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8 真実の告白

放送はまた反響があり、特に私の体験の話に対する反響がすごく、そのうえ、そのことは週刊誌などにも載ることになった。


ディレクターからの提案で、2~3ヶ月私と昴くんが相談コーナーをすることになり、ゲストの時間が短縮された。


「わ、私、もしかして、毎週出るの?」


「そういうことだね」


ディレクターからの電話を切ってから昴くんに聞くと、にっこりと笑いながらそう言われた。


「うそ…」


「これもミッションでしょう?」


「……」


こんな展開になるとは…。


その頃、白河さんが本を出版して、これまたベストセラーになり、もう1冊本が出ることが決まっていた。


「流れがすごいね、今」


昴くんが言った。


「目覚めてくる人も、ますます増えたんじゃない?」


「かもね」


私と昴くんの相談コーナーのアドバイスなんて、どっからどう聞いても、わけのわからないこと言ってるだろうなって思っていたけど、反響を呼んじゃったし、白河さんの本を読んだけど、目覚めや、この宇宙の真実をあからさまに書いた本で、それがベストセラーになってしまうんだから、世界が変わってきてるってことだよね。


翌日、買い物に行き、帰りがけコンビ二になんとなく入って、週刊誌を見ると、


「空野いのり、流産と離婚をラジオで告白。天宮昴の恋人も、流産と離婚をしていたことが昨年明かされたが、同一人物か?」


と書かれていた。


ドキ!!!何これ?っていうか、私が離婚して流産したってのは、どっかの誰かが勝手に調べて、勝手に明らかにしちゃったんじゃない!


『ひかり!』


『昴くん?』


『あ~~。テレビ局入るときにとっつかまった。空野いのりは実はひかりさんではないですかって、レポーターが…』


『週刊誌にも載ってるよ~~』


『まじで~~?どうにか、まいたけど、まだ、これからもとっつかまるかも。どうする?』


『どうするって…』


『ノーコメント、答えられないって今日は言ったけど』


『しばらくそうしておいて、まだ、どうしていいか、頭真っ白』


『わかった。そうだね、明後日ラジオだしね…。その時まで、黙っておくよ』


『うん』


は~~~。やっぱり、正体ふせておくなんてことできないもんなのかな。まあ、ふせておく必要もないってことかもしれないけど。


昴くんは、3日に一回くらい、ブログを更新していた。


>今日もドラマの撮影でした。朝早かったり、夜遅い撮影はだんだん冷えてきて、そろそろばっちり防寒しないとな…。そうだ。この前、ファンの方から、あったかい帽子をもらいました。すんごいあったいです。ありがとう~~~!


その帽子をかぶってる昴くんを写メで撮ったあげて、それを載せた。


すぐにコメントが入り、どうやら、その帽子をあげたファンの子らしい。


>私があげた帽子をかぶってくれて、すごく嬉しいです!


そうだよね、そりゃ、嬉しいよね…。


週刊誌のことでも、やっぱり、


>空野いのりさんって、ひかりさんなの?


ってコメントがたくさんあった。昴くんは、レポーターの質問は、ノーコメントに出来ても、ファンの子からの質問は、ほっておけなかったらしい。


「あ~~~。まじ、どうしよう~~~!」


相当悩んだあげく、


>今度のラジオで、真相をお話します。


と書いてしまった。


「え?」


それを見て、びっくりすると、


「ごめん、ひかり…」


としょぼくれた顔で、謝ってきた。


「……」


無意識に私が思ってたことを感じ取り、


「ひかり。ありがとう~~」


と抱きついた。


「あ、あれ?私今、なんて思った?」


「しょうがない。昴くんは嘘ついたり、ごまかすの嫌いだもんねって…」


「……」


そうだよね、うん。それを知ってるから、何にも言えない。


「ひかり~~!」


また抱きついてきた。


「こうなったら、一緒に暮らしてることも…」


「え?」


「ばらしちゃ、駄目?」


「駄目!」


「ちぇ~~~」


ちぇ~~って…。


そりゃね、私もそれすら、ばらしちゃったら、楽だと思うの。だって、マンションの近くで一緒に買い物とか、外食とか、まったくしてないし、私、いつも駐車場の方からこっそりと、マンション出て行ってるし…。もっとどうどうとしたいなって、思ったりするもの。


