第十五話 夏休みと約束
ザワザワと教室が騒がしい、それもそのはず・・・
「明日からお休みだ〜!いっぱいマンガみて〜♪動画もみて〜♫昼寝もして〜♬たまに買い物して〜♫」
友達女子に囲まれ上機嫌でニヤッと笑顔を見せるボク
そんなボクをみて、紗良が呆れてボクの肩を叩く
「千秋・・完全にニートな生活だよね・・それに買い物って・・あんたおばさんに悪いと思わないの?いっつもお金出してもらって?少しは身体使って働きなさいよ!」
ちっ!また女帝の小言か・・ていうか小姑だな、いちいちチクチクと・・
ていうか・・身体を使って稼げですって!?
ボクに何をさせたいの?
身体を使う仕事・・・
あ・・ダメだよ・・そんなお仕事・・
間違えが起こるかもしれないし・・
ボク高校生だよ?
約束してる男子がいるんだよ?
そんなの・・いや・・!
ヤバい仕事を妄想して顔面蒼白なボクに友達女子がドン引きしてると紗良がボクの机にチラシを置いた
「なに想像してるの?ホントに千秋はアホなんだから・・私が言ってるのはこういう仕事!アルバイトだよ!もういいわ!そのうち絶対やらすから!」
そう言ってチラシをしまう紗良だがボクは聞き逃さない、聞き捨てならないアホのワード、フツフツと男のプライドが許すなと呪文のようにボクの脳内で騒いでいる
一言申してやるとギロッと紗良を見たところで、紗良からリキのワードが出てきた
「それと・・夏祭り千秋ももちろんリキ君誘って行くんだよね?リキ君騒いでたよ?千秋さんと絶対行きたいって?」
リキのワードにボクの男のプライドは急激にしぼんでいき、ボク女子が早くリキを誘いにいけ!とボクの脳内で指令を出してきた
「ボク行くよ!いや、行くね!リキ君どこ?ボク置いて帰っちゃってたりして?」
キョロキョロ見渡すがリキの姿がない、急に心細くなって無意識に涙目になってるボク
ボク捨てられた・・やっぱり元男子のボクなんて魅力ないよね・・?
ボクなんかに誘われたくないよね・・?
ポロポロと友達女子と紗良の前で勝手に泣き始めてしまうボク
焦った顔の友達女子、引きつった顔をしている紗良を泣き顔で見たところでボクの頭をポンッと触る感触に気づいた
「リキ君・・ちょっと勝手に千秋の前からいなくならないでくれる?飼い主なら首輪ちゃんとつけといてよね?」
紗良の言葉にボクは後ろを振り向くとポカンとした顔をしたリキがいた
ボクの頭にのせたリキの手から安心する温もりがボクに伝わってくる
それと同時にリキを少し困らせてやろうと脳内のボク女子が命令してきた
「リキ君?ボクのこと・・ひくっ・・嫌い?あの時の言葉は・・ひくっ・・嘘だったの・・?ボクはずっとリキ君の事待ってたのに・・ボクの事・・ひくっ・・一人にするんだ・・?」
それを聞いたリキは慌てた顔でボクに弁解し始める
「千秋さんの事嫌いなわけないでしょ!ちょっと智秋と夏休みの事で相談してて・・別に一人にしたわけじゃない」
別にだと?別にじゃなかったらボクを一人にしてもいいというのか?この浮気者め!
完全にボク女子に脳内を支配され無意識にリキをもっといじめたくなってきたボク
「別にって?別じゃなかったらボクは一人になって他の男子と一緒にいてもいいってことかな?リキ君にとってボクはその程度の存在?」
よし!言ってやったわ!泣けっ!女子の前で泣いてしまえリキ!
そんないじめ女子に変貌したボクだったがリキが本当にボクのことをその程度しか思ってなかったらどうしよう、とか考え出してしまい、ブラックボク女子なるものが脳内を支配し始める
ボク遊ばれてるのかな・・?
リキにはボクより気になる人がいたりして・・
そんなのやだよぅ・・
折角面と向かって好きだって言ってもらってるのに・・
ボクがいけないの・・?
ボクがリキに約束したから嫌いになった・・?
ブラックボク女子の囁きがボクの頬に一筋の涙を流させてきた
「あっ!リキ千秋のことまた泣ーかした!ちゃんと近くにいてあげないから!恋愛迷子になると千秋泣いちゃうから!」
紗良が騒いでリキも慌てる
「あー!!違う!ちがうんだ!千秋さん!オレは千秋さん一筋だから!一人にしたわけじゃなくて!千秋さん!夏祭りオレと一緒に行ってくれるよな?」
突然のリキからのお誘いに、ボクの目はもうリキしか映らなくなってしまう
ボクは無意識に猫のように飛び跳ねてリキの胸に飛び込んでしまった
「にゃ〜!リキ君ありがと!ボクリキ君と一緒にお祭り行くんだね!嬉しいにゃ〜!」
スリスリとリキの胸に頬ずりをしてしまうボク
リキの前ではボクの持ち前の男のプライドも骨抜きに・・
にゃんにゃんと完全体女子のようにリキの前では振る舞ってしまう
それを見ていた紗良はお腹いっぱいな表情でボクに言った
「見てるこっちが恥ずかしいわ!カップルのじゃれ合いは外でやれ!外で!」
とボクに向ってシッシッとやる紗良
そんな紗良にボクは真顔になって言ってやった
「えっ?カップルじゃないよ?リキ君は友達だもん、ね?リキ君?」
その言葉にリキ君はどうしていいかわからない顔
友達と紗良からは「はぁ〜??」とか言われたけどボクはスルーしてリキの胸の温もりに身を任せた




