表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第一話:#0、異世界へ飛ばされる

「さて、説明を始めようか。」


 神アベルがエリサと共に光の粒で作り上げた立体地図を片手で押して来た。地図には完璧な円型の純白な結晶の壁に囲まれて目立つ国があった。中央辺りに立派な城が建ってあり、周りの都会から賑やかな雰囲気まで感じる。目の端には都市から離れて農家の畑と家畜が眼に映るほど詳細に作られている。


「ここが君を送らせる場所だ。〈リサイタルハート〉の最大王国、聖アイヴァソン王国。」



「聖アイヴァソン王国‥‥」

「えええアベル様!私、海の国、カナビアン諸島の方がいい!」


 神様は口からため息を吐いて呆れた顔で図々しい欲を口走るエリサに答えた。


「文句を言うな。これはもう決まった事なのだ。」


 エリサの顔が失望で曇り、絶望でうなだれた。

あーあ、また半泣きになってる。

 一方、俺は笑みが溢れるくらい大満足である。こんな場所に行けるのはまるで夢みたいだ。何だか雰囲気がでるかっこいい名前の国だ。確かに海の国もとても興味はあるが、やっぱりはっきり覚えていないが、こんな世界へ行きたい願望が長年あった気がする。魔法と冒険で満ちる中世風な国。かっこいい建造物、広い草原に底まで見える河。立派な街と美しい自然が豊かなファンタジーワールド。男のロマンってヤツだ。


「ちょっと何よあんた、ニヤニヤして。失礼じゃないの?」


「は?別にお前を笑っている訳じゃなーー」

「嘘よ!わたしを笑ってるに決まってる!」


「いや、俺は地図の構造を見てーー」

「ああそうなの!!私が作った場所が下手だなーだなんて思ってんでしょ!最低!」


「んな?!」


 だめだ。機嫌が悪いエリサはもう相手にならん。どうこいつが天使になれたのかが知りたい。

 エリサが鳴き始めると同時、アベルが余裕ない顔で咳払いをした。

「その、続けて良いか?」


「はい、お願いしま「いやあああああああああああ、海の国に行きたいいい」



 *********



「エリサ、落ち着いたか?」


「グス、はい。すみませんでした。」


 俺はこれから自分のだけでは無くエリサの面倒見もしないといけないのか‥‥神様でさえもエリサを落ち着かせるのに五分もかかるんだ。俺はいったい何時間も‥‥


「すまない、どこから話そうか‥‥まず、この世界と君が元々住んでいた世界の違いを述べよう。違いは大きく三つある。世界の大変動(アップデート)、人間以外の人種(エルフ、竜人、悪魔など)、そして"身魂(ソウル)"とスキルの存在。」


「アップデート?ソウル?」


 ゲーム単語らしい言葉が出て来た。人間以外の人種はなんとなく分かっていたが、他の違いは何なのか全くわからない。


「〈リサイタルハート〉は夢の世界とも呼ばれている。なぜかというとこの世界は神が直接影響を及ぼすことが出来る唯一の世界だからだ。これを大変動(アップデート)と呼ぶ。」


「直接って事は神であるアベル様は夢の世界を自由自在に変えれる事なんですか?」


「正しく。個人個人の行動や思考までの変更は流石に無理がある。大変動(アップデート)は神が世界に改良を加えるアップデートなのだ。ゲームアプリの様にバグ修理、追加コンテンツ、システム改良、などを入れる。七日間しか現れない遺跡や迷宮、ボス戦 、闘技場、新フィギュアの追加、亜人や獣の強さ調整、新スキルと武器の追加、など神が追加したい要素はなんでもあり。」


 ま、まじか‥‥


「現に、お前がこの世界に転生できるのも大変動(アップデート)のおかげだ。それはお前だけではなく他のプレイヤーも同じだがな。」


「ちょっと待っ「あ、アベル様!代わりに私が人種の説明をしても良いですか?」


「まあ、構わんが」


また、エリサは俺の言葉を無視して話を進めてしまう。

その上ろくな説明が出来ないのが分かっているのにエリサに任せるのはどうよ、ミスターゴッド?


