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初心者女子  作者: nim
モデル女子編
31/61

第三十一話  校長のありがたいお話

「うむ、よく来てくれたね、緊張してるかな?そんなに硬くなっては私も話しづらいよ、こっちに来て座りなさい」


ずっとニコニコしているダンディな校長、白髪と赤みがかったオールバックが特徴的で威圧感を感じてしまう


フカフカ革張りソファに座れと促してくるから、とりあえずボクはソファに腰掛ける

そんな校長を見てボクは警戒心マックスだ


いつ怒られるんだ・・?怒るにしてはニコニコしすぎだろ・・しかも座れと命令?

さては・・突然顔色を変えてマックスパワーで怒り散らすつもりだな?

ボクが怯えてパンツを見せたところで俺の女になれとか言ってボクを侍らせるつもりか・・?

ここは校長の女にされる前に素直に謝ったほうがいいかも・・


ボクの恋愛小説で培った推理力を脳内でお披露目したところで校長もソファに腰掛けて話しだす

とっさにボクは股を閉じてスカートの上に手を添えた


「呼び付けて申し訳なかった、他の生徒の目もあるからね、本題だが松元さん、モデルの方は・・順調かね?なんでも企業のイメージポスターも制作したと聞くが・・どうなのかね?」


手を組んでズイッと前に顔を出してくる校長、その眼光は真っ直ぐとボクを向いている


きた!やっぱり怒ってる・・のか?

どうなのかね?って・・

顔はニコニコしてるのに目が笑ってないんだよな・・

素直に謝るか・・


ボクが謝ろうと頭を下げようとしたところで隣の紗良が話しだす


「はい、クライアント様のご指名で作成しました、大変喜んでいらしてその後の業績も大幅に改善したと連絡を頂いております」


まるでマネージャー・・というかホントにマネージャー(仮)なのだがスラスラと校長に嘘偽りなく話してしまう紗良

その言葉を聞いた校長もなぜか喜んでいる


「それは凄い!わが校始まって以来の快挙だ!松元さんのお母様から連絡を貰ったときは私も迷ったが・・君達に許可を出して正解だった」


な・ん・だ・と?

連絡を学校にしていただと・・?

すでにモデルをする許可はおりていたと?

ボク以外みんな知ってやがったのか・・!

ボクの緊張は何だったのだ?

おのれ・・!全ては女帝の仕業か・・?

このボクを心底ガタガタに震わせやがって!!

許さん・・許さんぞぉ!!

よし・・女帝にはボクのバイブル恋愛小説読み聞かせの刑に処してやろう・・

そしてこのボクを・・


「崇めさせてやる・・」


と心の声がホントの声になって飛び出たところでボクはニヤッとほくそ笑んでやった

それを見ていた校長が目をまん丸にして笑いながら話しだす


「あっはっはっ!勢いがあってよろしい!松元さんの噂はホントのようだ、美人だが変わり者と聞きてるぞ?真にその通りのようだ!人には出来ない仕事をするというのは精神的なタフさも必要だからな!多少人と違うくらいが丁度いい!」


ボクを褒めているのか、けなしているのか、さっきまで紗良へのし返しを考えてたことなど忘れて、とりあえず小さく喜んでみるボク

それを見て校長が更に話してくる


「それとな、君達二人は本校でも優秀な生徒だ、テストの成績も申し分ない、そこで私から提案があるのだが・・呼び出したのはそれが理由だ」


急に真面目になる校長、ボクはその提案という言葉に少し嫌な予感がした、俗に言う女の勘ってやつなのかもしれない

初体験の女の勘にボクが胸を高鳴らせていると、紗良が校長に話しかけた


「提案とは・・生徒相手にどんなものでしょうか?」


こう言うときはゴリゴリクソ真面目な女帝紗良、キャリアウーマンバリに校長に聞き返す


「1つは君の・・三水さんの処遇だ、学生のうちは特別な仕事でない限り認めないと私は言ったが、モデルのマネージャーも特別な仕事、よって三水さんには当校に在籍する限りマネージャーの仕事をすることを許そう」


ニコッと笑顔の校長、パァッと明るい表情になる紗良、それを聞いたボクは常に女帝が付きまとってくると絶望の波に飲まれそうになった

そしてボクが半分白くなりかけているところで校長がまた口を開いてくる


「そして2つ目だが・・本校の顔として来年度のパンフレットデザインのモデルを頼みたい、もちろんこれは教師と生徒の立場での話ではない、プロモデル起用のチャンスが目の前にある今だからこそのお願いなのだが・・どうかね?」


真面目な顔で真面目な眼差しで真面目な口調でボクにお話ししてくださっている校長先生様


お・・女の勘が・・当たった・・

嫌な予感はこっちの方だったか・・

モデルはもうやると決めたから良いとする


だが!


通ってる学校のパンフレットにボクをモデルで使いたいだと!?

そんなことをしたら・・・

学校でめちゃくちゃ目立つ存在になるではないか!!

ボクは女子だ!女子は慎ましくお淑やかに静かに過ごすのが常なはずだ!

その常識を崩すのか?大人の校長の一声で崩すのか!?

何ということだ!


とすでに世間で目立つ存在になっていることを忘れて女子論を脳内で語ってやったボク、そんなボクを尻目に紗良が校長に勝手に返事をしている


「お話はお受けしました、一度事務所に持ち帰らせていただきまして改めてお返事致します、こちらも前向きに考えたいと思っておりますのでよろしくお願い致します」


な・・何というキャリアウーマンな紗良

とても高校2年生とは思えないほどの言葉遣いと対応力・・

やはり紗良は女帝だ・・間違いなく前世も女帝だ・・


紗良の言葉に感心するボク、その言葉に喜ぶ校長、ニコニコしながら校長が話しだした


「ありがとう、良い返事を待っている、それから松元さん、うちの娘にも色々と教えてやってくれないか?結月という娘なのだが、松元さんには世話になったとか・・」


校長のその言葉にボクの脳内に稲妻が走り本命の女の勘はこれのことだと悟るボク


結月だと!?あのイベントのイカれたアブねぇドン引きセミプロモデルの名前じゃねぇか!?

あいつが校長の娘だと?!

くっ・・世の中狂ってやがる!

真面目なダンディ校長からあんなドン引き娘が産まれるものか!


久しぶりに脳内でディスりの嵐が吹き荒れるボク、勢いそのままにボクは校長に言い返してやった


「まあ!結月さんが校長先生の娘さんだったなんて!ボクも結月さんとはプライベートで一度お話してみたいと思ってまして、これもなにかの縁!楽しみですわ!」


心にもないことを勝手にポンポン発してしまったボク

ボクの秘めたる女子力が自分でも怖い

その後ボクは校長室をあとにして、ざわめく教室へと戻った

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