決意
死ねば元の世界に戻れる?
フィルの話しぶりから、冗談を言っているようには思えない。
ただ、勝手に連れてこられて、労力を割いてまで徳を積まなければいけないのか、ということを考えている時点で、私には人の助けになるようなことができるの資格がないのかもしれない。
だからといって死んで大丈夫なのだろうか。
そんな思いを知ってか知らずか、フィルは話を続けた。
「ただひとつ心配事としては、元の世界に戻れる条件を満たすからと言って、今まで死ぬという選択をした人がいないから、どうなるかは正直分からないんだよね。」
「なっ…!」
そんなの選択肢がないようなものである。
「正常な反応だよね。だから俺としては、不容易に死ぬ選択はして欲しくない。できる限りフォローはするから、俺たちと一緒に頑張ってみることはできないかな?」
リリアも心配そうにしているが、フィルの意見に賛成のようで、頷いている。
一気に元の世界に戻れないという実感が湧く。きゅっと自身の拳を握る。
(やるしか、ないんだ)
不本意ではあるが、見ず知らずの私にここまで優しくしてくれる二人がいる。一人っきりよりも断然マシでないか。
「フィル様、リリア様、ありがとうございます。お二人の厚意に甘えても良いでしょうか?」
その言葉に、二人はしっかりと頷いてくれたのであった。
「じゃ、早速作戦会議といこうか。それと…俺たちのことは様をつけて呼ばなくてもいいからね。」
そう言うとフィルは陽の頭をふわふわと撫でた。
気合いで鼻血を止めた。