死んだら巨乳が待っている2
「おっ、おかえりさん。奴さん、どうだった?」
古風な事務机にモニターが並んだ部屋の奥から声がした。
超マッチョな白人女性だ。胸は大きいが、巨乳というよりは、ゴリラの大胸筋の方に近い。
「その様子じゃ、あいかわず、おっぱいに埋もれてたようだね」
「やめて、ヒルデガルド」
あたしは自分の席に座った。
「いいじゃないか。今の旦那が上位ランカーなんだから」
「うーうーうー」
「また課長に牛女って、言われるよ」
「それ超セクハラ!」
あたしが上半身を起こして抗議すると、
バン!ボン!とあたしの胸が机を連打した。
「どうせ牛女ですよ、胸しか能のない」
あたしは何故か、ありえないぐらいに悲しくなった。
「なんで前の旦那にそんなにつきまとうのかね」
「つきまとってないわよ!」
「まぁ、自分が浮気したから旦那が最強から最弱に転落した、って思ってるでしょ?」
あたしはヒルデガルドを睨んだ。
「そんなに性格、悪くないわよ」
あたしたちは悪口を言い合いながら、事務処理を進めた。
ここは霊子界の諸々の手続きを一手に引き受けている霊務局。その中の戦務課だ。ここでは100億人の戦場日程を管理している。現場で戦っているのが50億人。戦死して帰還している者が25億人。戦場行きが決定していて、次の肉体が完成するのを待っていたり、装備品の調達・整備を行っている者が24億人。そして、残りの1億人が霊務局も含めた霊子界13局で働いている。
あたしの仕事は戦死して戻ってきた人間の管理だ。
「麗子ちゃんの旦那さん、また出戻りしたの?」
2人の前に小柄な男性がやってきた。
「課長、元旦那です」
「どっちでもいいよ。にしても、また新記録更新とはね」
「2日ですよ、2日」
「それに比べたらヒルデガルド君のご主人は優秀だね。今、1520位だったかな」
「課長、それいったら麗子さんの今旦那は150位ですけどね」
「そうだっけ、まぁ、いいけど、また、前みたいのはごめんだよ」
バン!!バン!!
あたしの両胸が時間差で机を叩いた。
えーえー、わかってますよ、いいたいことは。元旦那が戦場で勝ち続けてずっと帰ってこなかったから、他の男、それも旦那に瞬殺された男に寝取られたのはあたしですから。
「あん時の旦那、凄かったわ」
ヒルデガルドの顔が真っ青になった。
「強引に戦死して帰ってきたと思ったら、重要塞攻略装備一式を奪って新築されたばっかりの戦務課をブラックホールに変えちゃったんだから」
「あたしがわろうございました」
「ねぇ、もしかして、今の旦那がなかなか帰ってこないから」
ヒルデガルドが意地悪そう口を歪めた。
「今度は前旦那とよりを戻そうとか考えてんのかい?」
「いくらなんでも」
あたしは顔を下を向いてしまった。自分の胸しか見えないけど。
「あらあら、どんだけ好きもんだい」
「だって、もう半年なのよ」
「おかげで150位だ」
「ありがたいのはわかるけど」
「?」
「やっぱり、我慢の限界てあるでしょ?」
ヒルデガルドは本当に呆れたようだ。
あたしだって彼女のような筋肉女だったら、こんな思いはしなかったわよ。