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20 帝国領へ

 シークスク村を後にした雄志は、北東にあるミネア峡谷を目指して街道を歩いていた。空は青く澄んで、海から吹いてくる風が心地良い。




 《現在の雄志のステータス》

 名前 ユウシ オオヤマ

 レベル21

 年齢 17歳

 HP 110/110

 MP 70/70

 攻撃 105(会心判定有り)

 防御 95

 速さ 65

 魔力 97 (風 火 雷 補助)

 状態 通常

 職業 冒険者 Cランク

 モード E

 あと 976



 【覚えた魔法】

 風系 カッター MP4

    竜巻   MP8

 火系 火球   MP4

    火炎流  MP6

 雷系 稲妻   MP4

 補助 ライト  MP2

    マーク  MP3

    トーハ  MP5

    隠形   MP4

    麻痺   MP4


 所持金

 金貨96枚。銀貨10枚。銅貨20枚。鉄貨12枚。

 (内、シークスク村での報奨金 金貨50枚)




 時折、前方からやって来る隊商とすれ違った。隊商は南へ向かえばシークスク村を経由して、そのまま南下すれば首都マールダール。西へ向かえば砂漠のオアシス、ラーネ教の巡礼地アロナー村へと続いている。


 南へ下らず西へ向かえば、北ガルダーシアン山脈の北を迂回し、真っ直ぐ行けば岩石地帯。南の森林地帯へ向かえば、雄志が冒険者になった、始まりの町ファースへと続いている。


 ミネア峡谷は、パーサロ王国とホランガ帝国の国境になっていて、休戦中とは言え緩衝地帯の両側にある門には、常時お互いに千名の兵士が詰めている。

 隊商も旅人も行き来は自由に出来るのだが、入国審査は厳重に行われていた。


 (とは言え、先日のシークスク村襲撃の、盗賊団の後ろに帝国が控えていたように、少人数でお互いの国へ侵入している密偵は多くいるに違いなかった)


 又、前方から隊商が現れた。荷駄車の横で護衛している冒険者と会釈をかわした。隊商の最後尾には赤い帽子をかぶったラーネ教の巡礼者が続いていた。ラーネ教の巡礼地のアロナー村の教会を目指しているのであろう。

 隊商に金を払い、同行することで冒険者の庇護を受けているのだ。よほどの金持ちでもない限り、巡礼者や旅人はこうした手段でバンガニア大陸を移動している。




 歩きながら雄志は考えた。

 ホランガ帝国の破壊工作者と思われるフィリオと、その部下の二人と対決して感じたことだが、あの時、剣でも勝てると思ったが、無難に勝とうと思って魔法を使った。

 結果は腕利きと思われた二人に、何もさせずに瞬殺することができた。つまり魔法の力は圧倒的で強力だったと言うことである。


 そこで考えさせられた。今まで遭遇したことは無いが、魔法を使う相手と対決する時は、どのようにすれば良いのか。


 今、考えられる方法は三つ。魔法詠唱前に斬り付けるか、魔法をかわすか、こちらも魔法を撃って相殺させるくらいしか思い付かない。

 闘王ロイが持つ伝説の武具に匹敵する装備を探すか(そんなものが簡単に見つかるとは思えないが)、それに代わる物が無いだろうか。

 これは緊急の課題として、近い内に何とかしたいと思う雄志であった。




 街道を進んで行くと、街道の両側の山が切り立ってきた。ミネア峡谷はもうそこである。

 正面に巨大な石積みのダムのような壁が見えて来た。ミネア峡谷のパーサロ王国側の城壁である。城壁は峡谷の両側に続く切り立った山まで続いていて、門を通らない限り、誰も通過することはできなくなっている。


 門の王国側には兵士の駐屯場の他に、出国審査を受けるまで隊商や旅人が泊まる為の宿屋が軒を並べている。そういう客を相手の遊興施設や日常の品を扱っている店も多く出ていて、ちょっとした村ができていた。


 パーサロ王国側の国境の村は、人口は兵士が千人。住民五百人。隊商・旅人が常時五百人ほどの割合である。

 ここには冒険者はほとんどいない。駐屯している兵士は戦争でも勃発しない限り暇なので、ここでは冒険者の代わりの仕事をしているようだ。




 雄志は最初に宿を取っておいた。出国審査には一日程度掛かるので、早目に宿を取っておいた方が良いと、シークスク村でアドバイスされていた。

 中級宿は銀貨六枚と、少し高めであった。


 次に出国申請に向かった。審査を受ける建物は門の扉の右側にあった。扉を出た場所には入国審査用の建物があるそうだ。

 パーサロ王国側もホランガ帝国側も、混乱を避ける為に、申し合わせによって一日の出入り人数を決めているそうだ。冒険者は優遇されていて、優先的に一日程度の審査で済むようになっている。


 審査所は冒険者、商人、一般と分かれていた。商人と一般の列はかなり長い列になっている。冒険者は信頼度が高く、世界バンガニア中で地位も認められ需要も多いので、通常は審査は速く済むのだが、隊商警護の人数が多いので並びは多い。


