表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/316

第二十四章 何時しかの約束 三話

 「おーい! 文音―!」


 すると、少しして、砂川高校のバスケ部メンバーたちが、文音に気付き、近付いてくる。


 「ヤッホー。皆」


 「おう。探したぜ……ん? てあれ? ――理亜か⁉」


 文音が景気よく答えると、フレンドリーに文音に話しかけたかと思えば、その女子は、すぐ隣にいる理亜に対し、眉間に皺を寄せながら顔を近づけると、一変して驚愕する。


 「……ねえ。私、今変装してるんだよ。何でこれで私って気付くの?」


 理亜は納得がいかない様な様子で、そう言うと、女子部員は「だって、このご時世に、そんな昭和時代の変装する変人何て、理亜ぐらいだろ」と遠慮なく淡々と言い出すと「ムキ―!」とヒステリック見たいな起こり方をする理亜だった。


 「アハハハハッ! 理亜ちゃんらしいよね」


 思わず吹いてしまう文音に釣られるかの様に、哄笑する女子部員たち。


 「まったく、先生の前で堂々と学校サボるなんて何考えてるのかしら、この子は~」


 「うげえー! ごめんなさい!」


 すると、いつの間にか理亜の背後を取っていた、顧問の女子教員、埼玉京子(さいたまきょうこ)と言う人物が、理亜の首目掛け、腕でホールドすると、たまらず声を上げる理亜。


 その先生は、スレンダーな体形に、形の整った顔立ち。


 まだ二十代後半と言った所。


 「それに理亜。変装するなら、今時ならもっと、メイクと髪に力入れないとだめだぞ」


 「そうね、まあ、変人=理亜、てのが、私たち人間界の常識みたいなものかしらね」


 「ちよっと! 私だって、女の子だよ! それに先生のその言い方!」


 「「アハハハハッ!」」


 女子部員の指摘後、京子はあっけらかんと言った態度で堂々と口にすると、理亜は唾でも飛ばすんじゃ、ないかってくらいツッコむ。


 そして、周囲は暖かい空気の中、大声で文音たちは哄笑する。


 「ねえ、せっかくだし、理亜ちゃん入れてバスケしない?」


 「いいねえそれ。ここには丁度、リングもあるし。やろうか」


 文音の提案に、女子部員たちは賛同し、すぐ近くにあるリングに目を向ける。


 「え! いいの⁉ 私、一応、退部届出したのに?」


 理亜は一驚する。


 「ああ。これの事か?」


 すると、京子が理亜の背後で、いつしか理亜が書いた、退部届を見せつける様に、懐から取り出す。


 「うん。それそれ。て、何で先生が今、持ってるの?」


 「う~ん。それはだな~」


 納得がいかない面持ちで理亜が京子にそう聞くと、京子は、ニンマリとしたねちっこい笑みで、何故か、退部届の紙の上部分を両手でつまみ出す。


 それを、全員が訝しい目で注視していた。


 すると。


 びりりりー。


 「「――あっ!」」


 なんと、京子は何の躊躇もなく、理亜が提出した退部届の紙を、上から下に向け、破りだした。


 理亜たちは、それを見て驚く。


 「いやあ~、お前が高校にいる間、お前の目の前で破り捨てる事が出来ないかって、常日頃、悶々としてたが、これでスッキリしたな」


 「何で破くの⁉」


 頻尿でも終えたかのようにスッキリした面持ちの京子に、慌てだすように問い詰める理亜。


 「あのなあ、理亜。お前が辞める理由は分かってたし、今、義足が付いても、私たちの元に戻らない理由も調べは付いてる」


 「え! ま、まさか⁉」


 うんざりする様な口ぶりの京子のまさかの言葉に、かつてないほどのインパクトで驚愕する理亜。


 「……理亜……お前……」


 京子が神妙な面持ちで、理亜の顔面に向け、顔を、ズズズズ、と近づけていくと、理亜は額から汗を流し、固唾を飲み込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