の理由。
奴等の根城にある設備。
そうした情報だけでも、持ち帰らなければ…。
怒りを肩透かしされた事で、逆にシンハは冷静さを取り戻し、そんな事を漠然と考えた。
"まずは、この勧誘を利用して敵情視察するべきか…。"
そうして、前を歩くジャイラダに引き綱を引っ張られるまま
渋々と主人に従う飼い犬の様に、彼女の後をついて歩き出した。
夜の闇は深々とその帳を降ろしていたが、
見える範囲で、シンハはザジー教徒の根城を観察した。
精巧に積み上げられた石積み。
精緻に塗られた漆喰。
経年劣化と戦で壊れた外壁。
そうした劣化した建物に絡みつく蔦。
所構わずに鬱蒼と茂る雑草。
小さく崩れた廃墟だが、精緻で寸分の隙も無い高い建築技術で建てられた城。
シンハは、ザジー教徒達のアジトが、捨てられた帝国の施設だと気が付いた。
いつぞやの辺境戦争で、打ち捨てられた廃城の様だ。
そんなに大きな施設ではない事を見ると、城というより前哨基地なのか?
施設にある円周状に囲む様な外壁。
その奥にある広場が、狂信者達が騒いでいる宴の会場らしい。
ジャイラダに連れられてシンハは、その宴の会場へと脚を踏み入れた。




