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第一章 夢と現実を見る少女 七話

 しかし、理亜の向いた先の豪真は、俯きながら、目頭に指を当て、鼻をすすっていた。

 

 「いや、人間、矛盾があってなんぼの生き物だ。実に人間味らしい。いいか千川。現実と夢は切っても切れぬ縁で繋がっている。現実を生きれば必ず夢にぶつかる。だからありのまま生きろ。現実を生きてさえいれば、君は必ず報われる。私が保証する」


 豪真のひたむきな言葉に、理亜は元気よく「はい!」と答えた。


 どうやら理亜も踏ん切りがついたらしい。


 郁美は、豪真に対しての印象が変わり、思わず「へえー」と呆気にとられた様な声を上げる。


 先程まで、非常識な言動ばかりだったものだから、ギャップが半端ではなかったのだろう。


 「よし、プラス三だ」


 「やった!」


 「と、言いたい所だが」


 笑顔で評価する豪真に対し、理亜ははしゃぎ気味だった。


 だが、急に渋い表情になる豪真。


 「えっ、もしかして……減点」


 どん底に叩き落されたかのような、表情になる理亜。


 郁美も固唾を呑む。


 「……合格だ。私は君が気に入った。義足の件。謹んで、(かい)(だく)しようじゃないか」


 豪真が笑みを浮かばせそう言う。


 「やったー!」


 理亜は思わずのけぞるぐらい喜ぶと、なんと、車椅子から落ちて、背中に床をぶつける。


 「ちょっと理亜! 大丈夫かい⁉」


 理亜と豪真が慌てて理亜の元に駆け寄る。


 「ウフフフ」


 しかし、理亜は痛がっているどころか、笑いが止まらない状態だった。


 「ハハ、いい性格をしている」


 豪真は嬉しそうにしていた。


 豪真が理亜を抱きかかえ、郁美が車椅子を元に戻す。


 「ありがとう」


 車椅子に座って理亜は、笑顔を崩さず、感謝の言葉を口にする。


 「では早速取り掛かるか」


 「え! 今日、義足を付けてくれるんですか?」


 「ああ。善は急げ、とも言うだろ。それに君だって、早く自分の足で歩きたいだろ?」


 前向きな豪真の言葉に、理亜は面を食らうような驚き方をする。


 そして、郁美は「娘をよろしくお願いします」と言うと、豪真は「安心してください。必ず成功しますから」と言う。


 そして、豪真は理亜の車椅子のグリップを握り、軽い足取りで、オペ室へ向かう。


 急に緊張してきた理亜。


 しかし、豪真が笑顔で「安心しろ。痛みは無い。麻酔も設備を義足も最先端の代物ばかりだ」と言う。


 理亜はその言葉に安堵し、胸を撫で下ろす。


 オペ室に着くと、三人ぐらいは入れる個室の様な空間だった。


 手術台や医療器具があり、辺りの棚には、義足や義手が陳列されていた。


 「うわー。凄い」


 「プラス五点だ」


 「いやいや、もうテスト終わってんじゃん」


 理亜が感激していると、冗談交じりの言葉で豪真がニヤニヤしながら評価する。


 すると、フレンドリーに突っ込みを入れる理亜。


 二人は打ち解けあったかのように笑う。


 「よし、ちょっと失礼するぞ」


 「うん」


 豪真は一声かけると、理亜を両手でお姫様抱っこすると、手術台の上に乗せる。


 仰向けで寝ていた理亜は不思議と緊張が和らいでいるのを感じていた。


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