「おい、勝手に話を進めんな!」


「あのね、もう時間がないのよ。だから今は単刀直入に話すわよ。質問はあとで私が夢の世界に着いてから聞くから。」


まるで見下す様な口調で俺の要求は瞬時に否定される。

時間がない理由はお前が泣き止まないからだ。後、俺の質問は多分お前では答えられない。俺は他のプレイヤーに着いて質問がしたかったんだ。でも、時間が迫っているのは本当らしい。アベルの顔色と雰囲気から焦りを感じないが余裕の無い仕草が増えてる。


「良い?〈リサイタルハート〉にはね、今のあんたみたいな人間らしい人間でも人間では無い人間の種類が沢山いるのよ。」


「‥‥‥」


「‥‥‥」


「え、終わり?」


「え?なにが?」


ほら、このザマだ。単刀直入に話してくるとは言ってたが、なにを言ってるのか全く理解出来ない。

簡単に言えば、人間に似ている見た目の人種がいる事だろう。

呆れと疲労が交わった深いため息を吐き、顔面が自然に掌へ下がった。


「もう、ほんと失礼なんだから、感謝の言葉一つ二つ言うくらい常識っしょ?」


バカ天使か堕天使と呼ばないだけで感謝の言葉一つ二つは欲しいな。

そんな事よりも大変動(アップデート)と多人種か。何だか夢が広がるなー。

もし俺が神になれば、下界に降りて自分にチート能力を与えて無双シミュレーションしたり、多人種の可愛い

女子とハーレムを作る魔王になったり出来るじゃないか。

少し神になる気が湧いて来たぞ。

初めてここに来て良かったと思った。野望と好奇心が膨らんで胸が苦しいくらいだ。


「で、最後の違いは?」


胸元に詰まった熱意を吐き出す様に溢れてしまった言葉はとても神に向けるものではない。ありがたいことにアベル様は気にせず俺の質問に即時に答えてくれた。


最後の詳細を一刻も早く聞きたくて思わずせっかちな口調で神様に問い掛ける。


「それは、」


ピンポンパンポーン。

頭の中にどこかで聞いたことがある気がするお知らせコールが鳴り、神様の言葉が掻き消されてしまう。


「天界の皆さん、間も無く第8Re:シェイプの開催フェーズ "イントロ"が始まります。開催フェーズ "イントロ"が始まります。転送の準備を初めてください。」

ピンポンパンポーン。


エリサとは違うとても上品な声だ。その天使の発表が終わると神アベルは不快そうに眉を寄せてエリサは今まで見た事のない真剣な表情を被り、腰に両手を当てていた。

二人が発するプレッシャーに思わず鳥肌が立ち足腰が怖じけてしまう。

何が起きるんだ?


「時間ですわ、アベル様。」


「ああ、残念だ。すまない、話はここまでだ。エリサこの地図を持って急げ。」


「なっ?!」


話についていけなくて慌て始める俺の腕を掴み、神から反対方向へ引っ張り出すエリサ。


「ほら、準備するわよ!」


なんて力だ!まるで身体が真っ二つに引きちぎられている様だ。


「ちょ、離せ!まだ話が、まだ終わっていない!」


でももう遅かった。神は既に光に包まれていて消えていた。


「私の天使に詫びて本当に申し訳ない。これ程時間を無駄にするとは想像もしなかった。」


アベル様の姿はもういなくなっていたが声は聞こえる。まさか神様に謝罪されるとは。


「その代わりに君には他のプレイヤー以上の特殊能力を与えよう。そして、今からお前に史上初の『プレイヤー0』に任命する。健闘を祈る。」


『プレイヤー0』。

俺が史上初『プレイヤー0』。

名前が心に刻まれたかのように耳元から心臓へ通るのが感じる。自分だけが持ち得る称号だと言われるとやはり特別感がでる。体の内側が痒い、燃える。また俺は笑みを隠せない。緊張と好奇心が一気で俺の身体が疼く。ジッとしていられない。


「すみません、ジッとしていてください。転送の魔法陣から身体の一部がはみ出て居る場合で転送を行なってしまうとその一部だけ取り残されてしまいます。」


天使の姉さんに真剣な顔で注意された。

ーーは、はい。綺麗な人だ。

うん、エリサとはケタ違いだ。


「あ、始まった。」

エリサが言うと俺たちの足元から七色の光の粒が出てきた。

もうすぐ俺は見たこともな新しい世界へ行くのか。今になって緊張で気持ち悪くなってきた。

「エリサ、ちょっと地図見せてくれないか?」


「今?しょうがないわね、ちょっと待っていて‥‥‥あ、、」


「?どうした、汗だくで、、お前、まさか‥‥」


「うん、忘れた、えへ」


くそ!!まじか。もう俺もエリサも魔法陣から出られない。取りに行ける手段が無い。

仕方ない。俺は魔法陣を作ってくれた天使さんへ振り向く。


「あのーすみません。」


「は、はい!何でしょうか?」


俺は笑顔と人差し指を後ろにいるエリサに向けて麗しい彼女に願い求めた。


「仮に天使を殴ったら天罰受けますか?」


彼女の答えを聞ける前に俺は〈リサイタルハート〉へエリサと飛ばされた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