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閃く星は空を翔ける  作者: 武尾 さぬき
第4章 編入生VS進学組
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第17話 実戦

 一定の距離を保ちつつ、動き回っているベラトリクス。しかし、突然その動きを止めてじりじりと後ろへ下がっていった。視線はあくまでサイサリーへ向けているが、射程距離からは少しずつ遠のいていく。




『妙な動きだな……。あの距離から届く魔法を使えるのか? 念のため結界の準備をしておくべきか?』




 サイサリーは、ベラトリクスから目を逸らさず防御の態勢に入った。彼が近付いてきたなら、再び攻撃の姿勢へ切り替えればいいと思っていたからだ。





「射程に飛び込んでくるまでは防御の姿勢でいるつもりかよ? まったく教本通りの戦い方で助かるぜ」




 ベラトリクスは余裕の表情で、ゆっくりと魔法の詠唱を始める。





『やはりあの距離から撃ってくるつもりなのか? 魔力で射程を伸ばすつもりか?』




 サイサリーは防御の姿勢を崩さないでいる。しかし、内心でベラトリクスの能力の底を見たように感じていた。彼が今、詠唱しているのは雷の下級魔法だったからだ。




 仮に今の位置からここまで魔法を飛ばせたとしても正確に狙うのはむずかしい。それができたとしても、下級魔法なら容易に結界で防げるのだ。なにより、彼の詠唱は、下級であるにも関わらずあまりに時間がかかっている。




『万が一、この距離まで正確に狙って届く魔法を使えるとしても、下級魔法であの詠唱ではお話にならないな。所詮、編入組なんてそんなものか?』





「くらいな! サンダーボルト!」




 ベラトリクスのスティックから雷光が照射される。真っ直ぐにサイサリーに向かうと思われた稲妻はその少し手前――、地面に直撃した。






「……土煙の目くらまし、狙いは次の一手」




 アトリアは、ベラトリクスの狙いを読んでいた。彼は射程外に移動したわけではなく、狙いがサイサリーから別の物へと移っただけなのだ。




 しかし、稲妻が地面に直撃する寸前のところでその狙いにサイサリーも気付いていた。




「ふん、猿知恵だな! 煙幕をはって真の狙いは次の魔法ってところだろう?」




 彼は次に来るであろう本命の魔法を察知すべく気配を探った。だが……。




『魔法の……、精霊の気配がない?』




 サイサリーが次に身の危険を感じた瞬間には手遅れだった。魔法の発動とほぼ同じタイミングで走り出していたベラトリクスが視界に入り、次の瞬間‥…。





「蹴った!!」




 スピカの大きな声がこだまする。ベラトリクスはサイサリーに向かって大きくジャンプして、その顔面に飛び蹴りをくらわせたのだ。


 顔に強烈な衝撃を受けたサイサリーはその場に崩れ落ちる。激痛の走る頬に手を当てながら立ち上がろうとすると、彼の身体を跨ぐようにしてベラトリクスが立っていた。





 飛び蹴りの光景があまりに衝撃的過ぎたのだろうか。見物していた学生含めて誰一人言葉を発せず、数秒の間沈黙の時が流れた。そして、それを破ったのはサイサリーだった。




「ふっ…ふざけるなっ! 魔法の模擬戦で暴力を振るうやつがあるか!?」




 彼の訴えに呼応するように仲間の2人が――、そして周りにいた多くのが学生がベラトリクスに非難の声を浴びせた。


 ところが、当のベラトリクスは涼しい表情でサイサリーを見下ろしている。





「魔法使いなさいよ! 魔法をっ!」


「卑怯者っ!!」


「野蛮っ!!」


「恥を知れ!」





 さまざまな罵声が彼に向かって飛び交う。ベラトリクスは表情を変えずに大きく息を吸い込んでいた。





「うっせええぇぇぇっ!!」





 彼自身が「雷」かと思うような怒号が周囲に響き渡る。先ほどまでの罵声も一瞬にして鳴りを潜めてしまった。




「オレは魔法の()()()()と聞いてきた。てめぇらにとっては『魔法の練習』かもしれねぇが、オレにとっては『実戦の練習』だ」




 ベラトリクスはサイサリーを跨いだままさらに続ける。




「てめぇらはお行儀よく魔法しか使ってこない奴らとしか戦わないつもりなのか?


それなら大人しく、魔法闘技ルールで遊んでやがれ? 仮にも『実戦』と言った以上はどんな手を使われようと文句言うんじゃねぇ?」




 ベラトリクスは、サイサリーに――、というよりここに集まった学生すべてに向けて言っているようだった。さらに彼はこう続ける。




「それによお? 魔法で決着つけろってんなら今からやってやろうか? この状態ならオレのやりたい放題だぜ?」




 周囲を睨みつけていたベラトリクスの眼光が足元のサイサリーへと向く。サイサリーの表情は、蹴られた頬の痛みよりも彼への恐怖で歪んでいた。





「これはベラトリクスくんに分があると思うの? 彼の勝ちで終わったらいいと思うのだけど、どうかしら?」





 この状況に割って入ったのは、白髪で笑顔の美しい女性、ウェズン・アプリコットだった。

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