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短編とかその他

そして少女は孤独でなくなる

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/02/09



 一人ぼっちな私はある日、流れ星に願い事をした。


 友達がほしいと。


 私は、性格に難があって、友達を作るのがとてもへただから。


 流れ星は、願いを叶えてくれた。


 でも叶えられた願いは、私に一番欲しい物をくれたりはしなかった。


 その代わりに、与えられたのは力だった。


 どうやら私は、別の世界を覗く力を手に入れたらしい。

 持っている手鏡に、私そっくりの人間の姿が浮かび上がった。

 その世界の私は、高慢ちきで高飛車だ。

 私とそっくりな性格をしている。


 でも、私と違って多くの友達に囲まれていた。

 一体、私と何が違うんだろう。







 その世界の私は、この世界の私とは違って、とある知識があったようだ。


 それは前世の知識。


 その知識を活かした「並行世界の私」は、ただの悪女から人に許される悪女になった。


 正直に言っていい部分と良くない部分を見極め、我儘を言っていい場面とそうでない場面を切り替える。


 公私混同は適度にとどめ、真面目過ぎず不真面目過ぎずに生きていた。


 けれど、それは綱渡りのような行為。


 この世界の私が同じことを出来るとは思えなかった。


 私は、やっていい事と悪い事すらも、うまく区別が付けられないのだから。


 参考にならない。


 そう思ったらまた別の世界の私の姿が見えるようになった。






 その世界の私は、この世界の私とは違って、未来の知識があったようだ。


 だから、自分が悪女になって、友達をなくし、一人ぼっちになる事が分かっていた。


 未来の知識を手にした「並行世界の私」は、そうならないために、人付き合いを頑張った。


 結果、様々な人脈ができて視野が広がり、考え方が変わっていった。


 どんな状況でも切り抜けられる対応力を身に着けていった。


 困った時に、自分でなんとかできるようになったのだ。


 しかし、それは私には難しい。


 同じことをやろうとしても、勇気が湧いてこなかったからだ。


「並行世界の私」の未来と、私の未来は別物。


 そう心の奥底で思ってしまっているからかもしれない。


 参考にならない。


 そう思っていたら、別の世界の光景が見えた。









 その世界での私は、繰り返しの能力を得ていた。


 納得が行くまで、何度も同じ時間を繰り返す事ができる。


 だからどんなに失敗しても平気だったようだ。


 理想の未来を求めて、気が遠くなるような時間を繰り返していた。


 どこでどんな事が起こるのか把握できるようになっていたが、「並行世界の私」はいつも演技をしていた。


 私が羨むような称賛をあびても、心からの笑顔を浮かべる事はなかった。


 私には無理だ。


 きっと最初は浮かれるだろうが、やがて心が死んでしまう。


 想像しただけで、憂鬱な気分になった。


 こんなものは、いくら見てもしょうがなかった。


 そう、結局私は、この世界で頑張るしかないのだから。


 この世界にある環境で、この世界にあるもので。


 





 私はせっかく得たその力を、もう使わない事に決めた。


 ないものねだりをしているうちに、この世界の人間として生きられなくなりそうだったから。


 だって知ってしまった分だけ、今の私はみじめな気持ちになっている。


 私が、彼女達のようになれるとは思えなかったし、彼女達がもっているような力を得る事ができるとは思えなかった。


 どうせ駄目なのだ。


 無理なら、何かに抗う事なく、永遠に一人のままでいい。


 そう思った。


 けれど数日後、あと一回だけと私は気まぐれをおこしていた。







 その世界の私は、他の世界の私達とは違った。


 成功者などではなかった。


 始まりこそ充実していたが、その幸福の気配はだんだんと遠ざかっていった。


 友達に恵まれて、たくさんの幸せをあじわっていた「並行世界の私」。


 そんな私は、やがて魅力的な男性と出会う。


 しかし、その男性は貧乏人と蔑まれている人物だった。


 だから、今まで味方だった人達が敵となり、その人達が親切心で二人を引き離そうとしてきた。


「並行世界の私」とその男性は、それらにあらがった。


 けれど、事態はもつれにもつれ。二人は引き離され、彼等は別々の場所で息をひきとった。


 どこかの狭くて暗い場所に閉じ込められた「並行世界の私」は嘆いていた。


 彼女がそこにいることは、犯人以外誰も知らない。


 だから、誰も助けには来ない。


 最後を知ってはもらえない。


 遺体になっても、見つけてはもらえないかもしれなかった。


 彼女は襲い来る孤独感に涙して嘆いていた。


 その姿は、この世界の私と少しだけ重なるものだった。


 誰にも届かない嘆きが耳朶を打つ、報われない叫びが魂を震わせる。


『最後には憎しみあってしまったけれど、もう一度友達に会いたい、愛した人達に会いたい』


「並行世界の私」はそんな事になっても、友人達を恨んではいなかった。


 そうして、誰も知る事のない、まったく意味のない言葉が途切れていった。






 全てを見届けた私は今度こそ、その「並行世界をのぞく力」を手放す事を決意した。


 最後の世界の私の嘆きは、意味のないものだった。


 けれど、それはその世界の中の話。


 私はもう、知ってしまっている。


 だから、この世界なら意味のない言葉などではなくなるのだ。


 私が活かすことができれば。


 私は自分の部屋を出て歩き出した。


 自分ではない誰かとつながりを持つために。





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