【3】 -警護騎士シンハ、殺人教団の首魁ジャイラダと邂逅す。-■06■
■06■
「アンタは、アンタの信じる神様から見放された。
だから、負けたんだよっ。
アタシャ、バトラマールナを信じているっ。
バトラマールナ神を愛しているのさっ♪」
シンハの視線に真正面からジャイラダは向き合う。
その眼光には、しっかりとした芯があり、確固たる自信が溢れている。
「アンタが慕う神が誰なのかは知らないが…。
神に対する愛が足りなかった。
だから、負けたんだよぉっ。」
諭す様に彼女は告げ、ぐいっと視線を逸らさせない様にシンハの顎を掴んだ。
そうして、顔を近づけ真っすぐな視線をシンハへ向ける。
「バトラマールナ神がアタシに勝利をくれた。
だから、アタシが正しい…っ!!」
「でも、シンハ…、お前は強いっ♪」
ジャイラダは視線を逸らさず、シンハの顎を掴んだままで立ち上がる。
ツラれてシンハも立ち上がった。
「アタシはお前が気に入ったっ♪
だから、仲間にしたいっ!!」
「断る…っ!!」
シンハは間髪入れずにジャイラダの勧誘を断った。
領地を持っていないとは言え、シンハも士族の一員である。
下っ端とはいえ貴族階級であり、野卑な山賊に身を落とすなど許されない。
「ふぅーん…、そうかい…っ。
アタシらが、"ただの盗賊"だと思っているかい?」
「そうでなかったら、何なのだ?」
「うふふっ♪じゃあ、他の山賊と違うトコを見せてやるよっ。
ついて来なっ!!」
ぐいっと服の裾を引き、ジャイラダはシンハを檻の外へと促した。
だが、シンハは力を込めて踏ん張り、その場に留まる。
「おっとっ!?
何だいっ?イヤなのかいっ??」
散歩を拒否して、踏ん張る犬の引き綱が張り詰める様に
引っ張る力を止められたジャイラダの身体は、ぐんっと引き戻された。
シンハは両手を後ろに縛られつつも、仁王立ちして彼女を睥睨する。
「別にお前達、狂信者共に付き合う気はないっ!!
俺の身代金が欲しいのだろ?
さっさと、仲介業者へ引き渡すがいいっ」
「…面倒くさい男だねぇ、殺すよ…っ?」
ジャイラダは眉をひそめると、片手に握っていた大鉈を握り直す。
「…俺を殺したら、身代金が減るぞ?」
ふんっと鼻息を吐きつつ、シンハは呟く。
「まあ、無事に帰っても…。
再び、お前たちを全員ぶち殺しに来てやるがな…っ!!」
戦争の賠償金として、はじまった身代金制度。
山賊達にとって、品物以上に価値がある場合が多く。
人質の地位によって、身代金の金額は変化する。
現在、ここに居る中で身分が一番高いのは、警備兵のリーダーであるシンハであった。
当然、ケガで身代金は減額。
死亡の場合、身代金はゼロになる。