 大人数が待ち時間に手持無沙汰で話し合っているので、審査所の中はザワザワと騒がしい。雄志は列には並ばず、案内所に向かった。

 カウンターの向こうにはベテランらしき四十代の女性が座っていた。国の仕事を行っているので、高圧的な雰囲気を出している。役人はどこもこんなものである。


 「何だ」という不機嫌そうな顔で若い雄志を見て、次に冒険者プレートに目を移し、「えっ」という顔になってプレートを二度見した。

 スイッチが切り替わったような変貌の仕方で、満面に笑みを浮かべて立ち上がった。


 「し・・・Cランク冒険者様でしたか。失礼しました。こちらへどうぞ」


 時には人々の平和を守る切り札にもなり、都市や町の実力者とも対等に話せる地位の、Cランク冒険者の威光は凄まじい。奥の応接室に通された。

 お茶が出て、次に出国審査の書類を持った若い美人の女性が現れた。


 「審査員のウーラと申します。Cランク冒険者様にはお手を煩わせて申し訳ありませんが、簡単な審査となっておりますので、少しだけ時間を頂きたく、よろしくお願い致します」


 ウーラは丁寧に言って頭を下げた。


 (・・・Cランクって、こんな凄いの?)


 ちょっと自分でも引いてしまった。

 ウーラの言う通り、審査は本当に形だけのものだった。

 すぐに審査が終わりウーラは尋ねて来た。


 「ご希望でしたら、今すぐにでも出国可能ですが、どうされますか」


 (えっ)まさかそこまで特権があると思っていなかったので、宿を取って料金も前払いしていた。シ-クスク村の組合長も、そこまで便宜を計ってくれるとは知らなかったようである。


 (まあ、めったにCランクはいないから分からなかったんだろうな)


 「いや、明日で結構です」


 雄志は断って席を立った。

 応接室を出ると、辺りにいた職員全員の一斉の挨拶を受けて、審査所を後にした。


 (やめて欲しいわ・・・目立ってしょうがない。次からは普通に接してくれって注意しておこう)




 ここには冒険者組合も無く、特にすることも無いので、情報収集を兼ねて初めて《酒場》に行くことにした。冒険者プレートをシャツの内側に入れて酒場へ向かった。


 プレートの鎖の部分は見えているし、チェーンメイルを着て刀を下げていれば、冒険者と言うことは分かるはずだ。F・Gランクの冒険者は、たいてい恥ずかしくてプレートを隠しているので、若い雄志は駆け出しの冒険者にしか見えないであろう。


 バンガニアには飲酒年齢に制限は無い。煙草にも無いし、魔物退治も何歳だろうと制限は無い。忠告してくれる人はいるが、無理に辞めさせる人も無い。全ては基本的に自己責任の世界であるからだ。


 宿泊予定の宿の近くにあった酒場に入った。もしも酔っ払ってもすぐに帰られるようにと思ったからであるが、後で、それは杞憂であったと知ることになる。

 ウエスタンドアを開いて薄暗い酒場に入ると、喧騒と煙草の煙が迎えてくれた。

 丸い木製のテーブルがいくつも並び、テーブルの上には木杯と料理が載っている。あちこちで乾杯の威勢良い声が聞こえた。

 長めのスカートをはいた給仕の女性が、何人も忙しげに厨房とテーブルを往復している。


 雄志はカウンター席へ向かった。一人で初対面の男たちが騒いでいるテーブルへ座る度胸は無い。(魔物なら怖くないんだけれど)


 カウンターはほぼ満席で、どこへ座ろうかと迷っていると、気が付いたウエイターが顎で空席の位置を指してくれたので、そこへ座った。


 「何にしますか」


 そのウエイターが注文を聞いて来たが、酒の種類など知らない。

 ゲームならコマンドが現れて、横に金額も書いてあるんだけれど・・・どうしよう。


 まさか水を頼む訳にも行かないので、酒デビューは安全を優先して頼むことにした。


 「一番軽い酒と、何か食べる物を下さい」


 両隣の男が「ぷっ」と噴き出しそうにしてして雄志を見た。雄志の見た目は冒険者なので、それ以上何も言わなかったが、一般人なら笑われていただろう。


 (笑われても、旅の恥はかき捨てだ)


 と開き直った。

 ウエイターはうなづき、銅貨二枚と言った。料金は先払いらしい。

 雄志が払うと、ウエイターは目の前で二種類の液体を混ぜ、小鉢に豆の入った物と一緒に出してくれた。

 ちょっと緊張しながら口に運び舐めて見た。・・・ツンとした苦みの味がしたが飲めない程では無い。注意しながら飲むことにした。



 《後で分かった事だが、ラーネの守りを付けている限り、気分は良くなるが、酒はいくら飲んでも無敵状態だった。一定の限度を超えると酒は毒と変わらない。二日酔いになりたければ、ラーネの守りを外さなければ不可能であった》



 「冒険者さんですね」


 右隣の三十歳くらいの男が話しかけて来た。赤い帽子をかぶっていて、どう見てもラーネ教の巡礼者である。


 「そうです。ユウシと言います。これからホランガ帝国領へ向かいます」


 「そうですか。私はナルハンと言います。見ての通り巡礼者です。帝国領のブルーガイアから来ました。今夜はここに泊まってオアシスのアロナー教会に巡礼し、マールダールの闘技場を見に行く予定です」


