苦い世界と甘い女の子
お久しぶりです、朝霧千景です。
今回は短編小説を息抜き程度に書かせていただきました。宜しければ読んで頂けたらと思います
とある一室。ベットには男が寝転がり、手前の机の前に女が1人。
蜂蜜が溶け込んだ暖かなミルクを体の中に流し込む。体の芯が温まってゆくのが分かる。
甘い……甘くて溶けてしまいそうで。
ベットで寝転がっている男を一瞥する。
すぐに視線を手に持っているマグカップに戻した
「蜂蜜…入れすぎたかしら」
私の好きな彼は、甘い物よりもコーヒーを望んだ。苦い苦い大人の味。
ほろ苦いカカオ75%のチョコレートを。
対象的な貴方と私。
甘いホットミルクを飲みながら、机の上に置かれた甘ったるいショコラを口に運ぶ。
甘くて甘くて頭がどうにかしそう。
「貴方に溶けてしまいたい」
調和を望んで、苦いものにする人もいただろう。だけれど私は甘いものがいいのだ。
そうでないと、苦いこの世界と調和できないから。
「溶けてしまいたい。貴方の声に。優しさに」
それなのに、隣に貴方はいないの。
代わりにいるのは、どこぞの知らない男。
体を売ってお金を稼いで、家にお金を入れて……。
私の恋心は潰れてしまった。
「気持ち悪い……苦いコーヒーのよう」
もっと甘い恋がしたかった。
もっと幸せになりたかった。
特定の人に愛されたかった。
「どうしてこうなったの?」
涙がひとつ。ふたつ。ぽろぽろ零れてきた。
体は23歳。心はあの日の16歳のまま。
彼に恋をした。初恋のあの日。
告白なんてしなかった。否、できる時間が無かった。
父親の会社が倒産した。母親は専業主婦だったため、収入がなくなり、借金にまみれの家と私の両親は、私の心を切り裂き殺し、体売りの少女にしてしまった。
「やめよう。考えても苦しいだけね。」
苦しい。苦い。同じ漢字。違う読み方。
苦いのは苦しい。苦しいは苦い。
甘い甘い私が調和する。
私の心はもう死んでいた。
いかがでしたか?
気持ちの悪いものですみません。
どちらかに偏った私達は、調和したら消えてしまいます。
男と女。違う物質が結合すれば消滅します。
それと同じで、甘いも苦いも両方取り入れた飲み物は、どちらでもないなにもないものなのですよ