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初心者女子  作者: nim
モデル女子編
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第五十六話  やってきた源八朗

11月の最初の日曜日、ボクは両腕に抱えたペットボトルのお茶を事務所の応接間に運んでいる


ふふふ・・

源八朗の太っちょな腹をドリブルしてやるには、まず源八朗の隙きを作らなければな!

自慢の綱島園のお茶の大群でプレゼンと偽ってドミノを作り、ボクがうっかり倒してペットボトルが倒れていき、飲みかけのキャップを外した最後のお茶が源八朗の腹に降り注ぐ・・

目の当たりにすれば源八朗と言えど慌てて隙が出来るだろう・・

そこを突いてこのボクが両手でドリブルだ!!

ざまぁみやがれ源八朗!!

やり逃げの代償は払ってもらうぞ!!


大量のお茶のペットボトルのキャップが歩く振動でボクのほっぺたを突いたところで柔らかい大きなものにぶつかり、大量のペットボトルと共に弾き飛ばされたボク

思わずカハッ!!と変な声が漏れてしまう


尻餅をついてボクは少しイラッとしてその柔らかいものにキッと視線を送ってやった


「ホゥホゥホゥ!これはこれは松元さん、今日も働きものだね、んっ?これはうちのお茶かね?」


そう言って散らばったお茶のペットボトルを一つ取るとメガネを上げて目を細め喜んでいる源八朗


くっ・・

源八朗め!!

不意打ちとは大人気ないぞ!!

しかも・・

お茶は拾うのにこのボクには手も差し伸べないだと!?

お・・おのれ・・!!

その太っちょな腹・・顎の肉と共にドリブルしてやる!!


シュッと手をだし華麗なエアドリブルをお披露目してやったところで、栗色ショートの丸顔お姉さんがボクに手を差し伸べて話しだした


「会長が失礼しました、お怪我はありませんか?」


優しい口調のお姉さん、見るからに源八朗の手下のようだ

ボクは苦笑いを向けてやってお姉さんに言ってやる


「ボクは大丈夫です、それよりお茶の方が大事なので一緒に回収して頂けますか?」


そう言ってボクは立ち上がり、散らばったペットボトルのお茶を回収していく

それを顎に手を添えて見ている源八朗が喜びながら話しだす


「ホゥホゥ!松元さんはやはり気立てが良い!私の目に狂いはなかった!ここまで来た価値があるというもの・・」


ユサユサとお腹を揺らし、応接間の前で待っていたマネージャー紗良に促されて部屋に入っていく源八朗

またしてもやり逃げ感が漂い、ギリギリと歯を噛み締めてやるボク

そんなボクに源八朗の手下がボクに言う


「会長があんなにお話になるのは珍しいんですよ、普段は会長が認めた相手でなければお話になりませんから!きっと会長はakiさんをお気に召したのでしょうね!」


優しく微笑む源八朗の手下、ボクをモデルのakiと見破った手下にボクは驚き、残りのペットボトルを拾いながら聞いてみた


「よくボクがakiだってわかりましたね、自己紹介もしてないのに・・源八・・綱島会長様には名字しか名乗ってないですよ?」


最後のペットボトルを拾いボクを見る源八朗の手下、ニコッと笑顔で話しだす


「わかりますよ!akiさんの活躍は各方面から伝わってますし、それにこんなに綺麗な方が一般の方なら逆に驚きですよ!気立ての良さも会長の仰るとおり!akiさんのお気遣いも肌で感じましたし!」


嬉しそうに語る源八朗の手下、お気遣いのワードに違和感を覚えて腕に抱えるペットボトルを見て考えにふけってみる


何を言っているのだ?

お気遣いだと?

このボクが源八朗に気遣いなど・・

そうか!

ボクが源八朗の腹に当たった時に怪我をさせなかった事を言っているのか!

勝手に当たってお前は吹っ飛んだが、会長は無傷だ、あの吹っ飛び方は間違いなく怪我をしているだろうが、うるさいことを言わなかった気遣い・・ということか?

ゆ・・ゆるせん・・

このボクをコケにしやがってぇ!!

ドリブル100倍返しだ!!


思わず手を出し追加の怒りエアドリブルをお披露目したところで、回収したペットボトルが腕からこぼれ落ちる

慌ててドリブルを止めまたもや散らばったペットボトルを回収してると応接間からマネージャー紗良がやってきて一緒に回収を手伝い出すとボクに言った


「aki何してるの?綱島園の会長がお待ちなんですけど?こんなにお茶のペットボトル準備して・・お茶のプレゼンでもするつもり?」


素早くペットボトルを拾う紗良、源八朗の手下にも応接間に行くのを促すとそそくさお茶を応接間へ運んだ

暫くしてドアから顔を出す紗良、ボクを睨んで手招きしている


ボクが何をした?

ボクは源八朗にやり逃げされただけでなく、紗良と源八朗の手下にまで放置プレイを強要されたのだぞ?!

これは・・

お茶の呪い・・

お茶でお茶の王たる源八朗に仕返しを企てたボクへのお茶の神の呪い・・!

盲点だった・・

目には目を・・歯には歯を・・お茶には・・お茶を・・

今日のところは・・引いてやるとするか・・


ボクはふぅと息を吐くと立ち上がり、源八朗の待つ応接間に入っていくのであった


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