第ニ十五話 招かざる訪問者
お昼時、突然家のインターホンが鳴る
お母さんに出てと言われ昼食の準備をお母さんに任せて仕方なくボクが対応する
画面を見ると整った黒髪に甘いマスクが特徴的な、ひげヅラのあいつの姿
なんで家に来てるんだよ・・
ここまでくるとは・・もはやストーカーじゃねぇか・・
ボクはとりあえずインターホンに出ないで暫く様子を見てやることにした
少しするとあっちをチラッ・・こっちをチラッ・・そしてヒゲをソワソワと擦っている
くくっ・・不審者め!落ち着かないようだな!ざまぁみやがれ!
ボクを世間に晒した罰だ!とくと味わえアホ若槻め!!
ボクはそんな若槻を見ながら勝ち誇ったようにニヤッと画面にほくそ笑んでやった
それを見ていたのか、お母さんがほくそ笑みながらボクの頬をつねってきた
「千秋ちゃん?何してるの?大事なお客様が待ってるじゃない?早く迎えてあげないと駄目でしょ?」
見た目は変わらないがお母さんの恐いほくそ笑み・・つねりがボクの両頬に範囲が広がってくる
仕方なくボクはつねられたままインターホンに出てやった
「はひ・・」
お母さんのせいで変な声を出してしまったボク、それをインターホン越しに聞かされたアホ若槻が少し焦った表情をしたが気を取り直して話しだす
「お・・恐れ入ります、わたくし若槻直樹と言うものでこの間お母様にお電話を差し上げたものですが」
にゃ・・にゃんひゃと!!おひゃあひゃんにへんわ・・
おにょへ〜!あひょにょわあうきにょひゅせに〜!!
ふぎはにゃにたくあんでやぎゃりゅ!!
脳内でほぼ宇宙語のボクはアホ若槻に文句を言いつつ目くじらを立てたところでお母さんがインターホンに向ってお待ち下さい、と話すとボクの頬から手を離し、ボクに玄関まで行って迎えてこいとほくそ笑んで背中を押す
お母さんのほくそ笑みの圧力に耐えかね、ボクは玄関まで行きドアを開けてやることにした
少しドアを開けて外の様子を伺ってやるボク
するとキョトンとしたアホ若槻と目が合ってしまった
暫くしてアホ若槻が喋りだす
「あ・・千秋さんか・・こんにちは・・今日は話があって伺った・・」
と喋ってる途中でドアを閉めかけたところで後ろからチクチクと痛すぎる視線を感じ無意識にドアを開けてしまった
その瞬間、お母さんがズイッとボクの前に出てくる
「いらっしゃい、お待たせしてすみません、うちの娘ちょっと捻くれてるみたいで、お気になさらずどうぞ」
そう言ってお母さんに案内され簡単に家に上がり込んでいくアホ若槻、玄関に一人残されるボク
腹が立ったので一言申そうとボクもリビングへ歩いていった
するとリビングにつくなりお母さんにソファーへ強引に着席させられたボク、隣にストンとお母さんが座りボクに無言の圧力をかけ、一呼吸おいてから話しだした
「ホントにごめんなさいね?ちゃんと躾けてるんですが想像力が豊かみたいで、千秋も謝って??」
お母さんの言葉の語尾が怒っていると察したボクは言われるがまま言う通りにする
「すんませんでした!これでいいでしょ?」
プイッと横を向くとプチッとした表情のお母さんがほくそ笑みながらボクに言った
「千秋ちゃん?これは紗良さんに話しておくからそのつもりでね?」
それを聞いたとたんにボクの顔から血の気が引いていく
紗良・・女帝はダメ・・
お母さんチクるの?かわいい娘の素行を女帝にチクるの・・?
やめて・・ボクをイジメないでよ・・
紗良はやだよぅ・・
怖いよぅ・・
意気消沈のボクを尻目にアホ若槻が話しだす
「早速ですが、この間お電話差し上げた通り是非わたくしの事務所で千秋さんを使わせて頂きたい、他からアクションがある前にと思い必要な書類はお持ちしました」
そう言って意気消沈するボクの前にパンフレットと読むのが嫌になりそうな書類の束をドサッと置いてくるアホ若槻
お母さんはそれを取って1枚ずつ静かに読み出した
沈黙の時間の中、アホ若槻がボクに話しかけてくる
「千秋さん、こないだのイベントはありがとう、やはり私の見立て通りだったよ、キミには才能がある、その才能私に預けてもらえないか?勿論未成年であるからお母様の許可が必要だが、今日こうして直談判に来た、後はキミのやる気次第だとお母様もお電話でおっしゃっていたから良い返事がもらえることを楽しみにしてるよ」
ニッとボクに笑顔をみせたアホ若槻
やる気次第ってお母さんが?いやいや・・ボクはいま始めてこの話を聞いたんだぞ?
お母さん・・ボクの知らないところで話を勝手に進めてやがったな?
ジト目でお母さんを睨みつけようとしたところでお母さんが喋りだす
「いいわね、この条件受け入れますわ、千秋ちゃんもやる気あるって言ってたものね?いいわよね?千秋ちゃん?」
お母さんの怪しいほくそ笑みにボクは無言で頷いてしまう
ず・・ズルいぞ・・お母さん・・
ボクの知らないところでボクが勝手にやる気になってるなんて!
せめてボクにも選ぶ権利くらい・・
ボクの気持ちをよそにトントン拍子にアホ若槻の事務所と契約してしまうことになったボク
明後日からの初仕事の宣告も受け、流されながらもボクは心に誓った
腹立ったぞ・・!絶対1番のモデルになって全員呼び捨てで呼んでやる!!見てやがれ!!
アホな思考はそのままにボクはモデルの第一歩を踏み出してしまった




