【3】 -警護騎士シンハ、殺人教団の首魁ジャイラダと邂逅す。-■03■
■03■
狂信者達の勝利の宴から離れ、松明の明りも乏しい場所。
そんな外れの檻に身代金が見込める人質達は、集められて収監されている。
檻の中には、シンハと部下3名。
旅団のリーダー、乗り合い客である女性のアシュリータ。
その中でも武人であるシンハと部下3名だけは、両手を後ろ手に拘束されている。
「痛…っ、あのババアッ!!
思いっきり蹴りやがって…っ」
シンハは頭に出来た大きなコブの痛みに呻く。
そして、檻の隙間から狂信者達が騒ぐ宴の様子を伺った。
「アタシ達…、大丈夫でしょうか…?」
アシュリータは怯えつつも、シンハの傍へ近づく。
そして、持っている濡らした布で彼の頭に出来たコブを冷やす。
彼女は、旅団の馬車に乗っていた乗り合い客で、旅団とは直接的な関わりはない。
地方の大きな商人の娘で、都市部にある全寮制学校からの里帰りをしている途中であった。
彼女は、これから身の上に起こる事に怯えつつ、シンハへ問いかける。
「ザジー教って、人を殺すことで功徳を得られると信じているんでしょう…?
エゲントロピーの"混沌"側…、バトラマールナ神を信じているとか…。
一緒に居た侍女のプリヤとも引き離されてしまったし…。
彼女は無事なのかしら…。」
不安が彼女の口から漏れ、彼女は自分の言葉に恐怖を掻きたてられる。
漏れ出す不安は、シンハへの問いかけとも、自身への問いかけにも聞こえた。
「大丈夫だ、アシュリータ。
このまま大人しくしていれば…、たぶん大丈夫。」
「でも、バトラマールナ神は血と死、破壊を好む神で…。
神話の時代、ザジー教の宗主とバトラマールナ神は誓約を交わし、
殺した者の魂を贄として、バトラマールナ神へ捧げる約束をしたと聞きましたわ。
きっと、我々も邪悪な儀式の贄として、捧げられてしまうのかも…。」
アシュリータは、自分の言葉で湧き上がる恐怖に震えて縮こまる。
両手が使えないシンハは、自分の身体を彼女に寄せて恐怖に震えた彼女を支えた。
「いや、大丈夫。
我々を殺せば、身代金は手に入らない。
貴女の父上は、必ず身代金を払ってくれますよ…っ。」
シンハはそう告げ、陰鬱になって希望を失いかけているアシュリータを励ました。
すると、彼の目の前にあった檻の格子を誰かが勢いよく叩く。
シンハの耳元で大きな金属音が響き、シンハとアシュリータは驚いて身を怯ませた。




