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初心者女子  作者: nim
吸収期女子編
2/61

第二話  準備

目が覚めて、はや二ヶ月・・

約二年、動かなかった身体のリハビリを毎日せっせとこなす毎日


初めはおぼつかない足取りだった僕も、今は歩く程度なら一人で出来るようにまで回復した


ふと、リハビリホールの大きな姿見鏡に目をやる



スラッとした手足に日を浴びていないせいか、透き通るような白い肌

シュッとした眉に吊り目がちでクリっとした瞳が、今のセミロングの髪によく似合っている


・・・


完全に女子だ・・・



目が覚めた日の午後、僕は病院の先生から自分の体に起こった症状を説明された


起きた頭で何を言っているかわからないところが多かったが、すぐに理解出来たことは


僕は、生物学的に女性だった

病名は【性分化疾患】

という事・・


今は落ち着いて思い返せるが、聴いた当時は気が狂いそうだった

だって・・14歳になるまで自分は男だと信じて疑わなかったから・・・

おまけに寝ていて、知らない間に年齢が16歳になっている・・・


これからどうしたらいいのか・・


途方に暮れたが、周りの助けもあり今の状況まで来れる事が出来た


ただ、問題も山積みだ、まずは僕は学校へ行っていない、しかも受験という人生の山場を寝て過ごしてしまった為に、高校に行けていない

ただ有り難いことに、智秋がいつの間にか作った彼女が理解者で、毎日夕方になると勉強を教えに来てくれる

同年代で、三水紗良(さみずさら)と言う彼女はどうやら大学教授の娘のようだ

人間生物学が専門の父親の影響で、僕のこともすんなり受け入れてくれた

「みんなで同じ高校行こうよ!」とか張り切っている


もう一つは、身体の変化

先生の話によると、僕の身体は不幸中の幸いか、生殖機能が女性としてしっかり備わっているそうだ

なので子供も産めると言っていた

それもかなり衝撃だったのだが、一ヶ月前だっただろうか・・・

お腹の下辺りの激痛で気が飛びそうになったことがあった

あまりの激痛に、お母さんに助けを求めたらアッサリと言われたこと・・


「当たり前じゃない?あなた女の子でしょ?それは生理ってやつだね、そんな事で助け呼ばれても毎月これからくるんだから、慣れなさい」


この痛みが毎月・・

有り得ない・・・

初めてでこの痛み、毎月あったら死んじゃうよ、とか叫んでみたけど、その時のお母さんはどこか嬉しそうな顔をしてた・・


だけどそんな事は小さくもないけど、慣れればいいだけだ、もっとこの先乗り越えないと行けない事・・


それは紗良が放った言葉


「やっぱり千秋は美人よね〜、外出たら何人振り向くかな?楽しみ〜!」


とか言ってた事・・

そうか・・

見る立場から、見られる立場になるのか・・・

すでに耐えられそうもない・・


病院内で歩いていても、誰かに見られる視線は感じていた・・

始めは僕が患者だから、関係者が見守ってくれてるんだくらいにしか思わなかったのだが、この間お母さんに連れられてでた病院の庭


院内より人がいて、病院では見かけない人もいた

お母さんは気にしてないようだったが、すれ違うたびに、僕に向けられている男の視線をひしひしと感じたのだ


身を持って経験したことで、あれから一度も庭には出ていない

お母さんからは何故かしつこく散歩を誘われるが、丁重にいつも断っている



「はぁ〜・・・先が思いやられる・・」


深いため息をつき、自分の身に起こったことを少し呪った


「おーい千秋〜!」


リハビリで疲れたから、窓際のベンチに腰掛けたところで、紗良がやってきた


「今日は早いね?どうしたの?智秋はまだ見かけてないよ?」


いつもより早い紗良の登場に、少し身が引き締まる


何故かと言うと高校の夏休み前に、僕の編入が認められて、晴れて七月の半ばから高校生になることが決まったからだ

もちろん、紗良や智秋が通う同じ高校

県内でもなかなかの上位校で、編入試験は地獄だった

元々頭は悪くないから、紗良のマンツーマンの勉強のおかげで、どうやら高校二年生程度の学力がついていたみたい

事情が事情だけに、学校側も対応に苦労したみたいだが、良心的な判断をしてくれて嬉しい限りだ


「今日の目当ては智秋じゃないよ?わかってるくせに・・それより千秋!初登校は7月15日で決まったよ!」


嬉しそうに僕の手を握ってブンブンと振ってくる


「ちょ・・そこまで喜ばなくてもいいよ

そうか〜僕が高校生か〜」


しみじみと天を仰ぎながら神に感謝をする


「あっ!僕はダメだって言ったじゃん?千秋は女の子のでしょ?いい加減直さないと!」


そう言われて無理やり現実に戻される


「そうだっけ?いいじゃん僕でも・・それともボクの方がいい?ボクっ娘でも目指すかな?」


面倒臭くて紗良の注意を適当に流してやる


身体が変わったんだから、これくらい許してよ・・


「まぁいいわ!千秋!今日から初登校の日までみっちり女の作法を教えてあげる!覚悟しなさいね!」


女に作法なんかあるの?と思ったのもつかの間、ボクは紗良に引っ張られるように病室へ連れて行かれた





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