「でしょ?!」


「だけどまた、さわがられる…」


「じゃ、一番手っ取り早い方法」


「何?」


「籍入れちゃうの。いっときさわがられるけど、結婚してりゃ、文句は言われないよ」


「え?!」


何言ってるの。昴くんまだ、20歳。


「十分結婚できます」


「……」


「あ、今、頭真っ白になってる?」


私は黙って、こくんとうなづいた。


「まあ、いいや。これも全部流れに任せよう」


「う、うん」


そして、ラジオ当日がやってきた。昴くんのブログは、ワイドショーでも取り上げられ、ラジオで真相を話すようですねって、司会の人が言っていた。


そんなことわざわざ、ワイドショーで報告しないでもいいのに…。


ブログのコメント欄には、


>昴くん、ラジオ聞きますね。でも、ワイドショーや、週刊誌にいろんなことを言われたりしても、私はあったかく見守りたいと思っています。


そんなコメントがあって、また、二人でじ~~んとしてしまった。


ほんと、昴くんのファンは優しい。


私がもしファンだったら、嫉妬したり、ショック受けたりしないだろうか。それも、一緒に暮らしてるだの、もし、結婚なんてことになったとしたら…。


「そうかな?ひかりなら、絶対にあたたかく祝福してくれそうだよ」


「最終的にはね。でもはじめは、嫉妬しそうだよ」


フワ…。昴くんが私を抱きしめた。


「だけど、ひかりは嫉妬する立場じゃないから、もし…、なんて考えなくてもいいの」


そう言って、優しくキスをする。


「うん、そうだね」


次元が上がってきているこの世界。きっと、起きることも変わってくるよね…。それを信頼しよう。


夜、11時。


「天宮昴のミッドナイトデート!」


昴くんの元気な声で、ラジオが始まった。


「こんばんは。一週間どう過ごしてましたか?楽しかったですか?俺はドラマの撮影と、あと、12月頭にね、チャリティーコンサート出ることになって、それの準備が始まってます。俺、ギター弾いて歌う予定。あと、明日、大学の文化祭行きます!女子大で、ちょっとドキドキもんです」


私はブースの外で聞いていた。ゲストのコーナーの方が先にあるから。今日のゲストは、一緒に共演してる女優さんだ。その人を紹介して、ドラマの撮影でのエピソードや、大変なことなどを一緒に話していた。


