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equilibrium

作者: きゃんばす

【用語説明】


<アシデーミア>

pH1~7.3までを管理する酸性の女神

少し焦げた肌で外ハネした金色のショートカット


<アルカレーミア>

pH7.5~12までを管理するアルカリ性の女神

真っ白な肌で内巻き気味な深い蒼色のロング


<均衡の神殿>

女神2人の住処

2人がこの神殿の中央にいる時すべてのものが中性になる

時々大喧嘩になってどちらかが西と東にあるそれぞれの塔に引きこもるため世界のバランスは崩れやすい

異世界。均衡の神殿にて。

「アルちゃん、陽の光浴びなきゃダメだよ!体内時計を修正しなきゃ〜」

短い髪の少女が元気に言う。

祭壇へと降り注ぐ日光が明るい髪に反射しきらめく。

彼女の白くて細い指は、長い髪の少女の肩へ掛けられ前後へと激しく振られている。

「余計なお世話。女神に日光はいらない」

長い髪の少女はそう返す。

この神殿に祀られているのは、世界のバランスを司っている、2人の女神。

アシデーミア、pH1~7.3までを管理する酸性の女神。

外ハネした金色のショートカットが映える、溌剌とした女神だ。

アルカレーミア、pH7.5~12までを管理するアルカリ性の女神。

内巻き気味な深い蒼色ロングの髪が妖艶な雰囲気を醸し出している引っ込み思案な女神だ。

「アルちゃんアルちゃん」

「なんだよ…」

アルカレーミアは嫌そうな顔をする。

アシデーミアの顔にはにやりとした笑みが浮かんでいる。

これは何か余計なことを考えついた時の顔だ。

「女神2人が同時に神殿から消えたら、この世界はどうなると思う?」




「今の世界はこんなんなっちゃったんだねー」

「アシデ、世界が崩れないうちに帰ろうよ」

遡ること数分前。

アシデーミアの誘い(実験?)で女神2人が神殿から消えた。

女神が同時にいなくなることなんて今までなかった。

ここから世界のバランスがどう動くかは誰も知らない。

「女神様!女神様はどこに行ってしまったのですか!?」

城の担当者が叫んでいるのが聞こえる。

きっと彼らの顔は真っ青だろう。

「あぁ、また面倒な。アルちゃん、逃げよ」

「アシデっ…!?」

アシデーミアはアルカレーミアの腕を掴んで走り出した。

森の木の間を縫ってどんどんスピードは上がっていく。

「アシデ、こんなに離れちゃまずいって」

「アルちゃんは心配性だなー」




「ねえ、アシデの力が強くなってきてるって」

段々空の色が金色に色づいてきた。

大地の香りも甘酸っぱいような匂いに染まる。

「アルちゃんが力を抑え込んでるからだよ」

「全くもって、そんなことはない」

アルカレーミアはやや食い気味で返す。

普段澄んだ水色の瞳である彼女の瞳は、今はやや金が混じっている。

世界が酸性へと傾いている、アシドーシスの状態であることが伺える所見だ。

対するアシデーミアは、すべての色素が深まり瞳に宿る光は普段より強くなっている。

身体からは虹色とも言えるオーラが出ている。

「…っ!」

アルカレーミアは胸部を抑えてうずくまる。

酷い胸痛があるのか、冷や汗さえも見られる。

「アルちゃんっ!」

「近づかないで!」

アルカレーミアは悲痛な叫びをあげる。

強い酸性の力を直接発している酸性の女神(アシデーミア)が、自らと逆の属性が近寄ってくれば当然ダメージを受ける。

世界のバランスが崩れている今なら、そのエネルギーは倍増するだろう。

逆の属性そのものが、そのまま触れてきたのなら、どのくらい大きなパワーになるだろうか?

「ど、どうしよう?それにここはどこ…」

アシデーミアは泣きそうになりながら言う。

随分遠くまで来てしまった。

今のアシデーミアなら2人まとめて神殿に戻ることも可能だ。

けれど、大きな力には相応の属性がくっついてくる。

強い属性の力を浴びてしまえばアルカレーミアはもやのようになって消えてしまうだろう。

「た、担当者に保護キットを用意してもらうから。少しの痛みで終わらせるから。ごめん、ごめんねアルちゃん」

20cmほど距離を取りながらアシデーミアは話しかける。

既に溢れ出した涙は止まることを知らない。

酸性の女神さえも精神状態を不安定になる。

世界のバランスは暴走し、崩れ始める。

「だい…じょうぶ。わたしは、わたしはアルカリ性の、女神だからっ…!」

アルカレーミアは決死の目で立ち上がる。

その時、ぞわりと風が生まれた。

森の花々が芽吹き、黄色、青、赤、様々な花が咲き乱れる。

光が溢れ、動物が歌い、女神2人はより一層美しい姿に変わる。

「大丈夫。わたしたちは、2人でひとつなんだよ」

酸性へと傾いていた世界は、中性へと戻ってゆく。

刺繍に溢れた絹製のワンピースが、布とリボンに溢れた重量感のあるドレスへと変化していく。

これがあるべき姿だとでも示すように周りの空気が神聖なものへと染まる。

「アルちゃん、変なとこで本気出すよねー」

「ぜんぶアシデのせいだよ」

女神2人は、均衡の神殿に向けて新たな1歩を踏み出した。

全く同じようで、違うリズムで。

用語の意味の履き違えによる不整合などあると思いますが、諸般の方面では素人であるため大目に見てくださると嬉しいです。

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