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第三章 懐かしい感覚を置き去りにして 一話

 一週間後の日曜日。


 理亜は、いよいよ自分の足で床に足を付けようとした。


 起床し、ベットから起き上がると、運命の日だと言う実感が、強く脳裏をよぎる。


 高まる心臓の鼓動。


 そして、先に左足から床に付けると、次に右足を付けようとした。


 生唾をごくりと飲み込み、緊張しながら右足を床に付ける。


 「あ、久しぶりに床板を踏んでる感覚がある」


 右足にある感覚に、思わず口から零れる感嘆の言葉。


 理亜は目をウルウルさせながらゆっくりと立ち上がる。


 「やった。……やったー!」


 立ち上がり、異常の無い右足に大はしゃぎで喜ぶ理亜。


 その場でピョンピョン跳ね上がっていた。


 「おはよう理亜」


 「お母さん!」


 優しくドアの方から声をかけてくれた郁美に気付いた理亜は、すぐに郁美に駆け寄り、郁美の胸にダイブした。


 涙を流す理亜を、慈しむ様に頭を撫でる郁美。


 そこに明人も駆けつけ、理亜が二足歩行で立っているのを目にすると、居てもたっても居れず、理亜と郁美の元にまで早足で近付き、三人は抱き合った。


 こうして、ようやく理亜の復活が成し遂げられたのだ。


 朝食を食べ終えると、理亜は豪真との約束の場所に向かう。


 自分の足で踏む大地は、理亜に多大なる感動を引き起こしていた。


 歩くだけで、笑みが絶えなかった理亜。


 「ねえお母さん。あの人歩いているだけで笑ってるよ」


 「思い出し笑いとかじゃないの。昨日のゴールデンのドラマに、AV女優が出演したからとか」


 道を歩いていた親子が理亜に不思議な目を向けていた。


 ちなみにその母親の観点は偏見である。


 着いた先は、砂川市立総合体育館だった。


 理亜は、面白い物を見せる、と言った豪真の言葉と体育館に一体何の関係があるのか疑問だったが、取り合えず中に入ってみようとした。


 すると。


 「来たか」


 「あっ、豪真さん!」


 理亜が中に入ろうと階段を上がっていた時に、背後から豪真の声がしてきたので振り向くと、そこには白衣姿の豪真が居た。


 「ねえ豪真さん。もしかして中に入るの?」


 「ああ。君も待ちきれないだろ?」


 「何が?」


 理亜は首を傾げる。


 「体育館に来ると言う事は、目的は一つしかない」


 そう言うと、豪真は手にしていたスポーツバックから、なんと、バスケットボールを取り出し、理亜に見せる。


 「えっ! もしかして!」


 理亜は驚愕し、急に体の芯からとてつもない高揚感が芽生え始める。


 「じゃあ行くぞ」


 「うん!」


 二人は笑顔で体育館の中に入っていく。


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