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妖奇譚~社畜やめて怪異と過ごす日々~ ※年内毎日更新  作者: Tomato.nit
第四章 巡り往くもの

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件(くだん) 1

深夜、綾戸探偵事務所。雨上がりの静かな夜。鈴はカップ麺を啜りながら、流しっぱなしのニュース番組に目を向けていた。画面には、最近話題の暴露系Vtuber「くだんちゃん」の特集が流れている。


モニターの中で微笑むのは、豊満な体つきの牛娘のアバター。最近のVtuberのトラッキング技術は進歩が速い。画面を縦横無尽に動き回るその姿はまるでそこにいるように感じる。妙に落ち着いた声色で語るその姿は、どこか人間離れした雰囲気を纏っていた。最新動画のタイトルには、鮮やかな文字で《明日、世界のネットが止まる》と書かれている。


「……ネットが止まる?」鈴がぼそりと呟く。「恐怖の大王の再来ですね~」


「どうせメンテナンス情報をそれっぽく言ってるだけだろ。もしくは回線業者の中の人とかな」綾戸が肩をすくめる。


朔夜は新聞を畳み、面白そうに笑った。


「ふむ。未来を語る牛女か。まさに伝承の件そのもの。趣深い解釈よな」


その翌朝、全国規模の通信障害が発生した。ニュースでは「サーバーの異常」「未確認アクセスの増加」などと報じられている。件ちゃんのチャンネル登録者数は、あっという間に百万人を突破した。


「……当たっちゃいましたね」鈴が呟く。


「偶然だろ。……多分な」綾戸は頭を掻いた。


数日後、事務所に一通のメールが届いた。


件名には「未来相談(至急)」とある。


「スパムはどうしてなくならないんでしょうか」鈴が苦笑する。


綾戸が画面を覗き込む。


「送信元、“kudan_channel.jp”だぞ。え、本物?」


「綾戸様、これはそれっぽく見せるためにわざわざ名前をこうやって設定してるんです。ほら、ここをクリックすれば。あれ?変わらない??」


その直後、ドアがノックされた。


二人が顔を見合わせる。


「ど、どうぞ」


カラン。


普段よりも控えめなベルの音が鳴り、扉が開く。


木製の扉の向こうにはキャップを深く被った若い女性が立っていた。


陶器のような白い肌がパーカーを押し広げ、少しの動作に合わせて大きく揺れる。


時に牛乳と揶揄されるであろうそれは、圧倒的な存在感を放っている。


目深くかぶられたキャスケットからは、つややかな髪が伸びる。


普段から見目麗しい女性?陣に囲まれている綾戸であるが、目の前の後継には思わず生唾を飲み込むしかなかった。


「あ、あの、メール送らせていただいたのですが・・・」


困り果てた様子の女子はおずおずと言葉を紡ぐ。


「メールってもしかして」


鈴がメールを開いたままのPCを指さす。


コクリ。女性はキャスケットを外し、深々とお辞儀をする。


隠されていた額には短い角が左右に一本ずつ。


その姿は昨日画面越しに見ていた例のVtuberそのままであった。


「初めまして。Vtuberのくだんです」


鈴が目を丸くする。「……VtuberってヴァーチャルのVですよね。でも目の前に居る。どういうこと」


件は少し困ったように笑った。「本来はそうだったのです。でも、配信しすぎて……スマホの中のアバターと一体化しちゃったの」 「は?」 「正確に言うと、スマホと繋がりすぎちゃって。配信のたびに電波に魂を乗せてたら、ある日、戻れなくなっちゃった」


朔夜は楽しげに頷く。


「現代の情報憑依現象じゃな。まこと興味深い」


「いや、まったく理屈がわからん」



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