第三十三話 おまちかねの相手
みーちゃんと別れたボクのスマホにメールがくる
ボクは駅の柱に隠れながらメールを確認した
(もうすぐ着くよ!新幹線の3番ホームで待っててくれます?確か入場券200円位だったはず!あとでお金は返すんで!よろ)
な・・なんで上から目線で頼まれなきゃならないんだ?
おのれ・・アバズレめ・・!
ボクはそう脳内で思いつつ、券売機で入場券を買うと新幹線のホームへと歩いていく
流石に観光客が多いな・・やはり有名な寺の催し物の年は混みやがるぜ・・
なかなか切れない人混みを尻目にボクがホームにつくと、丁度白いボディに黄色のラインの入った青い屋根が特徴的なカッコいい新幹線が入場してきた
それを見て元男子の血が騒ぎ出してしまうボク、とっさにスマホを出してカシャカシャと撮り鉄ばりに撮影を始めてしまった
新幹線から乗客が降りてくる、ボクは構わず撮影を続けてやる
その瞬間、ボクの無防備な脇腹付近にドゴッとなかなかの衝撃が走って思わずぐえっと変な声が出てしまったボク
そのまま押し倒される体勢でボクはホームに尻もちをついてしまった
ふと脇腹を見るとあの見覚えのあるアバズレがへばりついてボクの胸に顔を埋めスリスリしている、そして顔を上げるとボクに喋りかけてきた
「お姉さま!佐久間結月ただいま到着しました!相変わらず丁度よい大きさのお姉さまのお胸!一体どんな美容方法でこんなに形のいいお胸を作ったのですか?!」
ボクの胸を触りながら尊敬の眼差しを向けてくる結月、だがボクは聞こえないふりをして深いため息をついた
結月はボクの高校の校長の娘・・ボクよりひとつ下の高校1年生らしい、夏のイベントの夜に何故か懐かれてしまって対応がめんどくさい奴・・なのだが、先週の雑誌撮影でモデルとして初めて仕事を一緒にやってから結月の異常なボクへの執着心、半ばストーカー張りな強引さで連絡先を交換したが最後、何かに付けてボクに会いたがる
余りにもしつこいのと校長からのお願いもあって、今日は仕方なく結月に付き合ってやることにしたボク
そんなことを考えていると未だにボクの胸を触っている結月が怒った顔をして話しかけてきた
「もう!結月が聞いてるのになんで無視するんですか?!お姉さまは結月のこと嫌いですか・・?」
プンプンと子供のように頬を膨らませて怒ってる結月
め・・めんどくせぇ・・
やっぱり自分を名前で呼んでるし・・
無視しても聞き返してくるし・・
脳みそいかれてやがるのか?
校長の甘やかしが手に取るようにわかるぜ・・
ひと思いにハッキリと、うん!嫌い!って言ってしまおうか・・
だが泣かれるとそれはそれで面倒だ・・
そう考えたところでボクはみーちゃん親子の事を思い出す
子の面倒を無償の愛情で見守る母、そんなことはつゆ知らず天真爛漫、純粋一筋な子供・・
これは・・正しくその図式が当てはまるのではないか?
ボクは気を取り直してママの気持ちで結月に接して見ることにした
ボクは優しい微笑みを向けてやって結月に話しかけてみる
「ゆず?嫌いなんて言ったら駄目でしょ?ボクはちゃんとホームで待っててあげたでしょ?無視するなんて言われたらボク悲しいよ?」
結月の頭を撫でながら子供に話すように言ってやる
ふん・・貴様などこの程度の扱いで十分なのだ・・!おこちゃまめ!
ボクを甘く見るなよ?
上から目線の対応をしてやって征服欲を満たされニヤッとほくそ笑んでやったボク
そんなボクの対応が功を奏したのか結月はシュンとして大人しくなり話し始める
「お姉さま・・結月悪い子です・・ごめんなさい・・お姉さまのこと大好き過ぎて・・」
その瞬間ボクの脳内で結月の攻略法が閃く
そうか・・ママとおこちゃま作戦・・
アメとムチを自在に操る帝王の思考・・
これなら結月を管理できるな・・
どうせならボク色に染上げてやって従順な下僕にすれば・・
その名案通り、ボクは結月を手玉に取るべく話をする
「ちゃんと謝れたね、偉いねゆず!ボクの事ホントに好きなんだね?それじゃまずはボクの上からどかないとね?これじゃこれから出掛けられないでしょ?」
ニコニコと笑顔を結月に向けてやって、ちゃんと言葉が通じたか様子を見て見るボク
そんなボクの表情をみて結月もニパッと笑顔になるとボクからどいて話だした
「お姉さま!結月どきました!またナデナデしてください!」
とボクに撫でろと頭を出してくる結月、ボクは内心面倒くさかったが手玉に取るべく苦笑いしながら結月の頭をナデナデしてやった
目を瞑り気持ち良さそうな表情をする結月
それを見て可愛いじゃねぇか・・とか思ってしまったボク
そんな一時の血迷いと脳内で葛藤していると結月がボクの撫でる腕を掴み両手でボクの手を握り直すとボクに話してくる
「元気いっぱいになりました!それじゃお姉さま!まずはショッピングでも楽しみましょ!」
コロコロと移り変わりが早い結月、ボクはこのあと駅を出て結月と街へと歩いていった




