愛するものと一緒にて他(人)のことを考える(時)10
まぁ、会主の赤いローブの下が爆弾なのか、どんな代物なのかはしらないが、いずれにしろ、この魔戒の間での力が制限されることを前提にした物理攻撃手段を用意しているのは確実だな。
僕自身は近接戦闘は人任せで、専ら大量破壊兵器大好き人間だったからな。こうなると、ちっょと、困る。
王も王妃も対人戦闘では平凡以下だし、魔法力が制限されている状態では自動防御機能も不安定だ。
そういえば、前の世界でもこの手の精神強化とか狂人化した奴らの自殺攻撃に苦労したんだったな。
暗示や薬物なとで強化された奴らは、攻撃対象の無制限化というリスクを回避できる状況さえクリアにできれば、いい武器になる。といっても、消耗率が高いから、高位ランカーの使い捨ての駒になるのが落ちだが。
だとすれば、この会主自体が偽物か? 操り人間か?
だとすれば、目的は何だろうか?
僕を奪って殺すのか?
それとも本当に傀儡にして悲願の統一を目指すつもりなのか?
考えてもわからないものはわからない。
なら、行動すればいい。
「おかあさま」
と、僕は王妃に話しかけた。
「こうしゅさまとあくしゅして」
いやよ、
と王妃。
「あのね、うそでもなかよくしないところされから」
殺される、というのが響いたのが王妃は恐々と手を差し出して、
「わかりました」
と、公主と握手を交わした。
その瞬間、魔戒の間が停止した。
僕のしかけた魔法と公主が放った魔法がぶつかりながら同調したんだ。
王と王妃は停止し、生きているのは僕と公主の二人だけだ。
僕は王妃の視覚を通して公主を改めてまじまじと見つめた。
さっきまでの世間向けの表情からは想像できない邪悪な女がそこにはいた。