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第二十四章 何時しかの約束 二話

 何度もゆっくりとブランコを揺らしながら、昔、文音と一緒に、落ち込んだ時は良く公園に来て、次の目標を語り合ってた時の記憶を掘り起こす。


 励まし合い、奮起し、遊び、我を忘れる。


 そんな常習性の様な習慣があった。


 しかし、今、文音は居ない。


 理亜は、今日と言う今日ほど、忘却で気はしない一日を、その身を持って体験した。


 ただ見ていただけなのに……。


 ただ、ただ、俯きながら暗い顔で消沈する理亜。


 すると……。


 「あれ! 理亜ちゃん⁉」


 なんと、偶然か、はたまた必然か分からないが、ブランコの近くまで歩み寄ってきたのはジャージ姿の文音だった。


 「えっ⁉ あっ! えーと……」


 理亜は一目で見抜かれた事に困惑し、動揺するそぶりを見せると。


 「はっ! うえーん。投資に失敗したジョー。うえーん」


 何かを、思い出すようなリアクションをすると、子どもと老婆を入り混じた、何とも言えない味のある、演技をする。


 まるで、子供が無理して演技した見たいに、おばあちゃんが投資に失敗し、後悔して泣きじゃくっているかのように。


 「え! 理亜ちゃん投資したの⁉」


 「ちょっと! そこは『おばあさん。大丈夫ですか?』て慰める所でしょ!」


 文音は理亜の演技を見ても、何一つ疑わない実直な様相で、理亜の身を案じると、理亜はギャグマンガの様なツッコみを入れる。


 「あはは、ごめんね。私、本気で心配してさ」


 「もうー」


 文音は引きつる様な笑い方で、両手を合わせ、謝罪すると、理亜は頬を膨らませむくれていた。


 「それより、何で理亜ちゃんがここに居るの? 学校は?」


 「えーと、それは、その……」


 首を傾げる文音に対し、バツが悪そうな態度を取る理亜。


 人差し指をつつきながら、どう向き合っていいのか、少し戸惑っている様子。


 そこで、プフッ、と笑い声を漏らす文音。


 「ごめんごめん。一目見て理亜ちゃんだと思うと感情が抑え切れなくって。つい何でもかんでも聞いちゃった」


 文音は笑いながらそう言うと、理亜は「えへへへ」と言って照れだした。


 すると、文音は笑みを浮かばせながら、理亜の隣のブランコに腰を付ける。


 「まあそれは置いておいて、理亜ちゃん、もしかして試合見てた?」


 少し控えめに、文音がそう言うと、少し間を置く理亜。


 「……うん。見てた」


 「そっか、そっか。見てたんだ」


 答えずらそうに言う理亜に対して、文音は快晴の蒼穹を見上げながら遠い星でも見る様に答える。


 「み~た~な~」


 「うわあ! ごめんなさい!」


 すると、文音は一変して、幽霊が人間に憑依されたかのような演技をすると、理亜は溜まらず、恐れおののく。


 「うふふ。冗談だよ。でも良かった。理亜ちゃんに見てもらって」


 「え、何で?」


 晴れ晴れとした表情でそう言う文音に、理亜は首を傾げる。


 「だって、理亜ちゃんに見てもらえてなかったら、さっき以上に点が開いてたかもしれないし。それだけ理亜ちゃんの存在は、私たちになくてはならない、かけがえのない人だから」


 「……文音ちゃん」


切なく語る文音の言葉に、理亜は、瞳がウルウルとし出した。


 「とにかくもう終わったんだし。もう良いよ。それより、約束もしてないのに公園にいるなんて、私たちに約束なんて関係ないんだね」


 「うん! 今日はいい夕焼けになって、明日は今以上に晴れてるね。私たちみたいに」


 「……ええ」


 理亜が元気よく頷くと、少し感傷に浸る様な面持ちになる文音。


 理亜も思わず、感傷に浸ってしまう。

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