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笑い逢う天使と魔族 上

作者: 桜巳

■ めぐり逢う詩


それは ある星の ある物語


星には 二人の守護者がいました

北の守護者である神と 南の守護者である魔王は互いに憎みあい

星は 北と南に別れ 長い 長い争いが続いていましたが

ついに 決着の時を迎えました


北の守護者である神が 南の守護者である魔王を破り

捕らえられた魔王は 星の奥深くに 閉じ込められました

天使たちは 神を讃える讃美歌を歌い

精霊たちは 神を讃える優雅な舞を踊り

魔王の配下である魔族や魔使いは しもべとなりました


神に仕える天使には 透きとおる歌声をもつ 少女がいました

天使たちは 彼女の歌を褒め称え 歌姫と呼び

神は 彼女を大層 気に入っていました


神を讃える讃美歌を歌う彼女に 神は気まぐれに問いました

歌姫に 特別に褒美を渡すが 何が欲しいか と

気まぐれな神の問いに 彼女は静かに答えました

平和な今に これ以上 何を望みましょうか と

神は愉快そうに笑い 歌姫にその歌声を求めました

けれど 私の復讐は終わらない 悲しみは癒されない と

歌姫はこたえて讃美歌を歌い 続けて言葉を口にしました

それでは 私があなたの悲しみを 取り除きましょう と


神の褒美に歌姫は 一人の魔族を望みました

神が深く憎む 南の守護者の側近であった魔族を望みました

古の姫と同じ顔であるが故 魔王の寵愛を受け

神の憎しみを募らせ 悲しみを深める魔族を望みました


神は歌姫に 望みのものを与えました



■ 生涯のイトの約束


古の姫と同じ顔を持つ魔族は 歌姫のしもべとなりました


しもべの魔族に 『名』はありませんでした

魔王は魔族を 愛しき古の姫の名で呼び

神は魔族を 呪われた古の姫の名で呼びました

そこで 歌姫は初めに 魔族に明星の名を与えました


明星の魔族は 歌姫を主として よく仕えました

けれど 歌姫は それを望んではいませんでした

長く続いた争いは あまりに長く続いたため その意味を失い

争いの始まりを知っていたのは 二人の守護者だけでした

歌姫は 意味を無くした争いに疑問を抱き

歌姫は 歩み寄るべきだと 考えていたからです


それこそが 北の守護者を救う ただ一つの道だと信じていたから


歌姫は 明星の魔族と約束をしました

歌姫を 生涯の友とする約束をしました

友とは 支えあうもの 友とは 笑いあうもの

友とは 分け合うもの 友とは 逢い愛しあうもの

どれほど長く別れても 再び 出会うもの

生涯の絆の約束を 小指と小指でしました


明星の魔族は 歌姫との約束を守りました

友として 支えあうこと 笑いあうこと 分かち合うこと を

歌姫と自分の望むままに いつも一緒にいました

たとえ 他の魔族に哀れな目を向けられても

たとえ 天使や精霊に罵られても

たとえ 北の守護者に疎まれても

それを苦だと思うことさえ 彼女にはありませんでした


神が治める時代は 平穏な時のように思えました

このまま この時代が続くような

けれど あの時代と同じように 終わりを迎えるのです



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