緻密な線でできた巨大な蝉
見たてほやほや。本日の夢の一つ。
ベッドの柵に巨大な蝉が引っかかっている。
柵に足をかけしがみついて私を覗き込んでいる。
大きな頭。
頭の大きさから想像すると身体はベッドマットと同じくらいあるだろうか。
だとするとその殆どは床下に沈んでいることになる。
近くで見ると蝉はボールペンで塗った落書きみたいに緻密な線でできていた。
カラカラで軽い。
もう命が残っていないから、線が解けそうになっているんだ、と思う。
羽化したての蝉はしっとりと湿っていて重い。
でもアスファルトに仰向けに転がり、うなされたようにジッと鳴く死にかけの蝉は、びっくりするほど乾いていて、軽いから。
蝉の目玉より小さくなった私は、柵をよじ登り線の先端をつまんだ。
そうか、乾くと線は縮むのか。
充実していた頃は太く詰まっていたのだろうに、今はしつけ糸みたいに細くてスカスカ。
ところどころ芽ひじきのように太いところがあって不規則に脈打っている。
引くと抵抗なく引かれるがままに解けてしまいそうだ。
きっと蝉は死にたくなくてここにしがみついている。
この先端を私がずっと握っていたら、解けないでいられるのかしら。
見る間に先は絹糸のように細くなり、だんだん見えなくなってきた。
蝉は苦しそうに足をワシャワシャさせて柵を掴み直す。
違う、蝉は絡まりを解いてほしいのか。
請われるがままに糸を引くと蝉の目玉がはらりとほぐれ、一本のきれいな糸になった。
私は解けていく蝉の内側にそっと足を差し入れて、膝を抱えて座り、内側からほぐれていくのを見上げる。
頭、羽、腹、次々に崩壊していく。
マフラーを解くみたいにひらひらと解けて糸は真っ白な空へ向かう。
雨上がりに見る蜘蛛の糸のように煌めいていて、私はそれをつかみたいと思う。
つかんだら。
きっと取り返しがつかないな。