 ブルーガイアと言えば、闘王ロイが騎士をしていた国で、何年も前に滅んで今は帝国領である。


 雄志はラーネ教の聖地である、アロナー教会とラーネの塔。闘技場で見聞きした話を、予備知識としてナルハンに話してあげた。

 代わりに自分がこれから行くホランガ帝国領の話も聞いて見た。何か見聞きしたことで、変わったことは無いかと水を向けると。


 「そうですね・・・自分の出身のブルーガイアは、帝国領でも北の田舎なので変わったことも無いですが・・・」


 ちょっと考え込んでから手を叩き。


 「あ!。帝国領へ入って海岸線沿いに南へ行くと、シルムールという比較的大きな町があります。昔は軍港があって栄えていたのですが、ご存知の通り王国との休戦協定でコランドリア海は軍船は運航出来ないことになって、たちまち寂れてしまったのですが・・・」


 雄志はフンフンとうなづきながら、ナルハンが飲んでいた物と同じ酒を注文し、注いでやる。


 「あ、こりゃどうも。それでね。何とか町興しをしようと、ここ数年様々なイベントをしていましてね。時期が来ると今や近隣の村だけでなく、首都ブランガスからも人が集まって来て大変な賑わいになっていますよ」


 「イベントですか」


 「一昨年は《美人大会》で優勝と二位を当てる賭けが行われて盛り上がったそうですし、去年は《宝くじ》で、大金貨二十枚が五十人に当たったそうです」


 大金貨二十枚と言えば、町の良い場所に土地付きの家が買える金額である。ナルハンは興奮気味に話している。


 宝くじは町が管理していて、一枚が銀貨一枚で飛ぶように売れたらしい。

 宝くじは確率的に一番当たらないギャンブルで、主催者側が圧倒的に儲かる仕組みになっている。それが分かっている雄志は少し引き気味に聞いていた。


 ナルハンは興奮したまま話を続ける。


 「それで、今年は《酒豪大会》が開かれて、優勝は大金貨五十枚と副賞に《魔防具》が付くそうです。二位が大金貨二十枚。三位が大金貨十枚。十位まで賞金が出るそうです」


 「へー・・・(魔防具って何だ。ちょっと興味があるな)。そんなので盛り上がるんですか?」


 「出場料は金貨一枚。予選会があって、その三日後が本番です。賭けが行われて大金が動く様です」


 (あー。そっちで町は儲けるわけだな)


 「近隣に聞こえた酒豪が集まるらしいです。酔わない薬を飲んだり、解酒の魔道具を使用しても良いので、金持ちが自分の部下を出場させることもあるそうです」


 「ふ~ん。(ドーピングOKかぁ)薬飲んでも良いなんて凄いルールだなあ」


 「そりゃあ薬や道具を使えば有利になるはずですが、完全に酒が抜ける訳ではありませんから、結局は本物の酒豪が優勝すると思いますよ」


 そう言ったナルハンは、大きくゲップを吐いた。


 「それにしてもユウシさんは酒が強いですね。私はもう出来上がって来たようです」


 話しながら酒を注文していたので、知らぬ間に何杯も飲んでしまっていた。

 雄志はここで、ようやくラーネの守りの効果に気が付いた。


 (あれ!・・・この話の流れ・・・これってフラグが立ったのかな)


 雄志はカウンターに頭を乗せて、ぐったりしてしまったナルハンを見降ろしながら、シルムールという港町に寄って見ようと決めた。




 翌日、パーサロ王国側の門を出た雄志は、ホランガ帝国側の門に向けて歩いて行った。両国の城壁の間にある緩衝地帯は五キロほどあって、道の左右の草原に、何度か冒険者らしきパーティーが活動している姿を見かけた。

 恐らく通行者の安全を守る為、緩衝地帯に出現する魔物の討伐を両国から請け負っているのであろう。


 帝国側の入国審査も、Cランク冒険者のプレートの威光で形式的な簡単なものだった。

 門に並んだ人の列を飛ばして、短時間で入国できた。


 帝国側の門の向こうも、王国側と同じような宿屋や酒屋が並んでいて、多くの審査待ちの人々であふれていた。


 雄志は彼らの中を抜けて、ついに帝国領へと足を踏み入れた。




 両側に草原の続く街道をしばらく行くと、分かれ道に出た。


 そのまま真っ直ぐ東へ行くと、漁業の村フォーランを経てブルーガイアへ出る。ここまでがホランガ帝国領で、その東にも別の国があって、侵攻を狙うホランガ軍と睨みあっていると聞いた。


 南へ行くと、街道はホランガ帝国の首都ブランガスへ続いている。途中には話に聞いたイベントが行われる港町シルムールがある。首都ブランガスはシルムールからずっと南東にあり、帝国を北から南に横断する巨大な二本の川。西シャーン川と東シャーン川を越えないと到達できない。


 雄志は迷わず南へ下る街道に入った。まずは港町シルムールを目指すのだ。





 


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