ひつじに出会った(1)
電気を消し、ベッドに潜り込む。準備は万端である。
(今日はどんな妄想をしようかなーっと)
そっと目を閉じればこっちのもの。自分だけの世界の出来上がりである。
(ではでは…)
★★★★★
ここは森の中にひっそりと建っている小さな家。
朝は小鳥のさえずりで目が覚め、近くを流れるきれいな小川で顔を洗い、畑で育てたハーブを使いお茶をいれる。
朝食は少し離れた街で買ってきたパンと、コケモモのジャムでいいかな。
数年前、両親が仕事で多忙となり娘の世話が疎かになってしまうとの理由で、私はこのような森の中に住む祖母の家に預けられている。
祖母はとてもおおらかな性格で、森の中で上手に生活をしていける方法を私に1から教えてくれた。
今ではすっかりこの生活がお気に入りだ。
とはいっても、森にあるものだけで生活はできないため、祖母は朝早くから街のレストランにアルバイトをしにいっている。
私は祖母が夕方に帰ってくるまでの間、留守を任されているという形だ。
ハーブティー、コケモモのジャム付きのパンをいただいた私は、少し伸びをして気合を入れた。
(よし、おばあちゃんが帰ってくる前に、掃除や洗濯、その他もろもろ終わらせるぞー!)
早速洗濯を行い家の外に出たのだが、
何と、
家の前にサラサラの黒髪の男の子が倒れていた。
身なりもしっかり…というよりどこかの貴族のような服を着ており、森に用事があるようには到底思えなかった。
通常では起こりえない何かが起こっているのだということは察することができたが、このままこの男の子を放っておけなかったため、何とか家のベッドへ寝かせる。
(まつ毛長くて綺麗な子だな…)
先程はうつ伏せで倒れていたせいで良く見えなかったが、ベッドに寝かせると顔が良く見えた。
ずっと眺めていられるような整った顔立ち。
しばらく目が離せなかったが、このまま穴が開くほど見つめていたとしても何も変わらないため、洗濯の続きをしながら目を覚ますのを待つこととした。
洗濯物を干し終わり、先程の男の子のところに戻っ…男の、子…?
そこにいたのは。
「羊ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!?」
★★★★★
…ガバッ
勢いよくベッドから飛び起きる。
(ちょっと待って、途中までめっちゃいい感じだったじゃん!?そこから男の子が目が覚めて、めくるめくラブストーリーを紡いでいく予定だったのに!!)
妄想が途中で失敗することは今まで無かった。
それなのに今日に限って何故だ。
うーん…と頭を捻らせ、ふと足元に目を向けると。
何故か
先程夢に出てきた羊が
いた。