最善の死よりも最悪の生を選ぶべし1
あー、僕は幸せだ、と思うと次に来るのは大抵は最低の知らせだ。
元妻が持ってきた赤紙の中身はまさに最低の内容だった。
次、自殺的に負けたら、永遠に死ねない体にして、生身のまま地上に追放だとさ。あいつらの頭の中身は一体、どうなっているんだろうな、と思いながら、両腕の巨乳ちゃんに、またね、とお別れした。
こうなったら、いっそのこと逃げ回ってやるか、と思ったけれど、それは無理だな。この世界の何処にいても、奴らの霊子ネットワークからは外れられない。それなら、また、前みたいにここで暴れてやろうか。広域殲滅用の装備を使えば、いや、駄目だな。それで片がつくようなら、要塞攻略用重装備を使って吹き飛ばした時にどうにかなっている。実体のないここをいくら破壊し尽くしても、すぐに再生して、元の木阿弥だ。
で、僕が訪ねたのは旧友の家だ。
汚い扉を開けると、ゴミ屋敷のような玄関を無理やり通り抜けると、白衣を着た旧友がいて、その部屋はとしても清潔で明るい。
旧友は振り返って笑った。
「殺されそうで、行き詰まったね」
僕は旧友の姿にあきれた。
「上半身は女医で下半身が男っていうのは・・・」
旧友は肌けた白衣を着直して、頰を染めながら、
「君に変態呼ばわりされるとは、あたしも終わりだわ」
と言った。
なぜこいつが旧友かといえば、こいつを含めて三人のチームだったわけだが、やっつけた相手を実験素材としていじくり回す度合いが究極的に酷くなりすぎた結果、「旧友」となったわけだ。
「牛女の解体改造なら、喜んでお受けするけど」
僕は旧友が元妻にどんな改造を施すつもりかを思っただけで吐きそうになる。
「露骨だねぇ」
「相変わらずで何よりだ」
白衣の胸元から溢れる巨乳と、逞しい下半身と、幼児のような中性的頭部の組みあわせと、両腕の先端は神経が露出したような無数の繊維が蠕動して、何かに繋がっている機械類を操っている。
「忙しいところ、悪いが」と言いかけると遮られた。
「いやいや、退屈も究竟的に極まっていてね、旧友の来訪は大歓迎さ」
世辞ともつかない気持ちの悪い言葉回しをなるべく気にしないように、前にある椅子に腰掛けた。
「古い付き合いだ。単刀直入いうが」と言いかけたらまた遮られた。
「逃げ場所はないこともない」
旧友は口角を悪魔的に引き上げた。