「でも、昴くんはいつでも、元気だよね」


23歳になる女優さんが、そんなことを話すと、


「あ~~。はい。まだまだ、若いし」


なんて言って笑った。


「え?23の私は、おばさんかな?」


女優さんに聞かれて、


「まさか!若いですよ!」


と昴くんは、首を横に振りながらそう言った。


「そっか。昴くんの彼女は、29歳だっけ」


「もう30になってます。誕生日、来たし」


う…。ばらすなよ~。


「30だったら、結婚とか考えてない?私は30までに結婚したい。あ、そうか、バツ一だっけ?」


「……」


昴くんは一瞬黙った。


「あ…。はい。その…」


「ごめん、困らせちゃった?ごめんね」


「いえ…。その…、あ~~~!すみません。収拾つかないですね。それ、あとで話しますから。今は、ドラマの話してもいいですか?」


「はい。ごめんね」


本当に昴くんは困っていたが、すぐに切り替え、ドラマの次回の予告をして、女優さんにお礼を言い、ゲストのコーナーが終わった。


CMにいってる間に、女優さんと入れ替わり、私が昴くんの前の席に座った。女優さんが横を通るとき、私をちらっと見て、


「昴くんの彼女なんですか?」


と、けっこうクールな目で聞いてきた。


「え?」


「それをこれから話すんでしたっけ?外で聞いてます」


そう言って、ドアを閉めた。


『な、何?』


『あのさ、噂だけど、あの人、俺のファンだったらしくて、共演できてすんごい喜んでたとか』


『え?』


『黒い霧出てたし、ひかりに嫉妬してるみたい』


女優さんから出た黒い霧はすぐさま、昴くんが消してしまっていた。ああ。やっぱりあれ、嫉妬の黒い霧か~~。


CMあけ、昴くんはちょっと声を低くして、優しく語り出した。


「ブログにも書いたんですが、真相をラジオで話すって…。今日も空野いのりさん、来てくれてるんだけど、その…、レポーターに聞かれた時には、話す気なかったんです。でも、ファンのみなさんには、ちゃんと話したほうがいいかと思って…。あ、俺、どうも隠し事や、嘘って苦手なんです。だから、彼女がいることも言っちゃったし…」


ちょっと、間をおくと、


「小説書いてた時には、こうなることなんて、夢にも思ってなくて。有名になるつもりもないし、だから、名前もペンネームで十分って、そんな感じで小説を書き出して、それも、本になるとか売れるとか映画化とか、そういうのも、そんなことになったら面白いねって話してただけで、本当にそうなっちゃって、俺ら驚いてて…」


昴くんは、私に代わって話してくれてた。


「その…。だから、こうなることを想定して、ひかりは、名前をふせてたわけじゃないし、ただ、ペンネームで始めたことだし、そのまま、その名前を通していこうかって…。ね?ひかり」


え?私?


『うん』


「あの、はい…。すみません。なんか変なことになっちゃって」


「俺と対談したり、ラジオに出たりっていうのも、予想外って言うか、まさか、そんなことになるとも思ってなかったことで。でもなんだか、騙すって言うか、嘘ついてたみたいになって、本当にすみませんでした」


昴くんは、真剣な声でそう言った。


「この前、ひかりが自分のことを話し出して、俺、聞いててびっくりして。だけど、自分の体験が、誰かの役に立つことならって、ひかりがそう思ってるなら、俺がとやかく言うことじゃないし…」


「うん」


「それで、俺としては、このまま黙ってたり、知らんぷりしてたりするよりも、真相をちゃんと話したいって思って、それをひかりも納得してくれて」


「うん…」


「で、今日、こうやって、お話することになりました。空野いのりって、実は俺の彼女です」


言っちゃったね。あ~~、でもなんか、すっきり。


「すっきりしました。はは…。今まで2回放送してた時、なんか変な感じだったもんね?ひかり」


「うん…」


「は~~。あ、これ聞いてる、ひかりの家族、俺の家族、関係者のみなさん、もしかして、心配かけたり、やきもきさせたかな?」


「あ…。うん。そうかも」


「すみませんでした。ひかりとも話してたけど、やっぱり何かを隠してたり、嘘ついてたり、そういうのって、結局は真実をあかされるようになってるんだって…。そういう時代になってるんですね。ほら、いろんな悪いこと、表面に出てるじゃないですか?ニュース見てると思いますよ。今まで、隠されてたことが、どんどんあかるみになってきてるなって」


「あ、そうだね。そういえば」


「それは、組織とか、そういうものだけじゃなく、個人的なものもそうなってきてるような気がする」


「個人的?」


「俺やひかり、悟さんとかもそうだけど、もっと、普通の、一般のみなさんも。家族間での秘密が、表面化されたり、ほら、本音とたてまえとかもそうじゃない?本音だけの世界になるんじゃないかな」


「みんなが?」


「だって、みんな深いところでは、つながってるから。隠していたって、わかるようになると思うよ。なんか、今回のことで、俺、それを感じたんだよね」


「そうだね、そうかもね」


「だとするとさ、やっぱり全部話したほうがいいんじゃないの?結局ばれると思うけど」


「え?!」


『一緒に暮らしてることも』


『え~~?』


「俺、ここであること、宣言してもいい?」


「宣言?!」


『な、何を?』


駄目だ、落ち着いて昴くんの心を読み取りたいけど、まったく出来ない。ぱにくってる…、私。


「宣言じゃないか…。え~~と。告白?」


「告白?な、何を?」


ブースの外では、ディレクターが、目を輝かせ、その横でさっきの女優さんが、睨んでいた。


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