瑠璃色の記憶
暗い。アルコールの匂い。咽び泣く声。自分が何なのかわからない。名前...なんだっけ。思い出せない。記憶なんてあったっけ...
週に1度しか開けてもらえない窓。そこから見える景色は何よりも輝いて見えるのに。届かない。いっそ飛び出してしまおうか。でも行く宛なんてない。野を駆け回る音...あの少女について行けばこの世界は今よりマシに見えるだろうか。 足を踏み出す。その瞬間父がこっちを見ていた事も知らずに__。今までにないくらい全力で走った。あの少女に追いつけるように。世界ってこんなに広いんだ。ふわぁっと香る草の匂い。目の前には、見覚えのある影。その影は少女を瓶で殴ろうとした。無我夢中で少女の前に飛び出た。パリィンッと鈍い音が響く。同時に頭にもの凄い激痛が走る。
...___神様は意地悪なんだね。
暗闇に後戻り。父は私にこう言った。
『これは〝躾〟だよ。』
瞬きを出来ないように固定され、恐ろしいくらい眩しい光を瞳に注がれる。耳には鼓膜が破れそうなくらい大きな音が迫ってくる。何日も続いた父の〝人体実験〟は私の精神諸共奪い去った。いらなくなった私は野に捨てられた。瞳孔が細くなるのを感じる。ありとあらゆる景色と音が頭に入ってくる。
朦朧とした意識の中、ある言葉を思い出す。
『目が綺麗な琥珀色なんだね!私は___...蒼い石の名前だからおそろいだね。よろしくね琥珀!!』なんで一番大事な部分か思い出せないんだろう。そうだ。あの少女を探そう。
ポケットには鈴が入っていた。その鈴をくれた人があの少女だと言うことを知るのはまだ先の話____。