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初心者女子  作者: nim
吸収期女子編
14/61

第十四話  あの男の紙と美容室

夏休みまであと1週間、休み前の最後の日曜にボクはある事を思いだしベッドに寝転びながら眺めている


ファッションカメラマン、若槻直樹(わかつきなおき)

専属スタイリスト原アンナ(はらあんな)なに・・?これ・・?


ショッピングモールでボクを助けてくれた男が最後に手渡してきた紙

あまり見ないで机の引き出しにほん投げてやったから、まさか名刺とは思わずビックリだ


「こんなん渡してきて・・ボクにどうしろと?」


ボクはヒラヒラと名刺を扇ぎ、どうするか考える

扇いだ勢いで名刺がすっぽ抜けヒラヒラと舞って胸の間に落ちてきた


胸の間に落ちるとは・・この若槻って男もスケベなのか?

勝手な偏見で助けてくれた男をディスっていると、スタイリストの名前の横に小さく店の名前らしきものを発見する


なんだ?ビューティーヘアAKAI-RINGO(あかいりんご)


ボクは気になってスマホで検索してみる

するとボクの家からほど近い場所にその店があることがわかった


近いじゃん・・しかもちゃんと店あるし・・騙してるわけじゃなさそうかな?


そう思って部屋の時計を見るとまだ13時


智秋と紗良はデートに行って今日はいない

女帝を彼女に持つと大変だなとか思ったが今はそんなことより名刺に書いてある美容室の方が気になってしまうボク


ずっと部屋にいるとまた紗良にどやされるし、対応が面倒くさい・・


お腹に力を入れて起き上がるボク

スッとベッドから降りると寝間着を脱ぎ去り、こないだ買った中のお気に入りの1つ

ダメージがワンポイントのカッコいいショートパンツと肩口がパックリ開いて涼し気な白いシャツを身にまとい、ツヤツヤストレートを整えるとボクはサンダルを履いてスマホを見ながらその美容室へと出向いた


トコトコとスマホの誘導に従って道を歩いていくボク

なんか歩きづらい・・間違えて底の厚い方のサンダルを履いてきてしまったようだ

しかしわざわざ戻って履き替えるのも暑くて面倒なのでこのまま歩くことにしたボク


途中何人かの男子&男にガン見されるが今のボクにはどうでもいいこと、そのままスマホを見てスルーしてやる


暫くしてスマホを見ていたとき、ふとお母さんと行った美容室の事を思い出す


なんかお母さんとこの道歩いたような・・

あの時は男のチラ見で確かこの辺で愛想を振りまいてやった気がするな

そんな事を思い返しながら更にスマホに案内されて進むと、角を曲がって少し行ったところでスマホの案内が終わった

スッと目線を前に向けると、なんだか見覚えのあるシャレオツな店構え


あれ?ここボクが一回来たとこじゃん?


あの時は女子オーラムンムンだなとか思ったけど・・

やっぱり女子の香りが漂う女子の聖域だな!だが!もうボクにはそのオーラに耐えうるだけの女子力があるのだ!なめるなよ?!


そう自分を鼓舞してソロリソロリと窓から店の中を覗いてやることにする


なんか・・高そうな店だな・・連れられて普通にカットしてもらってたけどボクなんか一人では到底入れない雰囲気だな・・


ジッと店内を盗み見してキレイで洗礼されたこの店で髪を切ってもらえた自分がなんだかとてつもなくラッキーで背伸びさせて貰えたのかと自覚するボク

変質者と間違われないうちに店を立ち去ろうとしたところで、聞き覚えのある声がボクの耳に届く


「あっ!もしかして千秋さん?どうしたのこんなところで?お店誰かいる?」


ドキッとしながら振り向くと、ボクの髪をツヤツヤストレートにしてくれた女神様のお姉さんがキョトンとした顔でボクを見ていた

ボクの名前覚えてるのか?とか思ったが、この状況をどう説明しようかと、とっさに男にもらった名刺を女神のお姉さんに見せてしまう


「あっ・・やっぱり千秋さんとこ行ったんだ・・だよね〜こんな子滅多にいないもんね〜」


一人で喋って一人で納得する女神のお姉さん、おい?一人で納得してねぇでボクにも説明しろや?

と脳内で男のプライドが垣間見えたが、グッと堪えて女神のお姉さんに質問してみる


「あの、お姉さんのお店に原アンナさんて方はいらっしゃいますか?その名刺に書いてあって・・」


ボクの言葉に女神のお姉さんはニコッと微笑み、「ここじゃなんだから中で話そ?」とボクを店内へと案内してくれた


「今日は午後用事があってお店お休みにしてるの、お客さんもいないから安心していいよ」

そう言って女神のお姉さんは店の奥にある応接室にボクを案内しふかふかのソファーに腰掛けさせ、隣にニコニコした女神のお姉さんが座った


「それじゃまずは・・原アンナは私だよ、そこに書いてあるとおり専属でスタイリストしてるんだ、今日お店閉めてるのも大事な仕事が外であるからなんだ、近場の仕事で少し時間空いたからたまたま今日は戻ってきただけなんだけどね、まさか千秋さんがいるなんて思わなかったからビックリしちゃった!」


何ということだ・・

専属スタイリストをもこなす女神様・・

いや・・アンナさん、こんな凄い人にボクは髪をカットしてもらってたのか・・

知らずに寝てたボクを殴ってやりたい・・


そんな事を思っているとアンナさんが付け加えて話しだす


「それと・・この若槻君に千秋さんのこと教えたの私なんだ、勝手にごめんね?こんなに早く千秋さんに接触してくるとは思わなかったよ、よっぽど千秋さんのこと気に入ったのかもね」


なんだと!?それはプライバシー侵害というやつでは?と思ったがアンナさんの謝罪と女神スマイルをみて許してやる事にする


そんな女神信者なボクをみて、アンナさんはスマホを出すとある写真をボクにスッと見せた


画面には振り向きざまにサラサラストレートをなびかせ妖艶な表情を切なく見せている女子が写っていた


ん?ボクじゃん?あっ!あの時お願いされて最後にアンナさんが撮ったやつかも!


自分が写る写真なのに何故か引き込まれるボク

こんな可愛い娘がこんな田舎にいるのとか奇跡じゃね?とか思ったがそれがボクであることを再認識すると無意識にニヤッと怪しく微笑んでしまった


「ごめんね!千秋さんの写真若槻君に見せたら目の色変えちゃって・・また千秋さんのとこ行くと思うから迷惑じゃなければ話聞いてあげて?」


アンナさんがあの男の知り合いだったとは・・ボクの髪をツヤツヤストレートにしてくれたアンナさんの頼みとなると無下に断るわけにもいかないな・・


なんとなく仕組まれているような気はしたが、アンナさんの表情を見る限り変なことではなさそうだ


またあの男がくる・・

ほぼほぼストーカーじゃん、とか思ったがグッと心の中に押し込め、カメラマンのあの男がボクに何を話したいのかグルグルと出されたオレンジジュースを飲みながら店を出るまで考察してやった

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