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ホラフキさんの罰  作者: マスケッター


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40/80

六 なし崩し 二

 日帰りでこつこつ調査を重ねるのが王道だろう。


「ちょっと時間が残ってますし、無人駅に行ってみませんか?」

「俺もそう思っていたところだ」


 ここまできて、恩田の提案を断る手はない。さっき教わった通り、港の裏へ進むとすぐに見えた。


 コンクリート製のプラットホームには、『勝田』と記載された駅名標があった。ちなみに湯梨水門橋はここから一駅上りの『湯梨』から歩いて十分ほどになる。


 駅名標の隣には時刻表があった。さすがに、それらに落書きする人間はいない。


「ホラフキさん……どこでしょうね?」

「手分けして探そう」

「はい」


 探すといっても、駅名標と時刻表以外はせいぜいプラットホームと道路を仕切る金網があるくらいだ。待合用のベンチすらなかった。


「先輩、見つかりましたか?」

「いや……」


 思いつける箇所全部を、二、三分かそこらですぐに調べ尽くしてしまった。


 岩瀬は腕時計で時刻を確かめた。午後三時四五分。日没までわずかな時間しかない。


「ずっと立ちっぱなしでしたし疲れました。ちょっと休憩しませんか?」


 自分から持ちかけたのに、恩田はエネルギーが長持ちしなかった。


「そうだな。ジュースでも飲もう」


 ちょうど、無人駅のすぐ脇に自販機がある。


「やったー!」

「自分の分は自分で出せよ」


 恩田の調子の良さに、岩瀬はつい警戒した。


「当たり前ですよ、そのくらい。先輩こそあたしにおごって貰いたいんじゃないですか?」

「バカ、そんなはずないだろう」

「冗談ですよー。先輩、疲れてるんじゃありませんか?」


 恩田はくすくす笑いながらプラットホームを降りた。岩瀬も続いた。


 自販機で、恩田はオレンジジュースを買った。岩瀬は財布を出したが、手が滑って小銭を落とした。


「おっと」


 かがんで小銭を拾った直後、不意に閃いた。


 落書きを発見したのは小さな娘だ。大人じゃない。即ち視点が異なる。


「先輩、どうしたんですか?」


 オレンジジュースの缶を持ったまま、恩田は目を丸くした。岩瀬は小銭ごと財布をポケットにしまい、無人駅の出入口で腰を沈めた。すくい上げるように視線を地面からプラットホームへ移す。


「見つけた」

「え?」


 当然ながら、出入口は金網が区切られている。その支柱にホラフキさんがいた。支柱は金属製だから、マジックペンか何かで書いたのだろう。


 洞窟で目にしたのと変わらない、赤い布を丸ごとかぶった姿だ。ご丁寧にも『ホラフキさんだーれだ』と下手くそな字で書き添えてある。岩瀬の親指くらいでしかなく、探しかたを変えない限り見過ごしていただろう。


「わっ、スゴいじゃないですか先輩!」


 ほめたたえつつ、恩田はオレンジジュースのプルタブを開けた。 


「いったい、誰が書いたんだ?」

「やっぱり小さな子なんじゃないんですか?」

「とは決められないな……大人でもやろうと思えばこの高さで書ける」

「でも、わざわざそうする理由がないですよ」


 恩田はオレンジジュースを一口飲んだ。


「恩田、洞窟とこの落書き以外でホラフキさんの絵を見たことあるか?」

「いえ、ないです」

「俺もだ。ネット上の都市伝説だからな。にもかかわらず、全く同じ表現で別々な場所にあるということは……」

「ということは?」

「同一人物があちこちに書いて回っている可能性が高い」

「ただの偶然じゃないんですか? お化けなんて似たり寄ったりなイメージですし」

「だからって名前から色まで同じにはならないだろう」


 岩瀬は、自分のスマホで落書きを撮影した。

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