【3】 -警護騎士シンハ、殺人教団の首魁ジャイラダと邂逅す。-■01■
■01■
太陽はすっかり落ちて、夜の闇が支配してる。
月の光でニルギス山脈の白い万年雪が、妖しく光っていた。
その上には、満点の星が瞬く。
そんな光景の下で、戦いに勝利したザジー教徒達は焚火を囲み、宴を催している。
大勢のザジー教徒達が酒を酌み交わし、焚火で焼いた肉を喰らっていた。
その肉は旅団の馬を屠った肉で、それを焼いている。
酒も同様に旅団が運搬していた物品だ。
野太くダミ声な合唱。
破裂音の様な笑い。
その宴は、宗教的な雰囲気は皆無で、雑然として混沌な宴だった。
火を取り囲む中央に座したジャイラダは、焼いた馬肉へと食らいつく。
大きく肉へ食らいつくと、顔の輪郭がカエルの様に横へと拡がる。
焼けた香ばしい匂いが鼻孔と口腔内を刺激されつつ、馬肉を食む。
肉汁が脂と共に滴り、染み込む様に旨味と汁気がジャイラダの口腔内に拡がる。
そして、弾力があり上手い歯ごたえの肉を噛み締め、ぐっと酒で流し込む。
「姐さん、これが見積書です。」
「…ん。」
脇から書類を差し出した男より、彼女の体はふくよかで大きく。
手下の男は小人の様に見えた。
手下か書類を差し出したままの状態で、彼女は受け取らずに書面を確認する。
それは、身代金を受け渡す為の見積書だった。
捉えた捕虜の中で、身分の高い人物は家族へ身代金を要求する。
その時、仲介業者として奴隷商人を仲介する事で、即効で現金化する事が出来た。
奴隷商人は人質を即金で買い取り、利益を上乗せして家族へと請求する。
元は国同士の戦で利用されるシステムだが、現在は山賊や盗賊たちも利用していた。
この方が、捕縛者は安全・即金で金が得られる。
逆に家族側は、安全に身柄を無傷で返還して貰えた。
だが、あくまで保護対象は金のある人間だけである。




