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妖奇譚~社畜やめて怪異と過ごす日々~ ※年内毎日更新  作者: Tomato.nit
第四章 巡り往くもの

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メリーさん 2

――メリーさんからの電話・第二章――


それから三十分ほど経ったころ。雨脚は弱まったが、事務所の空気は妙に張りつめていた。鈴は机の上にスマホを置き、じっと固定電話を見つめている。


「……鳴らないですね」


「鳴らない方がいいんだよ」綾戸が苦々しげに言いながら、机の上のコーヒーを飲み干した。「鳴ったら鳴ったで、またロクなことにならねえ」


「そう言いながら、受話器の前で構えてるのはどこの誰です?」鈴が突っ込む。


「いや、一応な。準備だ」


「どちらかというと、構えてるのは朔夜さんですよ」鈴が目線を送る。


朔夜は机の上に紙札を並べ、何やら呪符を書き連ねていた。「電話霊との交信術。気を逆探知して、通話相手の位置を割り出す」


「そんな便利なことできるんですか?」


「知らんよ。我もこんな珍妙な術は試したことがない」


「信用できねぇな」綾戸の声が静かに響く。


「ふむ、ではお主の大好きな科学の力で探ってみればよかろう」朔夜がにやりと笑う。


「……わかりました。こちらは通信ログから座標を割り出します」鈴がノートパソコンを開き、キーボードを叩く。


「現代人はWi-Fiに縛られてるんだ。もうほとんど呪いだよ」綾戸がぼそりと呟く。


そんな中、また電話のベルが鳴った。三人同時に固まる。


――プルルルルル。


鈴がそっと受話器を取り上げる。「……廣守探偵事務所です」


『……わたし、メリーさん。いま、橋の上にいるの』


「橋?」鈴が小声で繰り返す。「……この辺に橋ってありました?」


「裏の川沿いだ」綾戸が即答する。「事務所から徒歩五分圏内」


「あれ、コンビニから離れてません?」鈴の声に戸惑いが混じる。


朔夜が目を閉じ、札を一枚宙に放る。「探知開始――」


札がふわりと光り、部屋の空気がひんやりと変わる。鈴のPCの画面も同時に点滅し、GPSマップ上に小さな赤点が浮かび上がった。


「……本当に反応した」


「これ、どっちが成功してるかわからんが、まあいい」綾戸が腕を組む。「で、位置は?」


鈴が画面を指差した。「川沿いの交差点。事務所までのルートは直線です」


『もうすぐ、そっちに行くね』


電話の声が途切れ、通話が切れた。


「……本当に、近いな」綾戸が窓の外を見やる。雨に煙る通りは静まり返っている。


「行きますか?」鈴が問う。


「当然だ」綾戸がコートを手に取る。「怪異だろうが営業だろうが、客は客だ」


「お主もよく言う」朔夜が笑い、傘ではなく、月光を手に取る。「さて、メリーさんとやら。どんな姿を見せてくれるかの」


「わらわも行く!」こんが目をこすりながら飛び起きた。「夜の散歩じゃ!」


「留守番!」三人の声が重なった。


こうして、廣守探偵事務所の三人は、夜の雨の中へと足を踏み出した。



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