0歳、貴族、新しい家族
転生して数日たった。
赤ん坊だからか、ほぼ一日寝て過ごしている。
起きている時は授乳の時と、オシメを取り替える時くらいだ。
体はまだ幼いが、精神年齢的には思春期真っ只中な俺は、授乳かかなり恥ずかしかった。
この世界での結婚は早いらしく、父さんも母さんも正確にはわからないが、外見で判断するとおそら二十歳前後、とにかく若い。
精神年齢が17歳の俺には、前世の同世代からミルクを貰うのは恥ずかしかった。
母さんもよりも年上の乳母がいるので、授乳はまだ我慢できるが、一番の問題はトイレだ……
俺はまだ歩けないどころか、まだ首も座っていない。
つまりトイレに自分では行けないのだ。
毎回垂れ流しである。
この年になってお漏らしは、自尊心が傷つく……肉体年齢はまだ0歳なんだけども……
あとは微妙に不便なのは、言葉が喋れないこと。
赤ん坊の頃にはまだ筋肉が発達してないようで、舌が上手く動かない。
だから声を出しても「あー」だとか「おー」だとか、基本的に母音の舌をあまり使わない音しか発音できない。
言葉を覚え始めた子が、パパよりもママを先に言い出す理由がわかった気がした。
普段の発声では大きな声がでないから、何かを訴える時は泣くしかない。
なぜか泣くと普通じゃ出ないような、大きな声が出る。
早く自分で動き回れるようになりたいもんだな……
最近の流れはそんな感じだ。
次は家のことだが、ステータスを確認のした時に、家名があったのでたぶん、この家は貴族なんだと思う。
より貴族なんだろうなーと感じたのは、俺の面倒を見てくれている人が、メイドさん二人と、母乳をくれる乳母さんの三人でしてくれているからだ。
それなりに稼ぎがないと、メイドなんて雇えないだろうし、乳母なんて戦国時代の大名とかでしか聞いたことない。
難しい話は俺のいる部屋ではしてないから、家が何をしている貴族なのかはわからないが、それは神様が言ってた通り、俺が成長する過程で嫌でも知れるだろう。
俺の家族構成だが俺が今、認識しているのは、父、母、姉だ。
母さんは名前はレイアというらしい。
メイドさんたちが、レイア様と呼んでいたから間違いないだろう。
母さんはおっとり系美女であり、ゆったりと話す。
身長は高めでスラッとしてるが、女性的な部位はかなり大きかった……
髪の色は金色でロング、たれ目がち、いつもニコニコ笑っている。
俺には優しいいい母親だが、怒ったときは怖そうだ。
それで母は一日に二、三回、俺の顔を見に来る。
父さんは仕事が忙しいのか、早朝と深夜にしか見たことがない。
それも毎回チラッとしか見ていかないので、こちらもしっかり顔は確認できていない。
これは俺が寝ている時間に、来るからというのも大きい。
髪は黒色でパッと見、ちょっと野生ぽい顔の作りをしていたが、見映えはよかったと思う。
体はしっかりと鍛えられていて、ガッチリしているが身長がかなり高いので、バランスが取れてて後ろ姿がカッコよかった。
俺もいずれあんな感じになれるなら、転生してよかったと思える。
父さんは一人でしか来たことが無いので、名前はまだわからない。
そして俺が希望した兄姉だが、三歳くらいの姉がいた。
名前はクレア。
これもメイドさんからの情報だから合っているたろう。
姉さんは母さんが俺を見に来るときや、世話をしてくれているメイドさんと一緒に来たりと、家族の中でも一番俺に構ってくれていた。
外見だが、これまた母さんに似て成長したらスゴイ美人になるだろう。
まだ小さいから顔はふっくらしているが、顔のパーツはしっかり整っていて母よろしく、いつもニコニコしていて可愛らしい。
髪の色は母さんから受け継いだであろう金色で、子どもらしくボブカットにしている。
姉さんは結構活発っぽかったから、長いと邪魔になるんだろう。
俺に会うときもオモチャを、どこからかダッシュで何回も持ってきて見せてくれる。
気持ちはとても嬉しいんだが、三回に一回は転んでいるので、ゆっくりでいいから走らず持ってきてほしい。
噂をすればなんとやら、姉さんを連れて母がやってきた。
「エミラちゃん~、カミラちゃん~。 お勤め~ご苦労さま~。 ハヤトの様子はどうかしら~?」
「はい。 レイア様。ハヤト様はいつもとお変わりはありません」
母さんはメイドさんたちに、俺の様子を確認しにきたようだ。
ちなみにエミラ、カミラというのは、俺の世話をしてくれているメイドさんの名前だ。
二人とも十代後半くらいの年齢で、なんと双子らしい。
顔はほぼ一緒で見分けが付かないが、髪の色が全然違う。
エミラの方がエメラルドグリーンで、カミラの方はエメラルドブルーだ。
喋ってみると性格も全然違うようで、エミラは落ち着いた感じで無口だが口を開くと辛口で辛辣だ。
カミラは元気いっぱいで天真爛漫な感じで、よくクレア姉さんと一緒になって遊んでいる。
そのせいかミスが多いから、よくエミラに怒られているところを見る。
「そうなの~。 ならよかったわ~」
母さんは俺の方を見ながら安心したように声を出す。
「でもクレア様の時より、全然泣かないから少し心配です。 泣くのもお腹が空いた時とオムツの交換の時くらいですし」
カミラは俺が必要以上泣かないことに疑問を持っているようだ。
しっかりと自我を持っているから仕方ないんだけどな。
「そうなの~?」
母さんは意見を言ったカミラでは無く、エミラの方にそう投げかける。
「確かにそうですが、全く泣かない訳ではないので、これくらいは個人差だと思います」
エミラは簡潔に回答を返す。
「なら安心ね~。 カミラちゃんまた~何か気づいたことがあったら~教えて頂戴ね~」
母さんは俺の頭を撫でながら、カミラに声をかける。
母さんなりにフォローを入れたのかな?
それにしても母さん撫でるの上手いな……
あぁ……眠気がやって来た……
今だにこの眠気だけには抗えない……
おやすみなさい……
ちなみに母さんと一緒にやって来た姉さんは、俺の寝ているベビーベットの柵に顔を押し付けて俺のことをずっと見つめていた。